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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第八十話 減ったものと増えたもの

「でも助かったぜ兄弟。最近少し厄介な魔物の討伐依頼が発生しててな」

「厄介?」

「あぁ、メタルリザードって魔物がいてな。そいつの素材が急遽求められてるのさ」

 

 ふむ、メタルリザードか。


「皮膚が金属で出来た蜥蜴のような魔物ですね。それだけにとても固いのが特徴です」

「そうそう。試しに何体か狩ってみたんだが、ゼーツンゲだとちょっと厳しくてな」


 メタルリザードは確かに皮膚が金属で出来ているようなものだからな。切れ味の悪い剣だと刃こぼれしてすぐ使い物にならなくなる。


 ゼーツンゲは剣なのに防御性能に特化した変わった代物だ。メタルリザード相手だと切れ味に不安が残る。


「倒せないことは無いんだが時間がかかるし、刃もすぐ傷む。だけどこれなら、魔法の効果もあるし随分と楽になりそうだ」


 メタルリザードは物理的な攻撃には強いが魔法攻撃に対してはそうでもない。確かにソードリボルバーならうってつけと言えるだろう。


 込める弾によって様々な魔法の効果がつくからな。だが、メタルリザードが急に必要という話も気になるところだ。


「メタルリザードからは確かに鉄が取れる。しかしあくまで皮膚からだけだし、死んでしまうと不純物がかなり増幅する。精錬しても大した量は取れなくなる筈だぞ。それがそこまで必要なのか?」


 正直、メタルリザードを狩るぐらいなら鉄鉱山から鉄鉱石を掘って製鉄したほうがよっぽど効率が良い。


「まぁこのあたりには鉄鉱山がないからな」

「それは知ってるが、これまでは隣の領地から仕入れていたのだろう?」


 ハザンの言うようにこの周辺に鉄が採れる鉱山はないが、隣の領地には存在する。ただ、隣の領地はここほど魔物の数は多くなく、そのため鉄は採れるものの、全体で見れば農業中心の土地でありこの辺りのように冒険者が見張りに立ち続ける必要もないようだ。


