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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第二章 仲間との再会編

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第325話 ドイルの弟

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「助けていただき、本当にありがとうございました。

 私はデイルと申します。そして、こちらが僕の護衛を務めてくれているルークです」


 そう名乗り、デイルは深々と頭を下げた。

 それに続くように、ルークと呼ばれた執事も一歩前に出て、寸分の乱れもない所作で礼をする。


「御主人様をお救いいただき、心より感謝いたします」


 実に礼儀正しい。

 姿勢も言葉遣いも洗練されていて、護衛というより側近に近い印象を受ける。そして――やはり目につくのは、彼の耳だ。人間にしては僅かに尖っている。


「私はエドソンだ。こっちはメイドのメイ」

「どうぞ、よろしくお願いいたします」


 メイも丁寧に一礼する。

 挨拶を終えたところで、私は本題に戻ることにした。


「それにしても……正直驚いたよ。

 ドイルから、家族の話は聞いていたからね」


 その言葉に、デイルの目がわずかに見開かれた。


「やはり……兄さんのことをご存じだったのですね。そして、その言い方だと……もしかして、兄さんは僕のことを“亡くなった”と思っていましたか?」


 問いかける声は穏やかだったが、そこに滲む緊張は隠しきれていない。

 私は小さく息を吸い、静かに頷いた。


「そうか……」


 デイルは視線を落とし、少しだけ自嘲するように笑った。


「無理もありません。僕自身、しばらくの間はそう思っていましたから。家族は全員亡くなり――僕だけが、運よく生き延びたのだと」

「運よく、というのは?」


 私が促すと、デイルは一度言葉を探すように間を置いてから語り出した。


「僕は……環境が最悪で、一年も生きられないと噂されていた鉱山に、奴隷として送られました」


 淡々とした口調だが、その内容は重い。

 私は思わず眉をひそめた。


「毎日のように、仲間の死体が運び出される場所でした。正直、僕も覚悟していました。でも――ある日、鉱山で大きな崩落事故が起きたんです」


 デイルはぎゅっと拳を握りしめる。


「その時、普段から僕に目をかけてくれていたおじさんが……僕を庇ってくれました。そして逃げろ、と。僕は必死で瓦礫の隙間を抜けて、鉱山から脱出することができたんです」


 だが、その代償は――言うまでもない。


「……逃げ出せたとしても、首輪はどうしたんだい?」


 私がそう尋ねると、デイルは小さく頷いた。


「はい。しばらくは隠しながら生き延びていました。ですが途中で出会った行商人に気づかれてしまって……」


 一瞬、不安げに視線が揺れる。


「でも、その方は。仕事を手伝うなら首輪を外してやる、と言ってくれたんです。おかげで僕は奴隷から解放されて……そのまま、商人としてのノウハウまで学ばせてもらいました」


 なるほど。

 奴隷の首輪を外す行為は、普通なら大きなリスクを伴う。それを承知で行ったというのか。


「ところで……兄さんのことなのですが」


 デイルが、意を決したように顔を上げる。


「そうだね……」


 少し迷ったが、隠しきれる話ではない。

 私は、ドイルが捕まったこと、そしてそこに至る経緯を、包み隠さず伝えた。


「そんな……兄さんが……」


 デイルは言葉を失い、唇を噛みしめた。

 兄が悪事に手を染めていた事実も、簡単に受け入れられる話ではないだろう。


「確かに、ドイルは捕まるようなことをした。だが最後は、自分の罪を認めて連行された。潔かったし、彼に助けられた商人も多い。私の知り合いも嘆願書を書くと言っていたよ」


 私は、まっすぐにデイルを見る。


「気休めに聞こえるかもしれないが……彼は、まだやり直せる」

「……そうですか」


 デイルは静かに息を吐いた。

 兄弟での再会を思い描いていたのなら、この現実はあまりにも遠い。


「それに――ドイルは、君たち家族のことをずっと思っていた。その想いがあったからこそ、商会を大きくできたのだと、私は思っている」

「兄さんが……僕たちのことを……」


 デイルは一瞬目を伏せ、そして顔を上げた。


「……うん。それなら、今度は僕の番ですね」


 その瞳には、確かな決意が宿っていた。


「僕が、もっと商会を大きくします。兄さんが罪を償って戻ってきた時、胸を張って迎え入れられるように」

「素晴らしいお考えです、デイル様」


 ルークが心から感服した様子で言う。


「……もっとも、僕はまだ自分の店も持っていないんですけどね」


 そう言って、デイルは照れたように笑った。

 ドイルと比べると、随分と大人しい性格のようだ。


 人は良さそうだが、商人としては少し控えめか。

 ――いや、余計なお世話だな。


 ふと、視線を感じた。


 気づけばルークが、じっと私の顔を見ている。


「何か、私の顔に気になるところでも?」

「あ……失礼しました」


 ルークは一拍置いてから、慎重に言葉を選ぶ。


「不躾を承知でお尋ねしますが……貴方は、エルフの方、ですよね?」


 なるほど。

 それで先ほどから観察していたわけか。


 私は小さく苦笑した。

本日より本作の電子コミカライズ版最新話が配信されてます。

どうぞ宜しくお願い致します。

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