第百六十八話 外回り
孤児院の件は無事解決できた。そして本格的に商業ギルドも我々の後ろ盾になってくれることとなり、不足していた鉄鉱石やその他金属、素材らは商業ギルドに卸しそこから各種商会に買い取ってもらう方式を取る。
商業ギルドのような大きなギルドがこうやって音頭を取ってくれると実に助かる。流石に魔道ギルドが直接商人に鉱石などを卸すのは悪目立ちがすぎるしやはりそれを生業にしているところに任せるべきだろう。馬は馬方って奴だな。
そして――あれからあっという間に月日は過ぎていく。
「いやぁ本当お前さんらが作ってくれた魔導分離機には大助かりだ。あのケツモロコシからも簡単にシリコーンが採取出来る」
「それは良かった」
薬師のロートには以前大変だと言っていたケツモロコシからシリコーン油の抽出に役立つ魔導具を提供した。もっともシリコーンだけではなく他にも色々と使える。基本的には素材の成分を分離させたい時に使える魔導具だ。
中に素材を入れることで回転しながらマイフを循環させ素早く成分が分離できる。
「素材も色々取ってきて貰ってるし本当に感謝してる。ありがとうな」
「喜んでもらえて何より」
「私からもお礼を言わせて。貴方が作ってくれた魔導マッサージ椅子のおかげでひどかった肩こりもすっかり消えたんだからねぇ」
ロートの奥方からもお礼を言われた。肩こりだけじゃなく腰痛も酷くなったと言っていたからな。だから魔導の力でマッサージし全身をほぐす魔導具を作成したってわけだ。これは注文販売も行ったがロートの奥方が方々でいいものが手に入ったと伝えてくれたから注文が殺到した。
おかげでアレクトの魂が抜けそうになってたけどな。
「また何か困ったことがあったら遠慮なく言ってくれ。勿論その分の料金は頂くが」
「はは、そりゃそうだ。大体これだけの魔導具なんだからもっと高くてもいいぐらいだと思うぜ」
ロートが笑いながら答えた。そういえば前に商業ギルドの奥様方もそんなことを言っていたか。
とはいえ高すぎて誰も買えなくなっては本末転倒だしな。まぁこのあたりの調整は難しいところだ。
さて、ロートの店を出た後は宿に顔を出した。建て替えの作業中で筋骨建団が一生懸命作業している。勿論魔導ギルドで作成した建築用騎乗ゴーレムブリギッドに乗ってだ。
「張り切ってるな」
「おう坊主かい! いやこれがあると作業が進む進む。マンクリート用の製造機も用意してもらって助かってるぜ」
女棟梁がブリキッドを操作して楽しそうに感謝してきた。建築魔導具を随分と気に入ってくれてるようだな。最初は懐疑的だったのが嘘のようだ。
「オーナーありがとうございます」
「宿も更に大きくなるし孤児院も助けてもらってオーナーは本当に素晴らしいお方です!」
ウレルとキャロルに随分と持ち上げられてしまって参った。しかも子どもたちまで寄ってきた。
「オーナーありがとう」
「ママも喜んでいたよ~」
「孤児院がねなくならないで済んだの~」
「あはは――」
すっかり子どもたちに囲まれてしまった。まいったね。
「お前ら仕事はまだ残ってんだからな。たく、改築なのに仕事を休めないなんてよ」
「はぁ全くうちらは休みなしで働き尽くしかい」
「嘘は言わないで下さい。定期的に休みは与えてるのですから」
心外なという顔をウレルが見せる。実際週に二日は休みを与えてるらしいしね。
「さぁ皆、私にばかりかまってられないだろう?」
「「「「「「は~い」」」」」」
子どもたちは実に素直だ。揃って仕事に戻っていく。
「それじゃあ私はそろそろいくよ」
「立ち寄って頂きありがとうございます」
「いやいや。まぁ何か必要なことでもあったら気軽に言ってくれ」
「休みもっと寄越せ」
「給金もっと上げてよ今の十倍ぐらい」
「あの二人のことは気にしないでいいですので」
「はは……」
全くそういうところは変わらない。だけどあれでも仕事はそれなりに真面目に取り組んでるようだしな。
さて、続いてはドレスの店に寄らせてもらった。この間納品した魔導ミシンの調子を確認するためだ。
魔導具師はただ魔導具を作って終わりではないからな。後のアフターケアも大事な仕事だ。
「あらあらエドソンくん。見ての通り調子はバッチリ。本当これのおかげで作業が早くなって助かってるわよウフフ」
ドレスが作業場を紹介しながら感想を聞かせてくれた。今の所問題は出てないようだな。アレクトもあれで仕事はしっかりしてる。何より関わってる職人の腕もいい。
「何か問題があったらすぐに言ってくれ。対応するので」
「わかったわ。わざわざありがとうね」
そして私はドレスの店を出た。さてこれで今日の外回りは終わりか。やはり気になるからな定期的に見ておかないと。
さてギルドに戻るか――




