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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第六十三話 魔導具師なら準備が必要

 キッコリが子どもみたいにはしゃいでいた。正直私からすればこれでもまだまだ改良点は多いのだが、ある程度この周辺で手に入る素材限定となると仕方がない。


「いやはや、これは本当にスゲーな! 木を切るのがますます楽しくなるぜ!」

「それは良かった。ところで何か気が付かないかな?」

「気がつく?」

「そうだ。カタスギの木を切ったにも関わらず、起きてないことがあるだろ?」

「うん? あ! そうだ! 確かにくしゃみが出ていねぇ! カタスギの木は花粉も厄介だってのに!」

「ふっふっふ――」


 私は不敵っぽく笑ってみた。なんとなく雰囲気出るかと思ったからだ。


「おいおい、まさかこれも何かあるのかい?」

「勿論だ。さっき腕輪をしただろう?」

「あぁそういえば……まさか!?」

「そのとおりだ。この腕輪は花粉カットリング。この腕輪をしている間は不可視の膜に覆われあらゆる花粉をよせつけないのだ」


 ちなみに花粉だけではなくモス系の魔物が撒き散らすような鱗粉にも対応していたりする。粉物全部と思っていい。


 当然、本来ならあらゆる物を遮断する障壁を展開させるぐらいが理想的だが、ある程度材料が制限されている状況ではやはりこういった限定的な効果なものの方が作りやすいし価格も抑えられる。


「あ、あらゆる花粉だと! ならこのカタスギの木を切った時につきまとうくしゃみ鼻水鼻詰まり、咳に喉の痛みに目の痛み、頭痛吐き気なんかも!」

「勿論防げる」

「コンラン花を採取したときのあの頭がぼ~としたり、混乱して裸で駆け回るとかそんな症状も!」

「勿論防げる」

「ネム草が近くにある時に生じる異様な眠気も!」

「当たり前だ」

「クサ草を踏んだ時に体に染み付くあらゆる糞尿を混ぜ合わせたような臭気も!」

「身綺麗でいられるぞ」

「すげーーーーーー!」


 キッコリが声を大にして叫んだ。そして私の肩をぐわっと掴み。


「これは欲しい! 欲しいが……お高いんでしょ?」

「そうだな。本来なら超魔波振動斧で金貨25枚、花粉カットリングで金貨10枚はもらいたいところだ」

「やっぱ高いな~!」

「そんなキッコリ様に朗報です」

「おお! メイさんの朗報と来たか! これは是非とも聞かねば!」


 そしてキッコリはそのままメイに注目した。どこかワクワクした表情だ。


「なんと、今この場で契約して頂けますと、通常価格金貨25枚の超魔波振動斧と金貨10枚の花粉カットリングが――」

「……が?(ごくり)」

「……金貨20枚」

「そう! 今ならたったの金貨20枚!」

「安い買った!」


 私とメイが並んで金額を伝えるとすぐ食いついてくれた。気持ちいいぐらい決断が早いな。


「いやぁいい買い物をした。これは魔導具が届く日が楽しみだぜ!」

「喜んで貰えて何よりだ」

「あぁ、期待してるぜ! それはそうとして、とりあえず魔導具が販売されるまでの分をここで確保しておくか!」


 そしてキッコリが超魔波振動斧でカタスギの木を切り倒していき、ついでに適当な大きさに切ってもいくが。


「ふぅ、これで終わりだな」

「うむ、ところで気になっていたのだが、この切り終わった材木はどうやって持っていくつもりなのだ?」

「え?」


 私が至極当たり前の疑問をぶつけると、キッコリが目をパチクリさせ。


「し、しまったーーーー! 暫く自分でやってなかったから馬車を動かすの忘れてたーーーー! てかそもそも大量の馬を手配しないとどうしようもねーーーー!」


 カタスギの木は重いからな。力自慢の冒険者などならもしかしたらなんとか運んだりするのかもだろうが、普通は馬を何頭も用意し荷運び用の馬車で引いて帰るところだろう。


「うぅ、折角切ったのに意味がなかったというのか」

「それなら大丈夫だ」

「え? 大丈夫だって?」

「あぁ、こんなこともあろうかと思って、重たいものを運ぶのに便利な魔導具を開発しておいた」

「な、なんて準備がいい坊主だ!」


 ふっ、魔導具師なら何事も先を読んでおくのが礼儀だからな。


「メイ」

「……はい」


 するとメイが、胸に手を入れもぞもぞと、胸!


