第百八十九話 ハザン再び孤児院へ
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side ハザン
兄弟達は領主の私兵に捕まっちまった。何も出来なかった俺を恨んだりしたが、どうやら兄弟が捕まったのには何か考えがあってのことのようだ。
そして俺は兄弟に託された。孤児院の未来を! だから今俺は孤児院までやってきたわけだが――
「すっご~いおじさんすっご~い」
「僕もおんぶして~」
「どうしてこんなにお顔が大きいの~?」
そう今俺は絶賛子どもに遊ばれ中だ。ふむ、俺も子どもは嫌いじゃないというが好きだが何かこう思ってたのと違うぞ。
「ありがとうございますハザンさん。子どもたちの遊び相手になってもらって」
「ハハハッ。これぐらいおやすい御用ですよ」
マザー・ダリアにお礼を言われてしまい少々照れる。改めてみるとこの院長も美人だな。出るとこも出て、いやいや何を考えてるんだ俺は!
俺には心に決めた相手が――一度は見損なったとまで言ってしまったが兄弟からの手紙で誤解だとわかったしな。
いや待て、だとしたら俺はもしかしてあの人にとんっでもない失礼な真似をしてしまったのではないか!?
「うぉぉおぉぉ! しまった畜生! 確実に嫌われちまったじゃねぇか!」
「えっとハザンさん?」
クッ、思い出して取り乱しちまった。院長は勿論子どもたちも心配そうにしてるぜ。
「おじちゃん大丈夫?」
「悩みがあるなら相談乗るよ?」
「そうだ! 大人になったら私がおよめさんになってあげる~」
いや寧ろ子どもから励まされた。最近の子どもは逞しいな。俺なんかよりずっとしっかりしてるぜ。
「ふふふ、ふっかーつ! このハザンに悩み事なんて似合わないぜ!」
「わ~!」
「おじちゃんが元気になった~」
こうしてひとしきり子どもたちとあそんだ後、院長がお茶を準備してくれた。
「あれから孤児院の経営も随分と楽になりました。全てエドソンさんやハザンさんのおかげですが――」
茶と茶菓子を食べながら院長の話を聞いているとその顔が曇った。理由はよくわかる。
「兄弟、エドソンの事を知ってるんですね」
「もう町でも噂になってましたから。魔導ギルドが兵に囲まれてエドソンさんもメイさん、それにアレクトさんもつれていかれたって」
やはり院長は気にしていたようだ。子どもたちの前では明るく振る舞っていたが――気遣いの出来る優しい人だ。
「子どもたちはそのことを?」
「年長者の中には……ただ心配を掛けてはいけないのでほとんどの子どもには知らせてないです」
確かに子どもは変わらず明るかったしな。だけどエドソン達の事を知ったらそれどころではないかもしれない。
しかしこの話が出たのは丁度よかったな。
「兄弟の事は心配しなくて大丈夫だ。あいつはこの程度でどうにかなるようなヤワな奴じゃないからな。それに俺も手紙を受け取ってな。ここのことを気にかけて俺は任されたんだ」
「そうだったのですか……ですがその心配はもう不要かもしれません。ドラムスの件も解決して安心して暮らせてますし」
院長がそう教えてくれた。確かにドラムスの借金絡みは無くなった。だが兄弟があぁ言ってるのだから何か懸念が残ってるのだろう。
「院長。実はエドソンが地下について気にしていたんだ。そこでだ再度俺に見させてもらっていいか?」
「それは勿論構いません。では今行かれますか?」
「助かる」
そして俺は院長に案内されて遺産のあった地下に向かった。
「随分と片付いたようだな」
「はい。ただあまりに多すぎてほとんど手つかずで纏めて置いてあります。流石にここだけで使うのは申し訳なくて――」
ふむ。話を聞くに他に困ってる孤児院などがあれば寄付していきたいとも考えているようだ。
「金貨なんかも多かったな確か」
「はい。後から見てみると金貨銀貨銅貨が混じっていましたね。それと何故かそれぞれ一枚ずつだけ収められた箱がありましたが、とりあえずそれは別にして他の硬貨は種類順に分けて袋に入れました」
よく見ると隅に纏めて袋が置かれているな。整理されたおかげか大分見やすい。
さてこの部屋の何があいつは気になるのか……。
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