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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第百三十六話 欲深いドイルとスロウの葛藤

「えっと、こっちで合ってるのかなぁ~?」


 スロウは地図を頼りにムーラン・ドイルの屋敷を目指していた。だが、方向音痴の彼女は結局地図を見ても場所を見つけることが叶わず、あっちへウロウロ、こっちへウロウロしている間にすっかり日も落ち、人の気配も薄れていった。


「う、うぅ、どうしようぉ。え~とぉこっちがこっちで~あっちがあっちで――」

  

 そんなことを呟きながら移動しているうちに、ようやく彼女はドイルの屋敷にたどり着くことが出来た。


「ここでいいんだよね?」


 一人呟きながらドアのノッカーを使う。すると間もなくして屋敷の扉が開きぬっと脂ぎった顔が飛び出てきた。


 真ん中の髪の毛だけが妙に寂しい男だった。


「お前は――」

「は、はいぃいい。ギルドの受付嬢をしているスロウですぅ」

「むぅ、貴様か! 遅いぞ! 一体何をやっていたんだ!」

「はう、ご、ごめんなさぃ~」


 スロウがペコペコロ謝るとその動きに合わせて大きな胸もゆさゆさと揺れた。ドイルの顔つきが変わり、ごちそうでも目の当たりにしたように唇を舐めた。


「まぁいい。許してやろう。私は寛大なのだ。さぁ入れ」


 そしてドイルに促されスロウが屋敷に入っていった。


 二階へとスロウを連れて行く。


「入れ」

「し、失礼しますぅ」


 ドイルに言われるがままスロウが部屋に足を踏み入れる。広い部屋だった。そして部屋には随分と大きなベッドが設置されていた。


「あ、あのぅ、何か用事聞いてきたのですがぁ~」

「ん? あぁそうだな。たっぷりと相手してやろう。私はお前が気に入ったからな」

「そ、それはありがとうございますぅ~」


 スロウは何だかわらかなかったがとりあえずお礼を言った。そんなスロウを爬虫類のような目つきでドイルが見つめてくる。


「くくく、なるほど。わざわざこんな時間に来たのはもうそのつもりだったからだな?」

「その、つもりですかぁ~?」


 ドイルはスロウの態度を見て、そういうことだと理解したつもりになった。一方スロウはわけがわからない様子だ。


「さて、なら早速脱げ」

「……はい?」

「だから脱げと言ってるんだ。一応建前もあるからな。お前が脱いで自らの意思でお願いするんだ」

「え? えぇ~~! な、何でですかぁ~どうして脱ぐんですかぁ~?」


 随分とゆったりとした緊張感のない口調ではあるが、それでも表情だけは焦っていた。ドイルの認識とスロウの認識は大いに異なる。


「何を今更。貴様だってそのつもりできたんだろう?」

「い、意味が~わかりません~」

「何が意味がわからないだ! そんな男を駄目にする乳をぶら下げておきながら!」


 ドイルが近づきスロウの腕を乱暴に掴んだ。 

 キャッ、という悲鳴が漏れる。


「ふん、いい声で鳴くじゃないか。だが、そういう振りはもう良いんだよ。お前だって馬鹿じゃないんだ。ベッドのあるこの部屋で何をすべきかわかってるんだろう?」

「わ、わかりませぇ~ん。こんなの聞いてないですぅ、嫌ですぅ」


 チッ、とドイルが舌打ちする。スロウはガタガタと震えていた。


「聞き分けのない女だ。だが、本当にそれでいいのか? 孤児院が大変なんだろう?」

「……え?」


 怯えた目をドイルに向けるスロウ。そしてドイルは三日月のように変化した嫌らしい瞳を彼女に向けて言った。


「知っているのだぞ? お前の育った孤児院が今借金で大変だということを。だが、この私の力があれば助けることも出来る。私が口添えして、孤児院を奪わないようにコエンザムの息子に頼んでやってもいい。あのドラムスには私も随分と世話をした。私が言えばあの息子は孤児院を諦める可能性(・・・)もある。どうだ? 悪い話ではないだろう?」

「そ、それはぁ――」

 

 カタカタと震えながらもスロウが悩む。借金にあえぐ孤児院を救いたい。その気持ちは本物だ。そして今、そう今一度だけこの男の言うことを聞けば孤児院もシスターも子どもたちも助かるかもしれないのだ。


「どうやら理解したようだな。なら自分から服を脱ぐんだ。そして私にお願いしてみろ。どうぞ私を好きにしてくださいとな」

「う、うぅ――」


 スロウが悩む。そしてその手が服のボタンに掛けられた。手はプルプルと震えていた。ドイルは下卑た瞳で今か今かとスロウの決意を待った。


――コンコンコンコン。

 

 だがその時だった。玄関のノッカーが鳴らされた。何だ? とドイルが眉をしかめる。


「あ、あのう、どなたかがぁ」

「ふん。知ったことか。こんな時間にやってくるような無粋な奴は無視しろ。それよりお前だ! さっさと!」


――ドーン! ドーン! ドーン!


 だがしかし、ノッカーの音が突如信じられない程に大きくなった。まるで大砲でも打ったかのような轟音がドイルの耳に響き渡る。


「な、何だこの音は!」


――ドーン! ドーン! ドーン! ドーン!


 その音は全く鳴り止む気配はなく、しかも屋敷も大きく揺れ始めた。


「く、くそ! うるさいうるさいうるさい! 何者だこの馬鹿が!」


 たまらずドイルが部屋を出て、玄関口に向けて怒鳴り散らした。すると屋敷の扉が開き、一人の少年とメイドが姿を見せる。


「な! き、貴様あの魔道具師の餓鬼! それにエロいメイド!」

「御主人様。大変です化物がいます。駆除しますか?」

「そうだねメイ。それもいいかもだけど、さて、おいドイル、この屋敷にスロウがやってきてると思うが、どこにいる?」

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