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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第百八十二話 牢屋に入れられた一行

「ふぇぇん。まさか牢屋に入れられてしまうなんてぇ。うぅ、何も悪いことしてないのにぃ~」


 私達はハリソン家の牢屋に入れられた。地下牢はそれなりに広く私達は三人纏めて牢屋に入ることになった。


 そしてアレクトが一人涙してこの状況を嘆いている。


「落ち着け。泣いたって何も解決しないぞ。見ろメイなんてこの状況でも紅茶を入れる準備に余念がない」

「いやいや魔導具も取られちゃいましたから! メイさんもエアで紅茶を入れる支度して絶対に動揺してますよ!」

「そんなことはありません。いつでもご主人様に最高の紅茶を提供出来るようにイメージトレーニングは欠かせませんのでやってるまでです」

「紅茶を淹れるイメトレ!?」

「ふむ。流石メイだな。紅茶というのは僅かな所作の鈍り一つでも味の変わる繊細な飲み物だからな」


 勿論メイはアンドメイドだけに基本的に全ての行動がパーフェクトだが、にもかかわらずトレーニングを欠かさないところが素晴らしい。


 しかし何もないエアの所作であってもその動きは精錬かつ流麗。素晴らしいな。何もなくても紅茶があるように見えてくる。


「ほえ~何か不思議です。何だか紅茶の匂いを感じる気がします」

「フッ、メイほどになればエアであっても記憶を想起させ匂いさえ感じさせるほどなのだ」

「なるほど……て、だからそれどころじゃないですよ! 誰か~!」


 アレクトが鉄格子に手を掛けて助けを呼んだ。いや、ここはハリソン家の地下牢だぞ。助けを呼んでも基本的にはどうしようもないだろう。


 まぁあくまで基本的にはだが――


「へへっ、随分と情けない声をあげてるもんだな」

「む?」


 誰かが地下牢に降りてきた。見るにハリソン家の兵士か。三人の兵士が牢屋に近づいてきてニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。


「あんたこっから出たいのか? だったら出してやってもいいぜ?」

「え! 本当ですか! ヘルプミーです! すぐに出たいです!」

「やめろアレクトみっともない。だいたいそいつらの顔をよく見てみろ。きっと碌なことを考えていないぞ」


 三人とも男でそろいもそろってにやけた顔で見ている。主にアレクトとメイをな。こういった連中が何を考えているか――魔導具を使用せずとも用意に想像できる。


「うっせぇな。ガキにようはねぇんだよ」

「ガキ――」


 こいつら――手元に魔導具があったら目にものみせてやるところだぞ!


「俺たちが出してもいいと思ってるのはそこのおっぱいのでかい二人だ。へへ、メガネっ娘にメイド最高じゃねぇか」

「俺たちにサービスしてくれるならこっから出すのを考えてやってもいいぜ」

「なんなら美味い食事も提供してやるよ」


 ふぅ、やれやれだな。見事なまでに予想通りだ。


「え? 食事をくれるのですか!」

「アレクト様。相手はその代わり私達の体が目当てだと、そう暗に、いえわりとストレートに言ってるのですよ」

「えぇ! 助けてくれるいい人ではなかったのですか!?」


 相変わらずおめでたいなアレクトは。


「おいおい当然だろう? せめてそれぐらいはサービスしてもらわないと、なぁ?」

「俺たちも最近ご無沙汰だしな。結構こき使われてる俺たちにも癒やしが必要ってわけよ」

「大体あんな女騎士がいる状態で何も出来ないなんて拷問だぜ。その分お楽しみがないとやってられねぇんだよ」


 女騎士――アンジェのことか。この口調だと当然命じられてきたわけじゃなさそうだな。


「馬鹿らしい。そもそもお前らみたいな木っ端の兵士風情に、ここから出す権限などありはしないだろう。体の良い言葉並べて騙そうと思ったのだろうが相手が悪かったな。出涸らしの紅茶で顔を洗って出直すことだ」

「全くです。人を騙すにしてもあまりに滑稽な嘘で呆れますね」

「そういうことならお断りですよ~あっかんべぇ」


 ……アレクトの対応だけがなんとも子供じみているが、ま、そういうことだ。


「テメェらこっちが下手に出てれば調子に乗りやがって!」

「こうなったら無理矢理にでもやってやるよ」

「どうせ頼りの魔導具だって取り上げられてんだ。何も出来やしねぇだろう!」


 本気かこいつら? 愚かにも程があるな。大体魔導具がないにしてもこっちにはメイがいる――


「一体何をしているのですかな?」


 三人の兵士に色々呆れていると再び階段を鳴らし執事のルイスが姿を見せた。


「う、ルイス執事」

「いや、これはその」

「やれやれ。呆れたものですな。仮にも由緒あるハリソン家の兵士ともあろう方が、このようなみっともない真似を」


 ルイスの登場に兵士たちが慌てだす。それにしても相変わらずダンディーだな。


「何だと? チッ、お前らも一々ビビるなよ。こんな奴所詮ただの老いぼれた執事だろうが」


 え? ほ、本気なのか? 執事は家を守る上でかなり重要なポジションだと思うが。確かに騎士たちとは役割は違うだろうが、だからといって一兵士が軽んじていい存在じゃないだろう。


「なるほど。反省の色なしですか。どうやらしっかりと報告をする必要がありそうですな」

「黙れ。だったらその顎砕いて二度と喋られないようにしてやるよ!」

「あ、危ないですぅ!」


 兵士の一人がルイスに殴り掛かる。アレクトが慌てているが、まぁ問題ないか。メイが涼しい顔をしてるし。


「やれやれ――」


 ルイスは迫る兵士の拳を軽くいなし流れるような動きで兵士の腕を取り回転、そのまま地べたに叩きつけた。


「私のような年寄りにあまり手間は掛けさせてほしくないのですがね」

「い、いてぇえええぇ! ひぃいいいい! 折れる折れるぅうううう!」


 腕を取って完全に関節を決めてるな。やろうと思えばいつでも折れそうだ。


「ふぇ~執事さん強いんですねぇ」

「メイは気がついてたみたいだね」

「はい。足運びや体幹を見て只者ではないのがわかりました」

「ハハッ。ブラックウルフの群れをあっさり返り討ちにし悪魔をも倒すほどの実力を秘めた皆様にそう思われるのは光栄ですな」


 執事のルイスが笑って答えた。関節決めながら余裕の表情だな。


「ふざけやがって」

「こっちはあと二人いるんだぞわかってるのか!」


 男どもがルイスを睨みながら威勢よくいいのけた。ルイスには全く焦る様子がないが。


「やれやれ、そこまでにしておいた方がいいと思いますがね」

「何を!」

「いい加減にしないか!」


 凛とした声が響き渡る。そして今度は降りてくる音が二人分。


「全く情けない。見ていて恥ずかしくなるぞ」

「本当に我が家の兵士に貴方がたのような者がいるとは」

「へ? あ、アンジェ様!」

「それにサニス様まで!」


 兵士が声を上げる。それにしても――驚いた。アンジェはともかくまさかあのお嬢様までやってくるとはね――

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