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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第二章 仲間との再会編

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第324話 道中出会った意外な人物

 メイの巧みな運転のおかげで、旅路は驚くほど順調に進んでいた。

 エクサスに近づくにつれ、街道も舗装のされた綺麗な道に変わっていた。魔導車は揺れも少なく、一定の速度を保ったまま森と丘陵の合間を縫うように走っていく。


 この調子なら――

 あと半日もあれば、自由商業都市エクサスに到着するだろう。


 そう考えていた、その時だった。


「た、たすけてくれぇえええぇ!」


 甲高く、切羽詰まった悲鳴が風に乗って届いた。


 即座に車内に搭載された魔導探査機(マイフレーダー)を確認する。

 地形の凹地に、二つの青い反応。

 そして、それを取り囲むように点滅する複数の赤――


「囲まれているな」

「数は……七。いえ、八体ですね」


 メイの声も引き締まる。


「メイ」

「はい、御主人様」


 短い言葉だけで意図は伝わった。

 メイは迷いなくハンドルを切り、街道から外れて丘の向こうへと魔導車を走らせる。


 視界が開けた先は、すり鉢状の小さな盆地だった。


 その中心で――

 頭を抱え、地面にうずくまって震える男が一人。

 そして、その前に立ちはだかるようにして構える、執事姿の男が一人。


 周囲を囲むのは、赤褐色の毛並みを持つ魔物たち。


――レッドジャッカル。


 群れで行動し、確実に勝てると判断した獲物だけを執拗に追い詰める狩猟魔物。

 一匹一匹の戦闘力はさほど高くないが、数を揃えた時の厄介さは折り紙付きだ。


「水の精霊よ!」


 執事が叫ぶと同時に、前方のレッドジャッカル一体の頭部が水の膜に包まれた。

 呼吸を封じられた魔物が激しくもがく。


 致命的な魔法だ。

 だが――


「同時展開は無理か」


 次の瞬間、残るレッドジャッカルたちが一斉に距離を詰めた。

 仲間が倒れたことなど意に介さず、獲物へと牙を剥く。


 執事の顔に、わずかな焦りが走る。


 私はマイフルを構え声を張り上げる。


「そこまでだ――ショット!」


 マイフルの引き金を引く。


 放たれた魔弾は、空中で無数の光の帯へと分裂し、扇状に広がって群れへと降り注いだ。


 散弾型魔弾。

 ベンツの提案で改良した試作品だが、こういう場面では実に使い勝手がいい。


 威力は分散されるものの――

 レッドジャッカル相手なら十分。


 光が走り、魔物たちの身体を次々と打ち抜く。


 全滅には至らないが、完全に戦意を喪失させるには足りた。


「これ以上続けるなら、次は容赦しないぞ」


 低く告げると、レッドジャッカルの群れは一斉に身を翻し、丘の向こうへと逃げ去っていった。


 やはりだ。

 連中は臆病で、相手が格上だと理解した瞬間に撤退する。


「御主人様、流石です」

「新しい魔弾の挙動も確認できた。悪くない成果だな」


 マイフルを収め、私たちは二人のもとへ向かう。


「うぅ……こわいよぉ……食べられちゃうよぉ……」


 地面に伏せたまま、男はまだガクガクと震えていた。


「御主人様、ご安心ください。もう魔物の群れは立ち去りました」

「ふぇ……? 本当?」


 執事に声を掛けられ、男は恐る恐る顔を上げる。


 周囲を見回し――

 魔物の姿がないことを確認した瞬間、表情が一気に緩んだ。


「ほ、本当だ! いない! 君たちが助けてくれたんだね!」


 勢いよく立ち上がった、その顔を見て――

 私とメイは、同時に息を呑んだ。


「……ドイル?」


 間違えるはずがない。

 あの顔、この体格。


「ドイル! どうしてお前がここにいるんだ!」

「ふぇ?」


 男は、間の抜けた声を上げてこちらを見る。


 いや、待て。

 ドイルは罪を認め、捕らえられ、連行されたはずだ。


 混乱する私たちに、今度は男の方が驚いたように目を見開いた。


「ドイルって……あ、貴方はもしかして、兄さんを知っているのですか!」


――兄さん?


 つまり。


 目の前にいるこの男は――ドイルの弟だというのか。


 新たな疑問が、静かに胸の中で膨らんでいった。

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