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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第二章 仲間との再会編

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第316話 商業ギルドで出会った意外な人物

いつも感想や誤字脱字報告をいただきありがとうございます!

 フレンズとの話が終わってしばらくして、ようやく私たちの順番が回ってきた。


 カウンターには、きっちりとまとめた黒髪に、銀のフレーム眼鏡を掛けた若い女性が座っている。制服の袖口までしっかりと整え、胸元にはギルドの徽章を留めていた。背筋を正した姿勢と静かな笑みが印象的で、真面目な性格が一目で伝わってくる。


「はじめまして。お話ができて光栄です、エドソン様」


 落ち着いた声。だがどこか緊張を含んでいる。


「おや? 私をご存じで?」

「はい。父からお話を伺っておりますので」


 父から――。眼鏡の奥の瞳を見つめた瞬間、なるほどと合点がいった。

 理知的な雰囲気の中に、どこか見覚えのある面影がある。


「もしかして、フレームさんの?」

「はい。いつも父がお世話になっております」

「えぇえ!? フレームさんの娘さんだったのですか!」

「こんなに可愛らしい娘さんがいたなんて驚きです」


 メイが柔らかく微笑みながら言うと、女性――レンズが耳まで赤く染めた。

 緊張していた口元が、少しだけ緩む。


「そ、そんな……可愛いなんて」


 なんとも初々しさがあるな。


「私はレンズと申します。最近、この商業ギルドの受付として働かせていただくようになりました」


 なるほど、見覚えがなかったのも納得だ。


「そうか。こちらこそよろしく頼むよ、レンズ君」

「はい。精一杯対応いたします。それで本日は、どのようなご用件でしょうか?」


 おっと、そうだった。つい父娘の話題に引き込まれてしまった。


「実は、自由商業都市エクサスに興味があってね。見識を広めるため、そして魔導具の取引の可能性を探りたくて、一度訪ねてみようと思っているんだ。詳しい情報を聞ければ助かる」

「……なるほど、エクサス、ですか」


 レンズの表情がかすかに曇った。フレンズの話していた嫌な噂が頭をよぎる。


「エクサスは商人にとって憧れの都市とされています。商業ギルドの本部もそこにありますし、各国から取引人が集う交易の要です。ですが――今はあまり、お勧めできる状況ではありません」


 やはり、同じことを言うか。


「理由は、商人の失踪事件や吸血鬼の噂、だろうか?」

「さすがエドソン様。すでに耳に入っているのですね」


 レンズは軽く頷いた。眼鏡の奥の瞳は、若いながらも確かな判断力を感じさせる。


「そう、それも理由の一つです。けれど、それ以上に問題なのは“闇商会”の存在です」

「闇商会?」


 アレクトが首を傾げ、メイも静かに目を細める。


「ええ。非合法な取引を行う裏の商人たちです。奴隷の売買、臓器取引……それに、最近は“闇の魔導具”というものまで扱っているらしいのです」

「闇の魔導具……!?」


 私の声が少しだけ上ずった。メイとアレクトが顔を見合わせる。


「御主人様の好奇心に火がついてしまいましたね」

「魔導具と聞いた瞬間にスイッチ入ってるのですぅ」


 アレクトが呆れ顔でため息をつく。だが、否定はできない。

 魔導具師として、“闇の魔導具”という響きは放っておけない。


「話によれば、使うだけで相手を服従させる道具や、悪魔を呼び出す品まであるとか。ですが、あくまで噂でして……私たちも確かな情報を掴めてはいないのです」

「使うだけで服従……悪魔召喚……なるほど」


 私は思考を巡らせた。

 服従の魔導具なら、恐らく精神干渉系。魔力干渉や共鳴結晶を応用した術式だろう。

 だが悪魔召喚――もし本当に召喚なら、それは禁術の領域だ。あるいは、感情を媒介にして“悪魔化”を誘発させるタイプか。いずれにせよ危険極まりない。


「話はわかった。その闇の魔導具だけでも、行く理由ができたな。魔導具師として、放ってはおけない」


 そう言うと、アレクトが力強く頷いた。


「マスターも、カミラさんも放っておけませんしね!」

「ええ、御主人様の力が必要とされているのです」


 メイの穏やかな声に背を押され、心の決意がより固まる。


「出来ればすぐにでも出発したい。だが初めて訪れる都市だ。紹介状を書いてもらえると助かるのだが」


 そう頼むと、レンズは一瞬目を見開き、それから真剣な表情に変わった。


「……本気なのですね」

「当然だ」

「わかりました。皆様のご活躍は父からもよく聞いております。紹介状は父に頼む形になりますが、明日には用意できると思います」

「助かる。よろしく頼むよ。フレーム氏にもよろしく伝えておいてくれ」

「はい、必ずお伝えいたします」


 しっかりとした声。小さく頭を下げた姿は、若いながらも確かな誇りを感じさせた。


 こうして紹介状を書いてもらう約束を取りつけ、私たちは商業ギルドを後にした。

 外に出ると、夕方の街路はまだ賑わいを残している。

 明日には出発の段取りを整えねばならない。


 エクサス――闇の商会――そして、カミラ。

 すべての糸が、再び動き出そうとしていた。


本作の電子コミカライズ版最新話が本日より配信されてます。

どうぞ宜しくお願い致します。

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