第百九十五話 アレクトを信頼してい、る?
いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!
結界の先にいたフレッシュゴーレムは常に毒ガスを放出し続けている。
普通に考えたら近づくのも危険そうだがやり方次第では接近戦でも十分行ける相手だ。
「わ、私にあんなのの相手無理ですよぉ」
「可能だ。衝撃手袋があっただろう? あれを利用する」
インパクトハンドは私たちがアンジェ率いる騎士団とひと悶着あった際にアレクトが利用した魔道具だ。
こいつにしてはあれは中々よく出来た魔導具だった。
「アレですか。確かに自信作ではありますが~でも以前不具合がぁ」
「あぁわかってる。ちょっと貸してみろ」
「はい? これをですか?」
アレクトがインパクトハンドをローブから取り出したので受け取り、変術ペンを利用して術式を書き換えた。
「これで大丈夫だな。あとはこの穴にと――」
手持ちの魔核をカットし魔石にしてインパクトハンドの穴に嵌めた。加工が上手くいったようでピッタリとハマってくれたな。
「よし。これで大丈夫だ。もう動作不良を起こすこともないだろう」
調整が終了したインパクトハンドをアレクトに戻してやった。
アレクトの眼鏡の奥の瞳が丸くなりキョトンっとした顔を見せている。
「えっと、直してくれたの?」
「とりあえずな。もっとも元々術式はほとんど完成されていた。原因は術式の僅かな歪み。本当に些細なことだそれであっても使用に支障をきたすことがある」
「そ、そうだったのですか……」
アレクトが残念そうな顔を見せた。そこに私は成長を感じた。
以前のアレクトであればほとんど完成したことを喜んでいたことだろう。
だけど今は僅かな歪みがあったことを悔しがっている。魔導具師はそうでなきゃいけない。
魔導具の作成はトライアンドエラーの繰り返しだ。例え僅かなミスであっても反省し原因を解明する必要がある。
「エドソンくん! 何が悪かったか私も追求したいです!」
「あぁそうだな。だがそれは無事戻ってからだ。今はあのゴーレムを何とかしないといけない」
アレクトがやる気を出しているが今は他に優先すべきことがある。とは言え今回の歪みはしっかり確認すればアレクトにもすぐわかるだろう。
最近はアレクトも疲れがあったからな。故に見逃してしまったというべきか。体調管理が出来てなかったという意味では私にも反省点はある。
「ところでこの穴にハマってるの魔石ですよね?」
「あぁ。それこそが秘密兵器だ。私とメイで道線は確保する。アレクトはそこから一気にあのゴーレムに近づき土手っ腹にインパクトハンドを叩き込め」
「へ? ふぇええぇえええ! しょ、しょんなの無茶ですよ~!」
アレクトが涙目になって私に掴みかかってきた。くっ、こういうところはまだまだうざったいな!
「えい放さんか! 泣き言を言ってる場合じゃないのだぞ!」
「でもぉ、でもぉ」
「アレクト様。ご主人様は絶対に無理なことは口にしません。つまりアレクト様なら可能と信頼してのことなのです」
「ふぇ、し、信頼? 本当?」
「……アァ、モチロンサ」
「何かすごく棒読みなんですけどーーーー!」
アレクトがメイに泣きついた。
「ご主人様……」
メイの視線が痛い。くっ、勿論失敗するとは思ってないが改めて信頼してなどと言われるとなんとも反応に困るぞ。
「とにかく私とメイがいる限り大丈夫だ」
「わかりました私メイさんを信頼してます!」
「おい!」
私は信頼できないとでもいうつもりかこいつは!
「まぁいい。それと大事なことだが毒ガスを放出してきたらそのタイミングでインパクトハンドを使え。これはいちばん大事なことだ」
「ふぇ! うぅ、できるかな……」
「大丈夫ですタイミングは私が伝えますので」
「め、メイさんがそういうなら!」
こいつ、メイについては素直に聞くな。
まぁ実際にマンツーマンで教えていた時間はメイの方が長いし何より二人は仲がいいしな。
メイがアレクトを気に入ってることも見ていればわかる。アンドメイドのメイではあるがアレクトを姉妹のように思ってるのかもな。
「よし、そろそろ始めるぞ。準備は出来たな?」
「は、はい。アレクト行きます! や、やぁああぁあ!」
そしてなんとも気の抜けそうな掛け声ではあったがアレクトがゴーレムへと向かっていった。さてと、ゴーレム退治といくかな――
本日よりコミカライズ版の最新話が配信開始されております!
更にコミック単行本が3巻まで好評発売中!4巻も9月発売予定です!
どうぞよろしくお願い致します!




