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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第五十一話 目的の獲物

 やはりこの辺りは魔物が多い。目的のものではないが、様々な素材が手に入る。

 出てくる魔物を片っ端から狩らせ進んでいくが、途中でアレクトが悲鳴を上げた。


「き、きゃぁああぁ! 何かが絡みついてきますぅ」

「ただのトレントだろ。落ち着いて対処すれば大丈夫だ」

「ひぃ、がんじがらめになって動けませんぉぉ。ちょ、へんなとこに蔦がぁ~」


 泣きそうな顔で助けを訴えてくる。全く仕方のない女だ。トレントなんてただの木の魔物だろ。移動もそこまで速くないので近づいてきた獲物を枝を伸ばして捕まえて締め付ける。


「全く、メイ」

「はい、ご主人様」

 

 メイが動いた瞬間、トレントが縦半分に割れた。あっさりと絶命する。トレントで使える素材は樹皮と魔核だが、あれだけスパッと割れれば皮を剥ぐのも楽だ。


「やっぱり兄弟のメイドは凄いな……俺でも殆ど何したか見えなかったぞ」


 ハザンが唸り声を上げて感心する。ま、当然だな。メイをそこいらのメイドと一緒にされては困る。


「うぅ、助かりましたぁ」

「アレクト、普通の木とトレントの見分け方ぐらい覚えておけよ」

「いや、動くまで普通の木と変わりませんよねぇ?」

「そんなことはない。トレントは魔物だからな。よく見ていれば微かな動きがある」

「……エドソンくんはそれが判るんですかぁ?」

「馬鹿にするな。私にはそれが判別できる魔導具がある」

「そんなのズルいですぅ」

「ズルくない! 悔しかったら自分で作ることだな」

「むぅぅうぅ」


 ちなみに本当にトレントの見分け方を覚えるとは思ってない。自分で新たな魔導具を作る必然性を芽生えさせているだけだ。


 それに、そもそもトレントの大雑把な回避方法はある。トレントというのは幹が太いが高さはあまりない灌木の魔物だ。


 勿論そういったタイプの木も存在するが、この山ではそう多いタイプではない。だからそういった木にさえ近づかなければいい。トレントはそんなに積極的に動くタイプでもないしな。


 さて、その後もホーネットフライやキングアナコンダ、ポイズンリザードなどがあらわれアレクトとハザンで倒していったが、まだ目的の魔物とは出会えず、そのまま中腹を超え、かなり高い場所まで来てしまった。


 このあたりまで来ると、緑も大分薄くなり岩肌も顕になってきている。

 ふむ、そろそろ出会えても良さそうだが。


「ま、まだ登るんですかぁ~?」

「俺は体力的には平気だが、このあたりは麓に比べると魔物も凶悪だぞ。ギルドでもCランク以下は足を踏み入れても命の保証はないとされていた程だ」

「ふむ、そこまでの程か?」


 図書館で分布図を確認した限りでは、この山の魔物がそこまで強いとは思えなかったがな。

 などと話していた矢先、左右を岸壁に囲まれた道を進んでいた時であった。巨大な影が上から降ってきて地面を凹ませ着地した。

 

 そしてその生き物は、雄々しい角と顔をこちらに向け鼻息を荒くさせ唸り声を上げる。


「ブルルルゥ」

「ヒッ、う、牛です! どでかくて真っ黒な牛です!」

「な、しまった! この牛は!」

「おお、そうだこれだぞ! 目的のヘヴィーバイソンは!」

「「ええええぇええぇええぇええええ!?」」


 思わずテンションが上がってしまったが、なんだ? 2人揃って随分な驚きようだな。あぁ、目的の魔物が見つかって嬉しいのか。そうかそうか。


 ふむ、しかし中々の大物だな。普通の牛だと体重は500kg前後だが、これはその十倍はあることだろう。当然体格も並の牛が生まれたての仔牛に感じられるほど巨大だ。

 

