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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第七十九話 ハザンの新しい装備

「本当にぃ、泊まってはぁ~いかれ、ないのですかぁ?」

「くどい! そもそも普段はこの宿の部屋を帰り場所にしているのだから泊まっていくとはいわんのだぞ」

「え~とぉ……?」


 くそ、中々疲れる女だな。


「……本当にそれで冒険者ギルドの受付嬢なんて大丈夫なのか?」

「えへへ、みんなぁ、心配性です、ねぇ~。こうみえて、私はぁ、しっかりした、お姉ちゃん、なのですぅ~」


 自分のことがわかってなさすぎて子どもたちにも心配されてると思うんだがな……。


「ふぅ、まぁ決まってしまったものは仕方ないが……だが、冒険者には粗雑で荒っぽいものが多い。おまけにしょっちゅう盛りのついたような連中も跋扈している。それが冒険者ギルドというところだ。お前みたいに隙だらけの女は連中からしてみたらいい鴨だからな。だから常に気を引き締めて毅然とした態度でいけよ」


 と言っても難しそうな気もするが、一応は釘ぐらい刺しておかないとな。


「……えへへ、お姉さんのことをぉ、心配して、くれてるんですねぇ~エドソンくんは、いい子なんだねぇ~よしよし」

「頭を撫でるな!」


 くそ、アレクトといいこいつといい何故人の頭を撫でるのだ。子ども扱いはもう致し方無しと諦めてるがな。


「とにかく、気をつけろよ。じゃあな」

「は~い、エドソンくんもぉ、気をつけてねぇ~」

 

 私のことより自分のことを心配しろと……ふぅ、まぁいい。思わぬ時間を食ってしまったが、その後はアダマンの工房に立ち寄り依頼していた品が出来ているか確認し、問題ないと判断し引き取ってからギルドに戻った。


「エドソンく~ん、手はまだですかぁ?」

「その件なら交渉中だ。まぁいい感触だったから近い内になんとかなりそうだがな」


 アレクトが目に涙をためながら聞いてきた。なので私が答えると途端に笑顔になり。


「本当ですかぁ! やった、やりましたよ!」

「おお、だからそれまで頑張れよ。じゃ、これを頼む」

「ふぇ、これはなんですかぁ?」

「ハザンに頼まれてた武器の本体が出来たんだよ。あとは記術した魔石を組み合わせるだけだ。あれから結構経つしな。こっちも急ピッチで頼む」

「……きゅ~」

「――ご主人さま。アレクト様がダウンしました」


 メイがアレクトの様子を見ながら冷静な口調で言った。ふむ、目を回しているがメイの様子を見るにまだ限界ではないのだろうな。


「仕方ない、甘いものでも作って匂いを嗅げば起きるだろう。その後少し休憩させてから再開だ」

「承知いたしました。ただ、作成途中のも多く、アレクト様お一人では少々厳しいかと」

「わかった。今日は私も手伝おう」

「あ、あの、私も少し休んでもいいでしょうかぁ?」


 ふむ、ブラにも疲れが見えるな。やはり人員不足は深刻だ。


「勿論だ。あと、休んである程度片付いたら、今日は帰っていいぞ。あまり無理して体を壊したら大変だからな」

「お気持ちは嬉しいのですが、まだまだ仕事が……」

「今日は私とメイである程度やっておくから心配しなくていい」


 正直メイが本気を出せば会計処理ぐらいはすぐ終えてしまう。あまり私たちが手を出すのは芳しくないと思っていたが、今は単純に人手の問題があるからな。


 それぐらいはカバーしてやる必要があるだろう。


 メイがスイーツを作り終えていい匂いが漂ってくると、予想通りアレクトが目を覚ましだした。それを皆で食し小休止した後仕事に乗り出す。


 確かにそれなりの量はあったが、私とメイが動いたことで大方片付けることが出来た。


 仕事が終わるなり、アレクトはそのまま床で寝てしまったな。メイがソファまで抱っこして運び毛布を掛けた後、何故か私まで抱っこしようとした。


「お、おい! 私は別にいいぞ!」

「……お疲れかなと」

「いや、私は特に、メイこそ大丈夫か?」


 何故かメイが残念そうな顔を見せていたが、とにかくこれでハザンの装備も完成したわけだが――






◇◆◇


「うぉおおぉお! これが、これが俺の新装備なのか!」


 次の日、丁度ハザンがやってきたので新しい装備を見せてやった。案の定大はしゃぎなハザンであり。


「兄弟! 俺は特にこの大剣が気になるぜ。おいおい、なんだよこの男心を刺激するデザインはよぉ。それに色も漆黒で渋いじゃねぇか。そしてこの奇抜な筒型のガード! くぅ~たまんねぇぜ! この大剣に名前はあるのかい?」

