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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第百五十五話 エドソンがデモに思うこと

「話は判ったし皆の気持ちも理解出来るつもりだ。だけど少し決行は待ってもらってもいいかな?」


 恐らく何も言わなければすぐにでも抗議デモに乗り出すだろう。勿論このまま手をこまねいていても状況が好転するわけではないが、この件あまりに不可解な点が多すぎる。


「まさか……エドソンさんから待ったが掛かるとは思ってませんでした」


 そしてフレンズが私に向けてそう告げた。失望したとか心底がっかりした、といった様子は感じられない。それでも構わないつもりで口を出したがフレンズはどこか真意を知りたそうでもある。


「兄弟。正直俺はいい手だと思ったぞ。冒険者ギルドについても俺だって言いたいことは山ほどある。これがいい機会じゃないか」


 ハザンは賛成か。何なら決まったら一緒にデモ行進しそうな程だな。


「坊主、俺もそこの男と一緒の気持ちだぜ。一体何が問題なんだ」

「ふむ。そうだな。それなら私の考えだが、その前に先ず一点。フレームに聞きたいことがある」

「私にですか?」


 眼鏡を直しながら私の問いかけに耳を傾けるフレーム。そんな彼に質問をぶつけた。


「今回の件、商業ギルドとしてはどう動いていくつもりなのだ? 正直支部だけで片付く問題ではないだろう?」


 商業ギルドといっても大陸中に存在する組織だ。規模で言えば冒険者ギルドと対を成す存在だろう。


 勿論ある程度の権限は支部にも与えられているだろうが、この件には領主も関係している。まして今の領主は商業ギルドを脇において冒険者ギルドやドイル商会を優先させている状態だ。


 当然それを見過ごせるほど商業ギルドは甘くはないと思うが……


「勿論! この件は問題として既に本部に報告書を送っていますよ。何せうちのマスターもご立腹で徹底的にやると直接本部に向かった程ですからね」

「何とマスターが直接とは」


 フレンズが意外そうな顔を見せた。しかし、それだけ大事と捉えているわけか。


「しかし、それだとマスター不在で今は誰が指揮を?」

「僭越ながら私が代理として現在はギルドを回しています」


 ガードの疑問に答えるフレーム。謙遜しながらもちょっと嬉しそうだな。


「なるほど。デモの件に随分と前向きと思えば、あんたが権限もっていたからか」


 ロートが納得する。確かにフレームも直接関わってる話だ。鉱山の件も知っている。ならフレームの意志で決まるなら話も早かったのだろう。


「だからもしうちの心配をしているなら気にしなくてもいいですよ」


 眼鏡を直しながらフレームが答える。勿論それも全く気にしていなかったわけじゃないが、私は他にも懸念がある。


「いや。むしろ今ので確信した。やはりこれはおかしい」

「……ご主人様。今のお話で何を気にされているのでしょうか?」


 私がフレームに返答する。メイもどこか不可解と言った様子か。正直これは私が慎重すぎる可能性もある。


「兄弟には何か思うところがあるのか?」


 ハザンが小首を傾げながら聞いてくる。


「フレーム。今の話。商業ギルドの本部に向かったと言うがそれで何が起きる?」

「勿論。先ず間違いなく領主に対して抗議文が。場合によっては商業ギルドの撤退もありえますし国家そのものが領主に対して調査を求めることもありえます」

「そう。つまり場合によっては国が介入するほどの事件に発展する可能性がある。またそうでなくても確実に商業ギルドそのものを敵に回す。はっきりいってこんな真似、普通に考えて一領主がまともな思考を持ってやることじゃない」

「なるほど。だけどよ兄弟。今の領主は冒険者ギルドとねんごろだろう? だからこそ商業ギルドを軽視してるんじゃないのか?」


 冒険者のハザンでさえそう思えるほどか。まぁここまでわかりやすい案件もそうはないが。ただその考えには賛同しかねた。


「それこそありえない。むしろ冒険者ギルドと上手くやりたいなら商業ギルドをないがしろになんて出来ないだろう。冒険者ギルドと商業ギルドは表裏一体。互いにライバルとは思っていても同時に互いが必要であることを理解しているはず」

「それは勿論そうでしょう。そもそも冒険者ギルドだけでは手に入れた素材などを捌くことは不可能。彼らの解体技術や処理能力そして当然腕っぷしの強さは認めてますがそれらを商品として扱えるのは我ら商業ギルドがあってこそです」


 そう。今は領主が肩入れしており冒険者ギルドの権限が大きくなってるがそんなものいつまでも続くものじゃない。


 領内だけで全て済むならいいが、ただでさえこの領地は鉱石を他の領地に頼ったりしている。しかし領地をまたがる取り引きは商業ギルドの力が働いているからこそ。


 しかし万が一商業ギルドが手を引くなんてことになれば信頼は地に落ちる。そうなったらもうまともにこの領地と取引してくれるところなどなくなるだろう。


「しかしだとしたらやはりデモをやったほうが……」

 

 ガードが呟くように口にする。今のやり方が間違っているとデモを通じて伝えるのは確かに手段としては間違ってない。だがそれも相手がまともに取り合ってくれる場合だ。


「重要なのはそれだけのリスクがありながらも今の領主タムズ・ハリソンが全く気にする素振りも見せず強硬姿勢に出ていることだ。ここからは完全に私の憶測だが――もしかしたら今の領主はこの地がどうなってもいいと考えているのかも知れない」

「な、なんですって!」


 フレームが驚愕と言った様相を示した。他の皆も似たようなものだろう。しかしずっと気になっていたことでもある。


 何よりこの町も含めて起きている問題が、その可能性を示している――

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