 角は頭から2本、若干湾曲している。そして左右の肩からも角のような棘が生えていた。


 目も血走っていて向こうはやる気満々だな。


「お、おい兄弟! この魔物はBランク冒険者が最低2パーティーで挑むような魔物だぞ!」

「うん? そんなにもか? ふむ……」


 私は鑑定眼鏡(サーチレンズ)で確認してみるが、なんだ大げさな男だ。


「そこまでではないだろ。驚異レベルも10といったところだ」

「いや、よくわからないんだがそれでどの程度なんだ?」

「ショクヨークで驚異レベル6だ」

「驚異レベルって1違うだけで戦闘力が3倍ぐらい違うんだよねぇ?」

「つまりショクヨークの、え~と……とにかくとんでもなく強いってことだな!」


 ふむ、まぁでもこいつら飛ばないしな。


「そんなに気張るな。一応アドバイスという程ではないが、相手は精々角を使って突撃したり自分や相手の体重を重くする魔法が使える程度だから魔法と突撃に気をつければ大丈夫だ」

「うぉ! 体重が、急に増えた、ぐぉおおおぉお!」

「ひぃいぃいい!」


 言ってる側から何を喰らっているんだBランク冒険者よ……。


「な、なんかジャンプしましたよ! あと重い! 私の体も重いですぅ!」

「自分の体重を重くして押しつぶしに来る気だな」

「そんな呑気な!」


 アレクトまで魔法を喰らうとはな、やれやれ。ちなみに私やメイにも魔法が掛けられたようだが、私の服はその程度の魔法を受け付けるほど安くはない。


 メイにしても同じだ。魔法の耐性もバッチリだからな。


「やれやれ、これは無理だな。メイ、仕切り直しだ」

「はいご主人様」


 メイが地面を蹴り飛び上がったかと思えばヘヴィーバイソンを殴り飛ばした。


「ブモッォオオオオオ!」


 そのまま右の壁に当たり、跳ね返って左の壁に当たり最後に地面に落ちた。だがちょっと動きを止めた程度だ。急所も外れている、ダメージはそんなに残らんだろ。


 その間に私の魔導具でハザンとアレクトの魔法効果を打ち消す。これでいいな。


「あ、軽くなりました」

「俺も軽くなったが、メイさんとんでもないな……」

「感心している場合じゃないぞ。仕切り直しだ、今度はしっかりやれよ」

「え? 倒したんじゃないんですかぁ?」

「甘い。今のは一旦退けただけだ。ダメージも残ってないからすぐまた仕掛けてくるぞ」

「な、なんでそんなことぉ……」

「当然だ。私達が狩っても意味がないからな。お前たちが死なない程度にはサポートするが、狩れるまで何度でもやってもらうぞ」

「お子様なのに厳しすぎですぅ」


 アレクトの目には涙が溜まっていたが、何かいつものことだし泣き言は聞かん。


 ハザンは特に何も言わず、肩がプルプル震えていた。何だまさか怒ったのか?


「ふ、ふははは、お、おもしれぇ! 流石だぜ兄弟! つまり俺の為に最高の訓練相手を用意してくれたんだな!」

「いや、あくまで素材集めを自力でさせる為だぞ」

「やるぜ! 兄弟の俺への期待を裏切らないためにも俺と嬢ちゃんはやるぜ!」

「わ、私もですかぁ~?」

「覚悟を決めな嬢ちゃん!」


 ふむ、相変わらず単純だし、人の話を聞かないところもあるが、精神の強さは評価出来るな。


「さぁやったるぞ! て、重い!」

「またですかぁ~あ、私も!」

「少しは学習しろ馬鹿者!」


 結局それから4回ほど仕切り直したが、その頃になれば相手の魔法を使ってくるタイミングが掴めてきたようで、アレクトのリボルバーで魔法の行使を潰し、その間にハザンが距離を詰めて剣戟を叩き込むという方法を繰り返し倒すことに成功した。


「や、やったぞ! ヘヴィーバイソンを倒した!」

「なんか嘘みたいですぅ」


 うむ、苦労しただけ喜びも一入といったところか。

  

 その後は素材になる皮と角と魔核を回収した。特にこの皮が欲しかったのだ。マジックバッグに最適なのはこれだったからな。


「さて、目的のものが手に入ったし時間も時間だ。そろそろ戻るとするか」

「やっともどれるんですねぇ」

「さすがに俺も疲れたな……」


 少し休憩してから山を降りることにする。帰ったら術式忘れるなよといったら更に泣きそうになっていたが、その後は無事町に帰ることが出来た――

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