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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第七十話 狙いは、ハザン?

いつも誤字脱字報告や感想を頂きありがとうございます!

 スケルトンから素材を手に入れた私たちはその足で今度は森の先にある岩山を目指した。コンクリートは骨だけで出来るわけじゃないからな。


「よぉ兄弟、今度はこんな見る限りゴツゴツした岩しかないような場所までやってきて、一体何するんだ?」

「寧ろ、岩しかないのが大事なのだ」


 ハザンの言うようにここには無機質な岩ばかりだ。見上げるほど高い断崖に挟まれた谷場であり、雑草の1本も生えていない。


 そう、だからこそあの魔物が現れる。結果はすぐに出た。予想通り、ゴツゴツした地面に罅が入り、かと思えば急速に地面が盛り上がる。


「グォ、オォオ、オオン――」

 

 とぎれとぎれの随分と間延びした声を上げて登場したそれにハザンが目を見張った。


「おいおい、まさかこれ、ゴーレムか?」

「そのとおり。そして私たちの狩りの対象だ」


 そう、この岩だらけの場所にはゴーレムが出る条件が整っていた。とはいっても場所が場所だけに、この地には冒険者があまりよってこない。特に採取できるものもないような地だからだ。商人が通るような道でもないし。


 なのでハザンのように知らない者がいてもおかしくないだろう。


「でもゴーレムってダンジョンにしか出ないんじゃないのか? もしくは魔法で生み出すとか。は! まさか誰かがこれを作り出したのが!」

「落ち着け、そんなものはいない。そもそもゴーレムだって魔物の一種だ。条件さえ合えば生まれてくるのだ」

「じょ、条件だって?」

「そうだ。詳しいことは割愛するが、まぁスケルトンと概ね一緒だ」


 スケルトンは土中の有機物とマイフが結びついて生まれた存在だ。そしてゴーレムは無機物とマイフが結びついた結果生まれた存在である。


 尤もスケルトンはカオス寄りのマイフである必要があったが、ゴーレムはどちらでも問題ないという違いがあるが。

 

「ふむ、わかったようなわからないようなって感じだけど、つまりこいつらは野良ゴーレムってことだな?」


 いや野良って……まぁそれで納得出来るなら別にいいけど。


「とにかく狩ってくれ」

「あぁわかったぜ兄弟!」


 任せとけ! と力こぶを作ってみせた後、ハザンがゴーレムに向かっていった。単純な意志を持った岩の魔物でもあるゴーレムは全部で3体いる。大きさはハザンと変わらないぐらいだ。


 このあたりは結びついたマイフの量とも関係してくる。


 ちなみにハザンはゴーレムについて魔法で生み出すものとも言っていたが、あれも元々は自然と生まれるゴーレムを参考にして構築された魔法だ。魔法は何もないところから生まれているわけではない。


 どんな事象にも理由があるのであり魔法だって然りだ。そんなことを思いつつ、ハザンの狩りに注目するが。


「おら! 破斬縦裂斬!」


 は? 破斬縦裂斬? な、なんだそれは? 見たところ力任せに思いっきり剣を振り下ろしているだけに見えるが……。


「どうだ兄弟!」

「う、うむ、どうと言われても、なんだ。その……なんだ、叫ぶのには意味があるのか?」

「うん? はっはっは当然だろう! 一流の冒険者というのは誰しもオリジナルの必殺技というもんを持ってるもんだ」


 ひ、必殺技? むぅ、見たところ恐らくだが本人も無意識の内にマイフを巡らせ振る力を強化した上で切ったといったところだが、そんなの別に叫ばなくてもいいだろう。むしろなぜ叫ぶのだ? 


 相手は決して頭の良いともいえないゴーレムだから喰らってくれるが、ある程度知能のある相手なら躱されるのではないか? あんなのはこれから技を出しますよと宣言しているようなものだろうに……。


「おらおらいくぜ! 破斬一文字斬!」


 うむ、ただ横一線に振っただけだな。それよりなぜ斬に斬と続くのか。いや、本人の自由だと思うし実際ゴーレムは倒せているからいいのだがな。


「これで止めだ! 破斬乱斬打斬断斬!」


 いやいや! いよいよおかしくなってきたぞ! 斬何回言う気なのだ! しかも間に入る言葉も微妙に似ていて舌噛みそうな名前になっておるぞ!