「勿論だ。その剣の名前はズバリ――ソードリボルバーだ!」

「な、なんだってぇええええええ!」


 ハザンがノリノリで答えてくれた。ふふ、なんだかそこまでオーバーなりアクションで反応してもらえると嬉しくなるな。


「そ、それで兄弟。当然これは、普通の剣とは違うんだろ?」

「勿論、今お前がいったそのガード部分だが、当然ただ手を守るためにあるものじゃない。それはシリンダーといってな。穴が6つ空いているだろう?」

「あぁ、確かにあるな」

「そこに、この魔弾を詰め込むことで、剣に様々な効果を付与できる。それがそのソードリボルバーの最大の特徴だ!」

「な、なんだと! じゃ、じゃあ何か兄弟。この剣は、この穴の数だけ、すげぇ効果が剣に付与されるってわけか!」

「正確にはそこに入れた魔弾の分だけだがな」


 ちなみに柄にはトリガーも付いていて、それを引くことで魔弾の効果を発揮できる。


 私が使ってるマイフルやリボルバーと違って弾丸を直接飛ばすわけじゃないが、効果の中には剣を振ることで火球を飛ばせるようになったり、雷を放出できるものもある。


 効果も暫く続くようになっているから一回使うごとに魔弾を消費するということもない。勿論効果が切れたら魔弾を再度使用することになるが。


 この魔弾もマイフルと違って直接飛ばすわけではないから使用後は、魔力を込め直せば何度でも使える。ハザンの魔力でも十分な程度だしな。


「こっちの、魔弾だったか? これには一体どんな効果があるんだ?」

「それは重力増加弾だな」

「じゅ、重力?」

「まぁ相手に対してだけ剣が重くなると考えればいい」

「おお! なんかすごそうだな! じゃあこっちはなんだ?」

「それは疾風魔弾で――」

 

 魔弾についても一通り説明を終えると、ハザンは満足そうに剣を装備した。

 

 似合うか? 似合うか? と私やメイに聞いているが、メイは変わりなく無表情だ。ハザンが少し寂しそうだったぞ。ブラがおだてていたからすぐご機嫌になった。単純なやつだ。


「次は防具だな」

「おお! これもいいじゃねぇか! すげー重そうでかっこいいぜ!」

「見た目はな。着てみればそうでもないはずだぞ」

「ほう、どれどれ――おお! マジか! すげぇ軽いし、何か動きやすいぜ!」


 ハザンが大喜びだ。デザインはハザンの好みに合わせたからなんとも重々しく見えるが実際はシリコーン油とマグネシアにネンドロという魔草を煎じたものを組み合わせて出来たシリキッドに魔法銀と鉄とを組み合わせた合成素材だ。


「気に入ったか? マイフリキッドアーマーは」

「おお、マイフリキッドアーマーというのか。これも何か特徴があるのか?」

「勿論。この鎧はマイフ粒子に反応し液状化するのが特徴で、マイナレフ現象とソリスレット」

「待て待て! そんなん言われてもわかんねぇよ。わかりやすく頼む」


 くっ、正直言えばソードリボルバーよりこちらの方が手間が掛かっているというのに。限られた素材から最大限の魔導効果を反映させた至高の逸品なのだぞ。


「まぁ簡単に言えば衝撃や魔法を受けることで内部のシリキッドが液状化し魔法や衝撃から身を守ってくれる。そういう代物だ」

「おお、その方がよほどわかりやすいぜ」

「はぁ、まぁお前ならそうだろうな。それとだ、その鎧に魔力を込めると全身に相手の攻撃を跳ね返す障壁を纏わせる」

「……むっ、魔力を込めるとか?」

「あぁそうだ。ただし障壁が出るのは本当に一瞬だ。タイミングを間違えばもろにダメージを受けることになるという非常にテクニカルな代物だ。使いこなすのはそれなりに大変だぞ」

「おお! そうか、そんなに難しいのか。テクニカルなのか!」

「そうだ。ま、お前ほどの腕前ならきっと使いこなせると信じているがな」

「あっはっは当然だ! 任せておけ!」

 

 ハザンは力こぶを見せつけるようにして自信をのぞかせた。それから新しい装備を眺めながら子どものように喜んでいる。

 

「エドソンくん、あの武器にしても防具にしても、もう少し使いやすく出来た気がするようなぁ」


 するとアレクトがこそっと私に耳打ちしてきた。


「まぁそうだろうな。例えばソードリボルバーにしてももう少し手を加えればわざわざ魔弾なんて詰め替える必要性もなくせただろうし、鎧にしても多少効果は落ちても長時間障壁を展開させたりといった物にも出来た」

「え? ならどうして?」

「簡単なことだ。それだと使い手のポテンシャルが発揮できない」

「ポテンシャル、ですか?」

「そうだ。さっき障壁の話が出た時、一瞬ハザンが難しい顔を見せただろう? あれが全てだ。あいつは根っからの戦士だからな。誰が使ってもそれなりに効果の期待できる装備なんて好まないのさ」


 だから、どんな攻撃にも腕に関係なく対応出来る鎧なんて作ってもあいつはそれを着ようとしないだろうし、武器にしても一緒だ。誰が使っても十全に効果が期待できるようなものを面白く思わないだろう。


 それよりも工夫次第で10が20や40になるぐらいの物を好む。それがハザンという男だ。だからその期待に応えられるものを作ったわけだ。


 ま、何はともあれ喜んでくれたなら何よりだがな。

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アレクトがまともに見える(笑)
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