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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第五十八話 ケツモロコシ

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 ケツモロコシを探し始めた私たちだったが、当然、この辺りの魔物があのヘラクレスビートルばかりなどということはない。


「ぬぉ、くそ! なんだこいつ、つぇ~!」


 そう、そして今もまさにハザンが悲鳴を上げている相手も、このあたりに生息する魔物の1匹、セイバーマンティスだ。


 この魔物は見た目にはくすんだ皮膚を有する人サイズのカマキリといったところだ。だが対になった鎌状の腕を使った戦い方は、熟練した双剣士もかくやといった有様で、ハザンの太刀筋に上手く合わせ、鎌の形状を十全に活かして立ち回っている。


「う、ぬぐぅ」

 

 2つの鎌を小刻みに振るう連続攻撃だ。カカカカンッ、と小気味良い音を奏でながらセイバーマンティスが攻撃を纏める。


 たまらず後ろに下がるハザンを追うようにセイバーマンティスが回転し踏み込みと遠心力を活かした一撃を叩き込む。

 

 ハザンは咄嗟に剣を盾に変化させその重い一撃を受け止めた。だが、前も指摘したがあれは視界が塞がる欠点がある。


 並の魔物ならそこまで気が付かないが、セイバーマンティスは違った。盾になった剣の上端に鎌を引っ掛け飛び、回転するようにして背後に回り込んだ。


「しま……」


 驚愕するハザンだが、させるか、とアレクトがリボルバーから魔弾を発射。だが、セイバーマンティスの振り向きざまの一閃で魔弾は切られた。それでも爆発は引き起こされるが、爆轟の中、セイバーマンティスはピンピンとしていた。


 とは言え、おかげでハザンは難を逃れることが出来た。爆発の衝撃を利用して跳躍し距離をとったからだ。


「うぅ、爆発でもダメージが……」

「まぁ、直撃させないと厳しいだろうな」


 私はアレクトを下がらせ、マイフルを構えるが。


「あれ? 何か前と違うのがついてるような?」

「気がついたか。これはアタッチメント式で後付でパーツが追加できる」

「そ、そんなのまであるんだぁ」


 感心するアレクトだが、これぐらいいずれは作ってもらいたいものだ。


 さて、私がマイフルの下に追加したのは魔導ランチャーだ。これはマイフルより口径の大きな筒型の砲だ。


 中にはランチャー専用の特殊な魔弾が込められている。追加したランチャーにもグリップとトリガーがあり、これを引くことで大型の魔弾が発射された。


 細長く先端が丸みを帯びた弾丸で安定性を高めるために尾翼を付けている。これがあるだけで術式が短縮出来るため重要だ。


 そしてこれは形がマジックミサイルという魔法を使った時に発射される弾に似ているため、ミサイルと名付けてもいる。


「何か凄そうですが、スピードが遅いですぅ。かわされるか切られるかしちゃいますよ?」

「大丈夫だよく見てろ」


 案の定、セイバーマンティスは飛んできたミサイルを切り落とそうとするがそれをあざ笑うようにミサイルが軌道を変え、振られた鎌を避けながらセイバーマンティスの背後に回り込み、背中に命中した。


 爆轟が生じ、炎と衝撃に飲み込まれ魔物は絶命した。


「すげぇなおい。相変わらずとんでもねぇ」

「でも、どうしてあんな動きを~?」

「大したことじゃない。あれには相手を追尾する術式が施されている。今回はセイバーマンティスの背中から狙うよう念を込めて撃ったから、あぁいう動き方をしたわけだ」


 正面からまともに撃っても鎌で切られ威力は殺される。だから追尾可能なミサイルを使用したわけだ。


「う~ん、お子様なのに持っている魔導具が規格外すぎますねぇ」

「そのお子様が作れるんだからお前もしっかり作れよ?」

「え?」

「え? じゃない。基本私が見せてる魔導具はいずれお前にも作ってもらうつもりだ。出来ないとは言わせないぞ?」

「あうぅ、また課題がぁ~」

 

 五体投地で項垂れるアレクト。なぜかメイがポンポンっと頭をなでている。メイもわりとアレクトに厳しいのだが、しかし優しい時には優しい。アメとムチだな。アレクトもメイになついているし。


