第307話 メイでも扱えた?
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ワグラートスは無事封印された。これは私ひとりの力ではない。仲間全員でつかみ取った勝利だ。
「しかし剣が砕けて大丈夫なのか?」
「あぁ。むしろその方がいい。剣が残っていれば、逆に封印を解かれるきっかけになりかねないからな」
「へぇ、そういうもんなのかい」
ハザンに説明すると、エバが感心したように頷いた。封印に関わる痕跡は少なければ少ないほどいい。
「本当、命がけだったゲコッ……」
「お疲れさまですぅ。フログさんの大活躍だったのですぅ」
腰を抜かし、へたり込んでいるフログにアレクトが労いの言葉をかけた。
「そ、そう言われると照れるゲロ……でも、こんなのはもう懲り懲りゲコッ。いくら呪いが効かないからって……ゲロ?」
ふと、フログの目がメイに向いた。
「そういえば彼女も呪いが効いてなかったゲロ! つまり、その子でも封印剣を使えた筈ゲロ!」
ビシッとメイを指差し、フログが喚く。――あぁ、その話題に触れてしまったか。
「違うゲロ? 答えるゲコッ!」
「それは……ごめん、失念していた」
「ゲコ~~~~~~ッ!」
頭を掻きながら答えると、フログが盛大にひっくり返った。
「うぅ、だったら私がやることなかったゲロ……」
「いいじゃねぇか。結果オーライだろ」
ハザンが笑って肩を叩き、フログを慰める。
「でも、エドソンくんにしては珍しく抜けてるのですぅ」
「ははっ……まぁ、そういうこともあるさ」
アレクトの疑わしげな目を笑ってやり過ごしたとき、隣に立ったメイが小さな声で囁いた。
「――御主人様。あの封印剣……おそらく生命力を糧に発動する類のものだったのではありませんか?」
私の胸の奥が一瞬ひやりとする。やれやれ、やはりメイにはお見通しか。
「……まぁ、それを言ってフログが“やっぱり自分の手柄だ”と調子に乗るのも面倒だからな」
と、わざと軽口めかして返す。
「――御主人様、お気遣い、感謝いたします」
メイはそっと微笑み、ほんの少しだけ柔らかい声で言った。
「――なぜメイがお礼を?」
「だって……いえ、御主人様。私は、御主人様が作ってくださった存在であることを、誇りに思っていますから」
その言葉に、不意に胸の奥が熱くなった。
やはり私は、メイをただの魔導具とは思えない。彼女は生きている――そう思わずにはいられなかった。
「さて。無事解決したし、そろそろ戻って報告しようか」
「賛成ですぅ!」
「疑り深い領主様に見せつけてやろうぜ」
「これで少しは考えを改めてくれるといいけどねぇ」
「それより早く薬を作って欲しいゲロ!」
皆で笑い合いながら、私たちはボラグ子爵への報告のため帰路についた。
封印剣は砕け散ったが、残されたものは確かな絆と、それぞれの胸に芽生えた想いだった。
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