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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第八十三話 新しいチェス

 馬車が屋敷の前までたどり着くと、従僕と思われる若い男がやってきて馬車を預かり、私たちを屋敷に案内してくれた。


 2人共首輪をしていた。隷属の首輪であろうな。ということは奴隷か。そういう文化が根づいているから今のところは仕方ないとは言えるし、きちんと人として接しているのであれば問題はないが……表情が酷く暗いのだけは気になるところだ。


 外観は中々の大きさの屋敷だな。一人で住むには広すぎるぐらいかもしれないが。


「おお! よく来たなフレンズ」

「はい、ガイアク卿に頼まれていた品が見つかりましたので、遅ればせながらお持ちいたしました」


 屋敷に入り、広間まで案内され中に入ると肥え太った男が出迎えてくれた。会話から察するにこの男が依頼してきたお客なのだろう。


「なんとそうか。いやはや全くいつまで経ってもいい知らせがなかったから、貴様の店からの購入はもうこんりんざいやめようかと思っていたところだぞ」

「はは、これは手厳しい」


 ふむ、フレンズは上手いこと接しているようだが、第一声から随分と傲慢な印象のある男だ。そもそも今後の取引をちらつかせて無理難題を言ってのけてるとしたらかなりたちが悪そうに思えるのだが。


「ところでそこの子どもは誰だ? お前の子どもか?」

「いえいえ、彼は」

「魔導ギルドに所属している魔導具師ですよガイアク卿」


 扉が開いた音が聞こえたかと思えば、後ろから聞いたことのある声が届く。

 私とフレンズが振り返ると、そこにはドイル商会の長、ムーラン・ドイルが立っていた。


「おお、ドイルもう準備は出来たのか?」

「はい。いつでも可能ですよ」

「なるほどそれは楽しみだ。ふむ、しかしこんな子どもが魔導具師とはな」


 値踏みするようにジロジロと見ているな。気分のいいものでもないが、しかしもう1人の男――


「……まさかこの男がいるとはな」

「ふふ、久しぶりだな。それにフレンズもか。噂は聞いていたがやはり繋がりがあったか」


 半目を見せ、そんなことを言ってくる。正直あまり見たくない顔であり、フレンズからしても何故こんなところにドイル商会がといったところだろう。


「えぇ、エドソン殿には色々お世話になってますよ。それにしても、確かに久しぶりですな。しかし何故、貴方がここに?」

「はは、ドイルは私の客だ。同時に取引相手でもある」

「え? 取引相手ですか?」


 ガイアクが答えるとフレンズが疑問の声を上げた。今後の取引を続けるかどうかという話の中で急いで要望に答えようとしたのに、他にも取引相手がいたとなればそう思うのも仕方ない。


 尤も商売とはそういうものではあるが、相手がドイルというのがな。


「フレンズ商会には、ガイアク卿もかなり待たされたらしいのでな。全く新しいチェスについて、私ならすぐにでも用意できると話をしたら関心を持ってくれたのだよ」


 この話しぶりから察するに前から親交があったということか。フレンズは生活用の魔導具などを随分と買ってもらっていたようだが、ドイルからも魔導具を買っていたのだろうか?


「ちなみに、今私が用意していたのがまさにその全く新しいチェスだ。それで、お前はどうなのだ?」

「勿論私も準備してきたさ。ここにいるエドソン殿に協力頂いてね」

「……ふん、協力ね」

「はっはっは、これは丁度いい。ならばフレンズ商会とドイル商会で互いに見せあってもらい、どちらが良いか私が判断するとしようか」

「なるほど、それで気に入った方を購入頂き、今後の取引もそちらを優先してもらえると」

「ふむ、まぁそうなるか」


 顎を擦り平気でそんなことを言う。商売で甘いことを言っても仕方ないとは思うが、それでも品物だけ用意させて突然こんなことを言い出すのは不義理が過ぎるだろう。


「……おい、こんなことで本当に大丈夫なのか?」

「申し訳ありません……ですがエドソン殿の魔導具なら間違いはないと思うのですが……」


 確かに私もドイルなんかの用意したものに負けるとは思ってないのだが、そもそもこのガイアクにあまりいい感情を持てないのだが――


 とは言え、ここまで来た以上仕方ない。とにかくとんだ茶番にも思えるが一旦付き合ってやることにする。


「ではこちらへ」

「うむ、期待しているぞ」


 ドイルが前を歩き、私たちもそれについていく。そのまま2階のバルコニーまで出ることとなった。


「外に用意したのか?」

「えぇ、確かに外は外ですが、ここはプレイする上で配置がよく見えるようにと思ってのことだ。チェスそのものは中庭に用意しているのだよ」

「中庭だって?」


 一体どういうことだと私はバルコニーからドイルの用意した新しいチェスとやらを確認したが……。


「何だこれは……」

「こ、これは本気ですか?」


 思わず声が漏れる。フレンズも怪訝な声を上げた。これが、新しいチェスだと?


