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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第百三十九話 魔導具を恐れるドイル

「とにかくだ! スロウが納得していれば貴様らにとやかく言われる筋合いはない!」

「やれやれ、仕方のない奴だな」

 

 いい加減うんざりだな。私はリングからある魔導具を取り出し、それを床においた。


「は? そ、そそ、それはぁあああぁああ!」


 途端に声を大にして慄き、ドイルが凄まじい勢いで後退りしたぞ。


「しっかり覚えていたようだな。この裁きくん(ジャッジメント)を」

「ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬぅううぅううう!」

 

 ドイルが歯牙を噛み締め拳をプルプルと震えさせた。まぁ、以前あれだけの目にあわせたからな。


 この裁きくんは、作動すると相手の言動をチェックし、裁いてくれる。嘘偽りは一切通じないから、ドイルが何を言おうと正確に判断してくれるわけだ。


『ジャッジ開始いたします』

「さて、魔導具が起動したぞ。これから貴様の言動はしっかり裁くことだろう。そこで質問だ。お前は孤児院をだしにしてスロウにやましい事をしようとしたな?」


 私が問いかけると、ドイルはむぎぎと唸り、顔を伏せた。


「何だ? 黙秘か? 構わないが黙秘するということはやましいことがあると認めているようなものだぞ?」

「あぁああああ! ふざけやがってふざけやがってふざけやがって! 覚えていろ! 絶対に後悔させてやるからな!」


 そこまで言ってまた黙った。ふむ、裁きくんは相手の言動をチェックするが、黙秘となると直接対応はできない。一度見られているとどうしてもこうなってしまうか。


 もっとも計算の内だ。相手が何も言わない以上、こっちも大人しくスロウを引き取るだけだ。


「スロウ行くぞ」

「え? でもぉ……」

「スロウ様。ドイルが何も言わないということは、そういうことです。彼に孤児院を何とか出来るなど考えないことです」

「そういうことだ。何なら裏で孤児院に手を回している可能性もあるからな」

「……私は何も言わんぞ! いいからさっさとそれを持ち帰れ! 見るだけで吐き気がする!」


 やれやれ仕方のないことだ。私は魔導具を回収しスロウを連れて屋敷を出た。


「しかし本当に短絡的な奴だなお前は」

「うぅ~だってぇ~孤児院が~……」


 スロウが泣きそうになりながら答えた。話には聞いていたが孤児院はわけのわからない借金を押し付けられて大変な状況らしい。


 そこでギルドからドイルの下を尋ねるよう言われ、その上で今晩好きにさせたら借金を着せた張本人であるドラムスに口利きしてやろうみたいなことを言ったようだ。


 もっとも奴はなんとかなる可能性があると濁したようだがな。汚い考えの奴がいいそうなことだ。


「お前は本当に馬鹿だな」

「え~……だってぇ……孤児院をなんとかしてくれるって」

「んなはずあるか! あいつはお前を弄びたくてそんな嘘を言ったんだろう。少し聞いただけでもそれぐらいわかる。そもそもで言えば、孤児院の件にあいつが関わってる可能性すらあるぞ。冒険者ギルドも含めて、この件は疑わしいことばかりだ」

「えぇ~? ですがぁ~ギルドはみんな~優しいかたばかり~ですよ~?」


 私は頭を抱えたくなった。多分このスロウは人の悪意に鈍感なのだろう。元からのんびりした喋り方もあるが、とにかくそういうのに鈍い。


 思えば出会った時も男に騙されそうになっていたからな……非常に不安な女だ。


「う~でもぉ、なら孤児院は~一体どうすればぁ~……」


 涙目になったスロウをメイが慰めて上げていた。孤児院が危ないということはしっかり認識しているようだな。


 そして孤児院をなんとかしたいという気持ちもあるか……こいつは悪意に鈍感だが困ってる人を放っておけない優しさを持ち合わせている。


 よくいえば自分より他者を優先できる優しい気持ちの持ち主。悪く言えばひたすら要領が悪い駄目なタイプだ。


「ふぅ、とにかく孤児院のことは乗りかかった船だ。私も一応は手立てを考えてやろう」

「えぇ、本当ですかぁ~でもぉ、子どもに頼るのは~申し訳ない気も~」

「誰が子どもだ!」

「子どもですよね~?」

「頭を撫でるな!」


 くそ、アレクトといい揃いも揃って子ども子どもと。


「御主人様は見た目は子どもですが中身は大人なのですよ」

「背伸びしたい年頃なんですねぇ~私にも~そういうころがありました~」


 メイの説明でも全く通じてなかった。寧ろ大人の真似事をしている子どもみたいに思われたぞ。


「えい、もういい! とにかく先ずは私のギルドに戻るぞ!」


 そしてギルドに戻ると、子どもたちが声を上げてスロウの元に集まってきたんだが。


「もうお姉ちゃん駄目だよ! うまい話があるからってホイホイついていっちゃ!」

「お外には怖い人が一杯いるんだよ!」

「院長先生も言ってたよね? お菓子をあげるからと言われても知らない人にホイホイついて行っちゃ駄目って」

「うぅ、ごめんねぇ~」

「なにか、子どもに凄く子ども扱いされてませんか!」


 待っていた子どもたちに叱られるスロウを見て、アレクトが声を張り上げた。全くどっちが子どもなのか。なんなら子どもたちのほうがしっかりしているぐらいだ。


 だがこういっちゃなんだが、アレクト、お前もどっこいどっこいだったんだぞ。いや現在進行系でそうとも言えるが。


「ふぅ、でもとにかく無事で良かったですねぇ」

「そうだな。だが、問題は山積みだ……全く厄介ごとばかり舞い込んでくるものだな……」


 とにかく、今日は一旦帰ってもらうにしても、孤児院に一度出向き院長に話を聞きに行くべきか――

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