第百六十一話 ドラムスを待ち受けるエドソン
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sideドラムス
「やれやれ。随分と横暴な奴だな」
俺が乗り込むと目の前にあの糞ガキがやってきて、生意気な物言いをしてきた。
全く相変わらずいらつくやつだ。ガキの癖にどこか余裕ぶっているのが腹が立つ。聞くところによるとこの年で魔導具師を名乗ってるらしいが、どうせ子どもが背伸びしておままごと気分でやってるに過ぎないのだろう。
「黙れ。借金を支払えなければここを明け渡し全員責任をとって奴隷になる約束だ。わかったらさっさと準備をするのだな。こちらも奴隷商人を待たせている身だ」
「やれやれ。随分とせっかちなことですね。まだ借金についてこちらの話も聞いていないというのに」
メイド姿の女がしゃしゃり出てきた。しかし、前も思ったがこいつ、エロいな。あのダリアというのもなかなかの上玉だが、こいつはそれ以上だ。
まだ若そうだし、こいつは金になりそうだ。そうだコイツらだって今回の件に関わってるわけだし借金のかたにこいつも奴隷として頂こうそれがいい。
そしてあのダリア共々この俺が直に可愛がってやろう。うむ、それがいい。
「しかし、ドイル。何でお前まで一緒にいるんだ?」
俺に同行していたドイルに指をさし問い出す奴がいた。
……しかし随分とデカい男がいるな。見たところ冒険者のようだが、何で冒険者がこんなガキと一緒に?
確か冒険者ギルドとこの魔導具師が所属しているギルドは敵対している筈だろうに。
「フンッ。今ドラムスが言ったように借金が返せないなら全員奴隷落ちだ。だから来てる。それとうちとは色々付き合いがあってな。借金を踏み倒したりごまかしたりがないよう見届人も頼まれたのだ」
はは。ドイルもよく言う。しかし、どさくさに紛れて俺を呼び捨てにしやがって。確かに今はまだ俺が借金をしているような状態だが、この件が片付けば立場は逆転するのだぞ。
ま、その時はせいぜい顎で使ってやるつもりだがな。そして何れこの俺がお前の商会を乗っ取ってやるよ。
「話はわかったが、話の進め方が強引すぎるな。まだ私達は何も言っていないというのに」
何だこいつ? 正直いざとなったらべそをかき勘弁してくれやどうか支払い期限の延長をと地べたを這いつくばって懇願してくると思ったが、どこか自信の感じられる態度だ。腹だたしい。
「ふん。だったら聞いてやる。それで借金の返済の目処はたったのか?」
「その前にこちらから一ついいかい?」
「は? 何だ貴様。立場がわかっているのか?」
「わかっているさ。だからこその質問だ。ドラムス、それにドイル。お前たちは何でそこまで必死になってこの孤児院を狙ったのかな?」
……何で狙っただと? 何だこいつ? 何でそんな質問を?
――まさか、あの事を? いや、ありえない。息子の俺だって知らなかったことだ!
「全く何を言うかと思えば。何か勘違いしているようだがそもそもこの孤児院はここにおられるドラムスの所有物だ。狙ったのではない。そしてそこの院長やガキに善意で寝床として貸してやったというのにその賃料も支払わん。だからこそこうして取り立てに来ている。そうだろうドラムス?」
ドイルが俺に目配せしながら聞いてくる。主導権を握られているようで腹が立つが俺は話を合わせた。
「あ、あぁそのとおりだ。だから借金を耳を揃えて支払えと言っている」
「ふむ。そうか。しかし本当にこの孤児院はドラムス、あんたの所有物なのかな?」
何だと?
「……言うに事欠いて何を馬鹿な! そんなものは決まってるだろう! この私ドラムスが死んだ父から受け継いた財産の一つそれがこの孤児院だ!」
「なるほど。つまり逆に言えばこの孤児院がお前の物でなければそもそもこの借金すら成立しないということでいいな?」
このガキ、何なんだ一体? 俺の物でなければとだと?
「ふん。話にならんな。そんなたらればの話をしてどうなる? そもそもこの孤児院はドラムスの父であるコエンザムが所有していたもの! コエンザムが亡くなった以上、それを息子のドラムスが引き継ぐのは当然!」
「それがそうとも言い切れないのですよドイル殿」
「おお。来てくれたかフレーム」
「は?」
声がしてエドソンというガキにも笑顔が見えた。振り返るとそこにはレンズを直す細身の男の姿。
こいつ、確か商業ギルドの! だが、何でそんな奴がこんなところにいる?
「フレンズ、貴様まで。一体どういうつもりだ!」
ドイルが叫ぶ。フレンズ、フレンズ商会とかいう偽善者が経営している店の経営者か!
「貴方と同じですよ。私もこの件の見届人としてしっかり立ち会わせて頂きますよ」
「はは、これでどうやら役者は揃ったようだな。さてドラムス、いよいよお前の化けの皮を剥がす時が来たな」
な、化けの皮だと? い、一体何だと言うんだこのガキが!
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