 ちなみに技としてはとにかくやたら切るといったところだ。ゴーレムもバラバラにはなったがう~む。


「どうだ兄弟? なかなかのものだろう?」

「……正直必殺技というのはよくわからんがよくやったな。助かるぞ」

「はっはっは。いいってことよ。だが、やっぱ兄弟から聞いた後だとこの剣は俺の必殺技に合ってない気がするんだよな。いまいち力の乗りが悪いと言うか……」


 正直、その必殺技とやらにそもそも意味があるのかという気がしないでもないが、その理由は見ただけでわかる。


 ハザンは魔法を使えるタイプではないが、無意識にマイフの操作をすることであのよくわからん必殺技を使用している。だが、今ハザンの持っている武器ではそのマイフを受け止めきれていないのだ。


 元々防御に特化したような代物だからな。今のように攻撃の為に流し込むマイフには対応しきれない。


「そんなわけで、俺の必殺技にもピッタリあったクールでホットな装備をよろしく頼むぜ!」

「クールなのかホットなのかハッキリして欲しいところだがな。まぁ新しい剣についてはアダマン親子とも話して煮詰めているところだ」

「おお! これは期待できそうだ! よっしゃ! まだゴーレムが必要ならどんどん狩ってや――」

『ゴオォオオオォオオォオオオォオオ!』

  

 ふむ、ハザンが張り切りだしたところで新たなゴーレムが出現したな。さっきと違って今度は20m級と言ったところか。


 それはそれとしてハザンが何故かゴーレムを見上げた状態で固まっているぞ。


「…………」

「ほら、どうした? 何をぼ~っとしておる。ゴーレムが出たぞ」

「え? これ、やるのか?」

「出来ないのか?」


 見下ろしてくるゴーレムに引きつった笑顔を見せるハザン。


 まぁ、確かに今のハザンが使っている武器だと少々厳しいか?


「くそ! 兄弟に無様な姿は見せられねぇ! やってやるぜ! 喰らえ! 破斬跳空大裂斬!」


 ジャンプして振り下ろすといった攻撃のようだ。大層な技名だがやってることは至極単純だな。


 それはそれとして、あの体格にしては大したジャンプ力だがそれでもゴーレムの腰ぐらいにした届いていない。振り下ろした斬撃もあまり効果はないようだ。表面に傷がついたぐらいだな。


「く、くそ! 全然歯が立ちやしねぇ!」


 体積だけじゃなくて質量も勿論増しているから、いくらBランク冒険者でも1人だと厳しいのだろう。私が考えた武器が完成すれば問題ない相手だと言えるが今回は仕方がないな。


 なので私は腕輪からマイフルを取り出し狙いを定めた。


「撃つぞ」

「おお、兄弟すまねぇ、て! お、おいおいおいおい! 一体どこを狙ってるんだ!」


 どこをと言われてもな。銃口はしっかりとハザンを捉えている。


「きょ、兄弟、まさかお前――」


 ハザンが動きを止めた瞬間を狙って私は引き金に掛けた指に力を込めた。青白い粒子を撒き散らしながら魔弾が飛び出し、ハザンに向けて突き進む。


「ぐぁ! きょ、兄弟、お、俺を裏切ったのか!」

「……は? 何を言っているのだお前は」

「いや、何をって兄弟、俺を撃って……」


 ハザンが胸を押さえ、わけのわからないリアクションを取るからつい冷めた目で見てしまったぞ。


 全く何を勘違いしているんだか。


「確かに撃ったが、それはお前を強化する魔弾だ。力が湧き上がってきただろ?」

「は? え、いや、た、確かに! こいつはスゲー! 全身の筋肉が歓喜に震えているようだ! 今ならどんな相手でもぶっ倒せそうだぜ!」

「そうか。ならさっさと動くんだな。ゴーレムが来てるぞ」

「うん、おお!」


 20m級ゴーレムの拳がハザンのいた場所を殴りつけた。石塊が飛び散り、拳サイズの跡が残される。


 だが、腕を引いた後の穴には誰もいなかった。当然だ。ハザンはとっくにお前の頭上にいる。


「今度こそ決めるぞ! 破斬跳空大裂斬!」


 振り下ろした刃がゴーレムの頭にめり込み、かと思えばそのまま勢いよく刃とハザンが落下していき股座まで切り下ろして着地した。


 刃のリーチを考えたら本来一刀両断など無理だが、強化したおかげで振り下ろすと同時に発生した衝撃波によってそれを可能としたのだ。


 こうして見事な開きとなったゴーレムは左右に分かれ地面に崩れ落ちた。


 うむ、最初のサイズぐらいの相手ならもぅ少し狩る必要があるかなと思ったが、これだけのサイズなら十分だな。


「やったぜ兄弟! いやしかし、お前のそのマイだかフルだかってのは凄いな! ガッハッハ! 俺と兄弟が組めば天下無敵も夢じゃないぜ!」


 そして近づいてきて私の肩を叩きながらそんなことをいい出した。全く冗談じゃない。


 大体本来私は表立って戦闘をこなすようなタイプではないのだからな。魔導具作りがメインであり好きなのだから。


 ま、とにかく私たちは倒したゴーレムを回収し、帰りに必要な魔草を採取した後に町に戻った。

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