「……伸縮自在軽々ロ~プ~」

「お、おおぉおおおぉおおおおお!」

「いや、ちょっと待て。待てメイ」

「……どうかされましたか?」


 いや、どうかじゃない。次の魔導具は自分で出してみたいと言っていたから任せたが、なぜそこから! しかも腕を振り上げてちょっと声まで変えた上ポーズまで決めてなぜ!


「どうしたメイ! なぜそんなとこからそれを出した! ポーズまで決めて!」

「一度やってみたかったのですが、ちょうどいい場所がここしかなかったのです」

「やってみたかった? 何を? ちょうどいい場所? そこが!?」


 何か疑問符が次々浮かんで仕方ないが、そんな私の肩が叩かれ、振り返ると満面の笑みでキッコリが立っていた。


「まぁまぁいいじゃないか」

「……メイ、そのロープは交換するぞ」

「勿論です」

「なぜ!?」


 なんとなくだ。キッコリが落ち込んでいるが構わず説明に入る。


「先ずお主が切った材木を一箇所に集める」

「ふむふむ」

「そして縛る。このロープは伸縮自在だから魔導具を使う感覚で魔力を込め片側を引っ張り出すようにしていけばするすると伸びる」

「既にすげー!」

「ちなみに短くしたい時はそう念じれば戻っていく」

「縄の大革命!」


 言うほど大したものでもないんだがな。


「さて、このロープを使って材木を一括りにしてっとこれで良し。さて持ってみるといい」

「は? いやいや、流石にこれだけ多く括ったら持てたもんじゃないぜ。そりゃ俺も腕力に多少自信があるけど、よって! なんだこりゃ軽! 軽! おいおい両手いらないぜ!」


 あっさりと持ち上がった材木の山をキッコリは片手でポンポンっと弄び始めた。そう、このロープで縛ったものはどんなものでも綿毛のように軽くなるのだ。


「これなら簡単に運べるだろう。ロープはあるし、こんなこともあろうかと荷車も用意しておいたからな」

「おお! さてはその荷車も何か凄い効果がある魔導具か!」

「……いや、これはただの荷車だ」

「あ、そう……」


 いや、ガッカリするなガッカリ。それだけ軽ければこれで十分なのだからな。


「いやぁ、でもこのロープ、これも欲しいなぁ、でもお高いんでしょ?」

「そうだな。これも本来なら1本につき金貨5枚は欲しいところだが」

「安い買った!」

「いや、おい!」


 まだ私は定価しかいってないぞ!


「いやいや、でもこれなら金貨5枚は安いぜ。これまでのも、どれも凄いけどな」

「お主がそれでいいならいいが」

「で、幾らになるはずだったんだ?」

「……なんと金貨3枚で」

「安い買った! 5本予約だ!」

「太っ腹だな」


 こうして私が用意した魔導具は全てキッコリが契約してくれた。勿論ブランド化が成功してからというのが前提ではあるがな。


「いやいや、最初は心配だったが、おかげで仕事も楽に終わって大助かりだ」


 そして町に戻ってからは改めてキッコリに感謝された。その上、仕事仲間に宣伝しておくとまで言ってくれた。


 よし、これで先ずは一人目の顧客を得たな。依頼料は大分安くしたがそれに見合う契約が取れた。尤もこれだけじゃ足りないだろうしまだまだ集める必要があるがな――

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― 新着の感想 ―
[一言] こんばんは ドラえ⚪んならぬメイさーんとよんで魔道具を出してくれそうですね どこでも⚪アも作ってそうですね(笑)
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