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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第百四十三話 とりあえずの時間稼ぎ?

 とにかく、借用書は確かに本物だ。この中身の文言も特に弄った様子はないがマザー・ダリアのサインは確かにあるのだ。


 だがダリアはこの借用書の内容には身に覚えがないという話だったな。内容があまりに馬鹿げているから理解していてサインしたとも思えないし、そこに至る理由が何かあることだろう。


 ……どちらにせよ、ここは一旦は――


「それで。利息は幾らなのだ?」

「はは。そうだな、私も鬼ではない。利息とは言ったが、ここで金貨の500枚でも用意できるなら三日ぐらいは待ってやってもいいぞ。それでも本来の利息からは全く――」

「これでいいか?」

「……は?」


 メイに目配せするとすぐに理解したのか、ドラムスの前に金貨500枚を積み上げた。ドラムスや周りを固めている男たちの目が点になった。


「これで問題ないな?」

「くっ、貴様本気なのか? 本気でこんな孤児院の為にこれだけの金貨を出すと?」

「あ、あの! 流石にこれは頂けません!」


 ドラムスが呻き、そして怪訝そうに聞いてきた。それはまぁいいとして、ダリアまでもが断りを入れてきた。それは不味い。


「ダリア、これは貸しだ。別にただであげるつもりもない。それでもこんな法外な利息で借り続けるよりはマシだろ?」

「え? いえ、ですが……」

「いいじゃんいいじゃん。せっかくこう言っているんだから行為は受け止めなって。大体スロウだってずっとこの孤児院のこと気にしてたし、それにその分私達がしっかり働けばいいし第一」

「クイック。わかったからちょっと落ち着け」


 クイックが急に話に加わってきたと思えば怒涛の勢いで喋りだしたぞ。しかも喋りが早い。


「大変で~すぅ。借金取りが来てしまいました~」

「今更だな! もう話は大分進んでるぞ!」


 一方でスロウはマイペース過ぎた。お前ら二人合体して分裂しろ!


「とにかく、これは気にしなくていい」

「ふん。まぁいい。なら貰っておこう」


 ドラムスが手をのばすそ、私はそれを手で制し一旦防いだ。


「何だ? やっぱり惜しくなったのか?」

「違う。ただし支払うのに条件がある」

「条件だと? 貴様! 立場がわかっているのか!」


 ドラムスが睨みを効かせてくるが、私も何も考えずこれだけの金を支払うつもりはない。


「わかっているからこそだ。条件とは、もしこの借金が本来支払う必要のないものだった場合、その金貨は返してもらうぞということだ。勿論ただ返してもらうのではなく貴様が示した利息分を上乗せしてな。それぐらいの責任はあるはずだ」

「は?」


 ドラムスが目をパチクリさせた。


「どうした? この借用書に間違いがなく、お前たちの言っていることにも一切の不正がなければ問題のない話だろう? それとも――」


 一拍おき、ドラムスの目をじっと見つめながら私は問いかける。


「何かこの借用書にやましいことでもあるのかな?」


 ギリッ、とドラムスが強く歯を噛みしめる。面倒な話を持ち出しやがって、とでも思ってそうだな。


「……ふん。まぁいい。それでここで私がそれを認めればいいのか?」

「この指輪に誓え。それでいい」


 私は収納リングから指輪を取りだし指に嵌めてから拳を突き出して言った。蒼く光る輝石の嵌った指輪だ。


「……何だこれは?」

「約束の神の加護があると言われている指輪だ。どうした? こういった物に誓うのが怖いか?」

「馬鹿を言うな! そんなもの! 幾らでも約束してやるよ。借金が間違っていたらこの金貨分に利息でも何でも上乗せして返してやるよ。そんな馬鹿な話があるわけないからな」


 男が約束したと同時に指輪が光る。これでオッケーと。


「わかった。それなら金貨は持っていくといいさ。一旦はな」

「……チッ。ただし覚えておけ。これでも本当は利息にも足りてないんだ。そこを待ってやったんだから三日後には全額耳を揃えて支払ってもらうからな! それが無理ならここから出ていくのは勿論、子どもは奴隷落ちだ!」


 そして捨て台詞を残してドラムスと取り巻き連中は去っていった。


 全く強欲なやつだ。


「あの、本当にありがとうございました」

「お礼はいい。それに三日時間を稼いだだけだ」

「確かにそう考えてみたら三日で一体何が変わるのって感じだよね。それなら金貨500枚で場所を移動したほうが良かったんじゃない? それだけの金があればどこにでもいけるだろうし――」

「そう簡単な話ではありません。ここを出ても借金がなくなるわけでもなく、支払えなければこの子達は……それにこの場所もコエンザム様のご厚意で住まわせて頂き、それにここをずっと守って欲しいとも言われました……」

「あのドラムスの父親ですね」

「はい。そのご子息でしたから信用していたのですが……」

 

 メイが聞きダリアが答え眉を落とした。あのドラ息子っぽい男はともかく、その父親はしっかりとした考えを持っていたようだな。


「ところで、改めて話を聞いても? ドラムスと借用書を取り交わすときに、何か変わったことは?」

「いえ……私も確認しましたが、その時はまだなんとか出来る程度の利息でしかなかったのです。それなのに……」


 内容がいつの間にか変わっていたということか。


「ダリア様。今一度あの男とのやり取りを思い出せませんか?」

「そうですね……」


 ダリアが考える。しかし、それなりに時間が経っているから忘れていることもあるかも知れない。


「マザー・ダリア。あの男とのやり取りはこちらで?」

「はい。この中で行いました」

「そうですか。それなら――これの出番かな」


 私はこの場で何があったかを知るために魔導具を取りだした。これで、恐らくはっきりすることだろう――

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