 それはそれとして、マイフルに関してはこのあたりで手に入る素材だけでは厳しいとは思う。でも追加パーツの魔導ランチャーは単体でも動作可能な武器で、こっちはそこまで構造は複雑ではない。


 ミサイルもハイラルの作成が難しければ鉄と魔物の素材でも代用可能だ。効果が爆発限定になるかもだが、追尾などで補えば十分使えるだろう。


 さて、セイバーマンティスも倒したし、ここにくるまでにかなりの魔物も倒したから、そろそろ魔物も警戒してくることだろう。それだけ慎重になるということだから今までよりは襲ってこないと思う。

 

 こっからだな。さて、ケツモロコシを探さないとな。


「というわけで、さぁ探せアレクト」

「ええぇ~! ケツモロコシなんて探したことないですよぉ」

「だからなんだ? やったことないから出来ませんじゃ前になんて進まないぞ。それにどういう風になるかぐらいは判っているんだろ?」

「それは、確かケツモロコシは地面に埋もれてるんですよね?」


 そう。名前の似てるトウモロコシは畑に芽吹き茎の先に出来るが、ケツモロコシは全く逆だ。芋みたいなものだな。


「判っているならさっさと始めるんだ」

「う、うぅ、わかりました。とりあえずこの辺りを掘ってみますぅ」

「待て」

「はい! 何か役立つ道具ですかぁ!」


 ぺかーん、とアホっぽい笑顔でアレクトが振り向いた。あぁそうだな。


「ほら、スコップだ。素手で掘るわけにもいかんだろ」

「な、なるほど! このスコップが実は物凄い魔導具なんですね! 欲しい素材を一発で掘り当てるとか波動砲が出るとか!」

「ただのスコップだぞ?」

「なんということでしょう!」


 アレクトが頭を抱えた。それにしてもこんなスコップ一つに何を期待しているんだ。大体魔導具にするならもっと用途に応じた効率的な形にするぞ。


「仕方ないから俺も手伝ってやるよ。スコップはまだあるのか?」

「あぁ、ハザン用にはこれだ」

「おお、て、でか! デカいなこれ! それに重い!」

「どうせなら鍛えられたほうがいいだろう」


 そのスコップは実は魔導具だ。持ち手の能力に合わせて最適な形状と重さに変化し鍛えられる。


 そしてそれから2時間ほどそこらを掘りまくる2人だが目的のケツモロコシがみつからない。


「ほ、本当にあるのかぁ?」

「つ、疲れましたぁ~」

 

 やれやれそこらが穴だらけだな。


「そんな無計画にやたらめったら掘ればいいってものじゃないぞ」

「えぇ~? でも場所がわからないのではどうしようもないですしぃ、あ! エドソンくんの何か地図が出るのでわからないんですか?」

「判るがそれに頼る気はない」

「どうしてぇ!」


 アレに頼ると甘えが出るからな。それにMFMはこのあたりの素材だけで出来る物じゃない。アレクトが自分で作れるなら構わないんだがな。


「全く、そんな物なくても大体の当たりは付けられるだろうに。例えばだ、メイこの辺りを頼む」

「承知いたしましたご主人様」

 

 メイにスコップを渡すと、手慣れた動きで地面を掘ってみせた。数秒の内に掘った先に黄色い先端が姿を見せた。


「ほら出たぞケツモロコシだ」

「本当だ! 凄いですぅ」

「これは驚いたぜ。でも確かに見事に2つに割れたこれはケツモロコシだ」


 そう、ケツモロコシは綺麗にパックリと割れた先端が上を向いた状態で埋まっている。


「でも、どうしてすぐわかったんですかぁ?」

「周囲の雑草からですね」


 私の代わりにメイが答えた。当然彼女もケツモロコシの特徴ぐらいは知っている。


「雑草だって?」

「はい。ケツモロコシが埋まっているとその周辺には雑草が生えづらくなるんです。だから一部だけ雑草が生えてないような場所に埋まってる可能性が高いのです」

「そ、そうだったのか……」

「知りませんでしたぁ」


 全くそれぐらいは判っていてほしいものだがな。


 とは言え、一度教えたら早いものだ。怪しそうな場所を手当たり次第に探っていき、結果50本のケツモロコシを掘り当てることに成功した。

 

 よし、とりあえずこれだけ掘れれば十分かなと。

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