 だから鉄が採れても武器などの装備がそこまで必要ない。だからここフォード領が鉄を買い取っている。


「あぁ、流石博識だな。だけど、最近どうも鉄の採れる量が減少したらしくてな」


 ふむ、なるほど。それでメタルリザードってわけか。


「しかし、そんなことで大丈夫なのか?」

「それがよ、とある地域でメタルリザードがかなり増えていてな。だからなんとか補えそうだって話にはなってるのさ」


 メタルリザードがか……とは言え純度の問題があるからな。品質を維持するのは中々大変だとは思うが、鉄は魔導具を作る上でも大事だからな。


「それならその新しい装備で頑張って狩るんだな」

「あぁ、今日にでも狩りに行って早速役立てるぜ!」


 そしてハザンは意気揚々と出ていった。冒険者ギルドには色々思うところがあるが、ハザンにはなんだかんだで色々協力してもらっている。


 メインの活動が冒険者業である以上、冒険者としての活躍についてあれこれ言うつもりはない。


 ……そういえば、宿まで案内したあの女も冒険者ギルドで受付嬢をやるという話だったか。


 しかし、あんな調子で本当に受付嬢が務まるのか不安が残るな。何せ子どもたちにも心配されていたほどだ。


「ご主人様、紅茶は如何ですか?」

「あぁありがとう。貰うとしよう」

「わ~い、紅茶だケーキだ~」

「メイさんの作るお手製ケーキも淹れてくれる紅茶も凄く美味しいんですよねぇ」


 メイは料理の腕も一流だからな。当然紅茶1つとってみても、茶葉の選別から温度調整と何から何まで完璧だ。


 2人が喜ぶのも当然と言えるだろう。

 私も早速カップに口をつける。うむ、相変わらずメイの淹れてくれた紅茶は最高だな。


 そしてホッと一息ついた私だが、なんとなくさっき思い出した女について考える。


 そもそもあの女、冒険者ギルドまで無事たどり着けるのか? かなりの方向音痴だったしな……。


「すみませ~ん、道に迷ってぇ、遅くなってぇ、しまいましたぁ~今日から受付嬢としてお世話になるぅ、スロウですぅ、どうかよろしくお願い致しますぅ」

「ブフゥウウ!」

「ご主人様、大丈夫ですか?」

「ゲホッ、ゲホッ、お、思いっきり噎せた――」


 メイが背中を擦ってくれた。くっ、思わず紅茶を吹き出してしまったではないか! というか、なんでこいつがここに来ているのか!


「あれ~? 僕~どうして冒険者ギルドなんかにぃ、いるの、かなぁ~? あのね、ここは荒くれ者の怖いお兄さんやぁ、お姉さんがぁ、一杯いるところなんだぞ」

「そ、それは、私が昨日お前に注意したことだろう!」

「えぇ~? そうだったかなぁ? でもぉ、それならぁ~、なおさらぁ、どうしてぇ、ここに、いるのぉ~?」

「ん? あ! もしかしてこの方が新しく手伝いに来てくれた方ですか?」

「え? 新人さんなの?」

「違う!」

「あ、はい。先輩の受付嬢さん、ですかぁ? 今日から、お世話になりますぅ、でもぉ、やっぱり皆さん、お美しいですねぇ~」

「え? お、美しい? 私が?」

「いやだ、この子凄くいい子!」

「だから違うと言ってるだろう! お前もそんな挨拶している場合か!」


 頭を下げて、にこやかに接してくるスロウにアレクトもブラもご機嫌で、メイもちょっとうれしそうだが、こいつは違うからな。


「違うぅ? でも、ここがぁ、冒険者ギルド、ですよねぇ?」

「ふぇ? 冒険者ギルド?」

「……なるほど理解いたしました。どうやらこのスロウ様は、冒険者ギルドと魔導ギルドを勘違いされているのですね」


 流石メイは話が早くて助かる。


「……え~と、何か問題がぁ、ありました、かぁ~?」

「大ありだ馬鹿者。ここは魔導ギルドで冒険者ギルドではないのだからな」

「えぇ~冒険者ギルドでは、ないん、ですかぁ? それならぁ、冒険者ギルドはぁ、どこにぃ、消えたの、ですかぁ~?」

「お前は自分が道を間違えたとは思わないのか?」

「えぇ~おかしいなぁ~地図の通りにぃ~来たんだけどぉ」


 地図を頼りに来たのか、それでよく間違えられたな……。


「とにかく、ここは冒険者ギルドではない。急ぎならさっさと向かった方がいいぞ。いいか、場所はな――」


 仕方ないから私はMFMも使って場所を説明してやった。


「ふぁ~凄いですねぇ、空中にこんなにぃ、詳しいぃ、地図がぁ、出るなんてぇ」

「そういう魔導具だ。いいからわかったら早くいけ」

「わかりましたぁ、ありがとうございますぅ~」


 そしてスロウは冒険者ギルドに向かった。全く、予想通りというかなんというか。


「でも、いい子そうだったのに残念でしたねぇ」

「冗談言うな。むしろ新人があの女だったら逆に大変だぞ」


 そうこぼしつつも、再び紅茶を口に含む。


「ですがご主人様。あの御方は本当に大丈夫でしょうか?」

「あれだけきちんと説明したんだ。それで駄目だったらもう知らん」

「ご主人様がそう言われるなら……少し心配ではありますが」


 メイはそういうが、流石にそこまで構ってはいられない。私は紅茶を啜りつつ、資料に目を通すが――


「ご主人様、お出かけですか?」

「……あぁ、ちょっと野暮用を思い出してな」

「あんな事を言って結局」

「間違いなくそうですよねぇ」

 

 アレクトとブラがこそこそ何か口にしているが、や、野暮用だ。まぁ、そのついでに様子をみにいってやってもいいがな――

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