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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第四十八話 予算

 クリエをベンツに任せた後、私は宿に戻ることにした。部屋を出たところで廊下を歩いていたキャロルと遭遇したわけだが。


「あ、オーナー今日もお忙しそうですね」

「私は別にオーナーというわけでもないのだがな」


 実はあの一件があって以来、ビスティアの彼女にしてもウレルにしても、私のことをオーナーと呼ぶようになった。奴隷になったあいつらに関してもキャロルに命じられたからなのか顔は明らかに不機嫌ながらも私をオーナーと呼んでいた。メイにしても様付だ。


「オーナーがいなければ今の私達はありませんでしたし、ここはやはりオーナーとさせていただきたいです」


 私は拠点となる部屋があればそれでいいだけなのだがな。しかし、無理しているのではなさそうだしそれで気が済むのならと好きに呼ばせている。


「宿の調子はどうだ?」

「はい。おかげさまで評判が上がってかなり忙しくなってます。嬉しい悲鳴ですけどね」

「そうか。暇よりは忙しいほうがいいからな」


 以前のいい加減な経営と違い今は商売が得意なウレルの助けもあってかなり繁盛してきている。これまでは部屋が埋まっていない日も多かったが宿の経営者が変わり値段も安くなった上サービスも良くなったと噂が広まったおかげで客足も増え、おまけに受付もキャロルになったおかげで可愛いビスティアの子がいるとすっかり評判となり今では宿の看板娘だ。


 食事の方もあの男が真面目に厨房に立つようになったことでだいぶ味が良くなった。こちらも客の評価は上々とのこと。


 そんなわけで随分と忙しなさそうにしている。


「あの、一つご相談が」

「うん? なんだあらたまって?」


 キャロルが両手を祈るように握り聞いてきた。

 私は話を聞く体勢をとるが。


「実は忙しくなってきたので宿で何人か手を増やしたいのです」

「手を?」

「はい。勿論ウレルとも話し合って十分まかなえると判断した上での相談なのですが」

「そうか。なら好きにしたらいい。前も言ったがこの宿は任せたのだから、わざわざ私に相談する必要はないぞ」

「は、はい! ありがとうございます!」


 ふむ、随分と嬉しそうだな。そんなに仕事が回り切らないほど忙しかったのだろうか?


 とにかく、その件はキャロルたちに任せ、別れの挨拶を済ませた後、宿を出た。


 さてこのまま魔導ギルドに戻ってもいいが、今日は一つ図書館に立ち寄ってからにしよう。

 小さいながらもこの町にはそういった施設があるのだ。


 そこでこの領地や周辺の生態系や地図などを調べる。勿論殆どのことはMFMを利用しても知ることは可能だが魔導具に頼って得た情報は結局の所はただの情報に過ぎず知識には結びつかない。


 なのでしっかり図書館で必要な書物を閲覧し、知識を深めて今後の予定を組むのである――






◇◆◇


「ただいま」

「おかえりなさいませご主人様。ハザン様がお見えになっております」

「おお、エドソン! 戻ったか!」


 図書館で読書に耽っている間にいい時間になっていたので切り上げて戻ってきたのだが、ハザンがいるとはな。Bランク冒険者だというのに暇なのか?


「Bランク冒険者というのは中々時間に余裕があるものなのだな」

「いやいや! これでもしっかり今日の仕事はこなしてきてるからな! でもほら、俺は腕があるから仕事が早いんだ」

「それでわざわざうちまで来たのか。しかし大丈夫なのか?」

「うん? 大丈夫って何がだ?」


 何も判っていないって顔だな。


「うちは冒険者ギルドから目をつけられている節もあるからな。冒険者のハザンがうちに頻繁に脚を運ぶと外聞が悪いんじゃないか?」

「はっは、今更だろう。それに俺はそんなギルドのくだらないしがらみなんざに縛られないさ」


 ふむ、やはりかなり単純な男なようだが、よく言えばさっぱりした性格と言えるか。


「それにこれから武器を作ってもらうギルドに、顔を出さないでどうする」

「しっかり覚えていたか。忘れていたらどうしようかと思ったぞ」

「いや、いくらなんでもそこまで抜けてないからな!」


 抜けているという自覚があったのか。


「なら丁度いい。話を進めていくか。とりあえず頼まれたのは剣だが、防具はいいのか?」

「防具か?」

「あぁ、武器だけを良くしてもバランスが悪いだろう。それに見る限りその鎧もだいぶガタが来ているしな」


 ハザンが着ているのはかなり重厚そうな鉄の鎧だ。手入れはしているようだがすっかり色褪せてしまい凹みや傷も目立つ。


「そう言われてみるとあまり防具にこだわってなかったな。剣が防具っぽい働きもしてくれたからなぁ」


 こいつは脳筋ゆえ、本来はその膂力に任せた攻撃を叩き込んでいくのがあっているんだろが、肝心の使っていた剣がその妨げになっていた。


 なので今度作る剣はこの男が心置きなく攻撃に専念できるようにしたいところだが、それならば当然防具の性能にも目を向けるべきだ。


 なので装備品の方向性を決めるため話し合った結果。


「うし判った! なら新しい剣と新しい鎧を頼むぜ!」

「判ったそれで予算はどれぐらいだ?」

「ふふふ、当然、俺にピッタリの剣と鎧を作ろうってんだ! だから奮発して――金貨5枚だ!」

「この話はなかったことに」

「うおぉおおおい!」

 

 私が立ち上がるとハザンが叫んだ。全く、金銭面に疎い私でも流石に金貨5枚はないぞ。


「……ハザン様、今回作成する剣と鎧について、今の打ち合わせ内容を反映させて作るのであれば金貨200枚分は用意して頂かないと……」

「マジで! し、金貨200枚か、う~ん……」


 随分と悩んでるな。そんなに金に余裕が無いのか?


「お前、Bランク冒険者なんだよな? そんなに稼げないものなのか?」

「いやいや! そりゃ俺だってBランク冒険者だからな。これでも月の稼ぎは金貨400枚を切ったことがないぜ」


 なんだ稼いでるじゃないか。月の稼ぎの半分というと大きくも思えるが、冒険者にとっては生き死にを決める大切な物なわけだしな。


「ただなぁ、ちょっと博打で最近負けこんじゃって」

「お・ま・え・も・か」


 全く呆れて物も言えないぞ。


「まさか借金でもしているのか?」

「いやいや! 俺はどんなにひもじくても借金だけはしないって決めてるんだ!」

「……それならば博打も止めた方がいいのでは?」

「フッ、メイさん、男には決して避けてはいけない道というのがあるんだぜ」

「さっさと避けろそんな道」


 しかも負けこんでるって思いっきり躓いているじゃないか。


「大体それだけ稼げるなら今なくても装備が出来るまでになんとかなるんじゃないか?」

「おお、なるほど。あぁ、でもこれから金貨200枚か……」


 また頭を悩ませてるな。全く仕方のないやつだ。まぁどっちにしろもともとそのままの金額でいくつもりはなかったしな。


「金貨100枚ならどうだ?」

「え? 負けてくれるのか?」

「ばかいえ。ただ、金貨100枚相当を手伝ってくれるというなら話ば別だということだ。それに、場合によっては今後もいろいろとお願いすることになるかもしれないしな」

「お願い? よく判らないが金貨100枚分が浮くならなんでもしてやるよ」

「言ったな」


 なら、なんでもしてもらうとするかな――

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