第百九十話 泉の謎
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side ハザン
改めて隠し財産のあった部屋を見回してみる。前から気になっていたのは部屋に設置された人工的な泉だ。
部屋の恐らく正面には水が溜まっている泉があった。だが更に壁際の三ヶ所に泉が設置されているがそこには水が溜まってなかった。
「怪しいとしたらこの泉だよな……院長この泉で何か変わったことはなかったか?」
「そうですね……水の溜まっていない泉にも硬貨が紛れていたことぐらいしか……」
ダリアに聞くと返ってきた答えがそれだった。空の泉に硬貨が入って……いた?
「そうか! ダリア院長袋に入った金貨を出してみてもいいかい? 勿論取ったりしねぇぜ?」
「はい。勿論構いません。信用してますので」
ニコッとダリアが微笑んで許可してくれた。いい笑顔だぜ。
「よしそれなら!」
俺は紐を解き袋から泉の中に一気に金貨を流しこんだ。
「ハザン様これは?」
院長が不思議そうに聞いてきた。いきなり空の泉に金貨注いだらそうも思うか。
「一つだけ水が入っているのに他は水がない。つまり残り三つも何かで満たせとそういう意味だと俺は考えたわけよ。そこでここに沢山あった金貨が鍵になるわけだ」
「なるほど。流石冒険者は発想が違いますね!」
「はははまぁな」
褒められて悪い気はしないな。さてこれで三つの泉全てを金貨で満たしたぜ!
これできっと何か部屋に変化が……。
「何も起きませんね……」
「あ、あぁそうだな……」
予想に反して部屋には何の変化も現れなかった。くそ! なんでだ!
「お兄ちゃん~院長先生~お客さんだよ~」
「美人でかっこいい騎士のお姉さんだよ~」
「び、美人――」
何か子どもたちの声が聞こえてきて振り返ると、そこには照れた様子の麗しの君――
「あ、アンジェ! どうしてここに!」
そう。あのアンジェがやってきたんだ。しかし何故!
「――その、何だエドソンから頼まれてな。孤児院にハザンもいるから何か協力して欲しいとな」
「エドソンが? ということはあいつ釈放されたのか!」
「いや、なんというか説明が難しいのだが……」
「え? エドソンお兄ちゃんに何かあったの~?」
「エドソンくん私達を守ってくれたよ~?」
しまった! 子どもたちには心配かけまいとエドソン達については子どもたちに知らせて無いんだった。
だが今の会話で不安を覚えちまったか! 俺としたことが――
「大丈夫だ。エドソン達は今皆の事を思って特別な仕事にあたってるだけだから安心していいぞ」
「特別な仕事!」
「かっこいい!」
「やっぱりお兄ちゃんたちはヒーローだったんだ!」
アンジェが子どもたちと目線を合わせて上手いことごまかしてくれた。子どもたちも安心してむしろ目も輝いていやがる。
しかし子どもにも優しいアンジェはまさに女神――
「ところでハザンはここで何をしていたのだ?」
「ハッ! あ、あぁそうだった。実はな」
危なく目的を忘れるところだったぜ。とはいえせっかくアンジェが俺のために来てくれたわけだしな。フッ照れるぜ。
「実はな――」
俺はアンジェにエドソンに聞いていたことも含めて説明した。
アンジェは真剣な目で聞いてくれている。
なんていい女なのか。こんな麗しいアンジェを少しでも疑った俺を全力でぶん殴りたいぜ。
「なるほど……水で満たされた泉と満たされていない泉か……」
アンジェが顎に指を添え一緒に考えてくれた。そんな姿も様になっていやがる。
「私も見てみていいでしょうか?」
「勿論です。ただ本当にこれ以上何か隠されているのでしょうか?」
アンジェが院長に許可を貰い泉を調べ始めた。院長はここに秘密が隠されているか疑問なようだ。
確かにただでさえ遺産がここに隠されていたわけだしな。
ただ兄弟はいい加減なことを言う奴じゃない。何かそう思える理由があったのだろう。
「――これは」
暫く泉をチェックしていたアンジェだが何かに気がついたようなハッとした顔を見せた。
「何か見つけたのですか?」
「あぁ――ちょっとまってくれ」
アンジェは他の泉も確認しそして納得したように立ち上がった。
「ここを見てみてくれ」
「うん?」
アンジェが泉の壁面を指さして言った。俺が確認に行くとそこには何か文字と数字が刻まれていた。
「これは?」
「何かはわからないが空になってる泉の全てに似たような物が刻まれていた。何か意味があると思わないか?」
アンジェに聞かれ俺も間違いないと考える。しかしこんな細かい点にも気づくなんて流石だぜ!
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