「ふっ、驚いたようだな」

「……お前、ふざけているのか?」

「ふざける? 何を馬鹿な。私は本気でこれを全く新しいチェスとしてガイアク卿に紹介しているのです。そう、この画期的な奴隷チェスをね!」


 両手を広げて得意げに紹介してくる。バルコニーから見える中庭には確かにチェス盤のようなマス目が敷かれていた。


 そして本来チェスの駒が配置される場所には駒の代わりに首輪のついた奴隷が立たされている。


「ほう! ほう! なるほど奴隷を使ったチェスか! これは確かに新しいな! 面白そうではないか! しかし、しっかりアレは動くのか?」


 しかも、ガイアクはこの奴隷チェスというふざけた代物に興味津々ときている。


「はい、許可を頂けましたのでガイアク卿所有の奴隷に嵌められている隷属の首輪を調整させております」

「ふむ、やはり奴隷の扱いは購入先のお前の方が得意か」

「はは、その節は多くの奴隷を購入いただきありがとうございます」


 そういうことか……つまりこのガイアクとドイルは奴隷の購入を通じての仲ということか。話によるとドイル商会は商売の手をかなり広げているようだが、それであれば奴隷を扱っていても不思議ではなかったわけだ。


「ふふ、それでは早速始めてみるとしよう。ドイル相手してくれるのだな?」

「勿論です。では早速」


 そして悪趣味なゲームは始まった。ドイルとガイアクが交互に駒と呼ぶ奴隷を動かしていった。隷属の首輪があるので奴隷たちは2人の命令通り動かざるを得ない。


 そして遂に白のポーンが黒のポーンに攻撃を仕掛けたわけだが。


「ぎゃ、ギャアァアアアァア!」

「な、おい! 痛がっているぞ! 血も出ている!」

「は? 何を言っている? 当然だろう? これはそういうリアクションをも楽しむために用意したのだからな」


 馬鹿な……せめて刃ぐらいは潰しているのかと思えば、刃もそのままだというのか……。


「あの奴隷、血が出てますよ。早く手当しないと……」

「はっは、何を馬鹿な、ゲームを途中で止めるわけにはいかないだろう。やられた奴隷にはさっさと下がらせろ、怪我はすぐ治すな。やられた罰としてな」

「はっは、いやこれは手厳しい」


 何を言っているのだこの連中は? この光景を見てもまだ笑っていられるなどと正気の沙汰ではないぞ。


「ガイアク卿、流石にこのチェスは問題点が多すぎると思われますが」

「おいフレンズ! これ以上の物が用意できないからと適当なことを抜かすな!」

「適当などではない。お前とて奴隷を扱うならわかるはずだ。いくら奴隷とは言え不当な扱いは許されない。このような無駄に傷つけるような真似は言語道断であろう!」


 厳しい口調でフレンズが指摘した。確かに奴隷についてはジャミスからも話を聞いている。あやつは特に厳しくしていたがそうでなくても最低限守るべき規則がある。


「不当な扱い? はは、何を馬鹿な。ならば聞くがそれを後生大事に守ってる者がどれだけいると?」

「な、なんだと?」

「ふん、お前だってわかっているだろう? そんな規則なんてものはとっくに形骸化していることぐらい。奴隷に最低限の権利? バカバカしい。

いいか? 奴隷は物だ! ましてや顧客は奴隷を金を出して購入しているのだ。それを自由に扱って何が悪い!」


 こいつ、奴隷を傷つけることを何とも思ってないということか……くそ、これだから私は奴隷制度そのものに反対なのだ。


「おいフレンズ、興の冷めるようなことを言うな。そもそも私はそれだけ金を使っている。奴隷を買うのもやっとな貧乏貴族などならともかく、私ぐらいになればこんなもので咎められることはないのだ」


 ……つまりこいつはこういった行為が知られても大丈夫なよう裏金を使っているということか。はっきりとは言ってないが暗にそれを匂わせている。


 全くとんでもない客だったな。正直気分が悪い。このまま帰ってしまいたい気分でもあるが見てしまった以上、このまま放ってもおけない。


「もういい、話しても無駄なのはわかった。だが、ここは一旦こんなくだらないチェスを止めてもらい私の作成したチェスを見てもらおうか」

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