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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第百三十三話 イフリートが生まれた理由

 イフリートは無事倒した。もっとも倒したと言っても別の次元に送り返しただけともいえるが。


 とにかくこれで火の魔石鉱山については正常状態に戻るだろう。


 この鉱山の影響を受けていた他の鉱山も元の環境に戻るだろうし川が枯れることもない。


 それでも既に枯れた川が戻るには本来なら時間がかかるだろうし、そう考えれば私の貸した魔導具も無駄ではないことだろう。


「兄弟。これでこの鉱山の問題も解決だな」

「うむ、そうだな」

「やりましたね! 私達でイフリートを倒せたなんて、本当嘘みたいです!」


 ハザンもアレクトも満足そうな顔をしているな。二人はイフリートを相手するのも初めてだったからだろうか。とは言え、このイフリートもまだ完全ではなかった。


 だからこそこの程度のことで倒せたのだろう。もっとも完全体になっていたならなっていたで私やメイならばいくらでも対処出来たが。


「それにしても――」

 

 ブタンが神妙な顔をしていた。つぶらなひとみだからちょっとわかりにくいが何かを考えていそうな表情だ。


「何か気になるのかブタン?」

「はい。この場所、どうにも不自然な気がします。マグマが溜まるような地形ではありませんし、かといってイフリートが生み出したようにも思えません。何らかの意図があって、ここにマグマが溜まるよう仕向けられているような……」

「そこに気づくのが流石だな」

「……これは私としたことがいらぬお世話でしたね。旦那様がこの程度のこと気づかないわけがないですから」


 瞼を閉じブタンが答えた。確かにブタンの指摘は私も考えていた。とは言え、第三者から指摘されるのは悪いことじゃない。むしろ自分だけの考えであれば間違うこともあるだろう。


 だからこそ他者の意見にもしっかり耳を傾けなければいけない。


「ブタンさんの言うとおりなら、誰かがこれを仕組んだってこと?」

「その可能性は否定できませんね」


 メイが答えたが……いやロールスよ。何故私はくんでブタンはさんなのだ!


「旦那様がまた小さいことを気にされている気がします」

「誰が小さいだ!」

「今のは身長的な意味ではないかと……」

 

 くっ、とにかくだ。イフリートは倒したが――


「このマグマは何とかしないとな。このまま放置しておくのも危険だ。とりあえず強制的に冷やして――」

「それは困る。わざわざイフリートを生み出すために作ったのだからな」


 私がマグマを見ながら考えを口にすると、背後から我々とは違う誰かの声が聞こえてきた。


 振り返るとそこにはタキシード姿の1人の男が立っていた。面長の男で髪色は赤。頭には小さな角が生えていた。


「何だお前は?」

「くくっ、しかし驚いた。まさかまだ完全体ではないとは言え、あのイフリートを倒すような人間がいたとはな」


 ハザンが誰何するが、それは無視して自分本位に話しだした。全く礼儀のなってない奴だ。


「お前は耳が聴こえないのか? ハザンが今、誰だと聞いたはずだが?」

「あっはっは、それを今言う必要があるのか? そもそも豚に名乗る名など私は持ち合わせていない」

「な、何だとテメェ!」

「待て! 迂闊に動くな!」

 

 ハザンは頭に血がのぼるのが早い。今すぐにでも飛び出して殴り掛かりそうだから止めさせてもらう。


「その口ぶりから察するにここでイフリートを呼び出したのは貴様のようだな。一体何が目的だ?」

「…………プッ、はは、全く何を偉そうに。ちんちくりんなガキがリーダー気取りとは笑わせてくれる」


 私が問うと小馬鹿にしたような返しが、ち、ちんちくりん? こ、こいつ!


「誰がちんちくりんだ貴様!」

「旦那様落ち着いてください」

「え~い放せ!」


 くそ、腹が立つ! ブタンが押さえて無ければすぐにでもマイフルでぶっ飛ばすところだぞ!


「威勢のいい連中だ。だが気に入ったぞ。完全ではないとは言えイフリートを倒したのだから実力はそれなりにあるのだろう。きっと連れて帰れば役に立つ」

「は? 連れて帰る? お前が俺達を? おいおい馬鹿にしているのはどっちだってんだ」


 ハザンが呆れたように肩を竦め言い返すが、向こうは気にもとめていない。


「彼我の実力差も理解できないとは愚かな連中だ。未完成のイフリートを倒したぐらいで調子に乗るとは、そこが人間の愚かなところだ」

「はぁ? 何言ってやがる。テメェだって人間だろう?」

「いやハザン、それは半分不正解だ」

「へ? 半分? どういうことだ兄弟?」


 ハザンはどうやら気がついていないようだな。


「あいつは悪魔だ。頭をよく見ろ小さな角が生えている」

「ヒッ! 悪魔!?」

「悪魔だって!?」


 アレクトとハザンが驚き、まじまじと悪魔を見る。


「いや、確かに角は生えてるが、驚いた。俺は悪魔って言えば、前に戦った連中みたいにもっと化け物じみてるかと思ったぜ」

「ほう。ただ小生意気なだけのチビかと思えば、多少は物を知っているようだな。この私が悪魔だとわかるとは」


 悪魔がふんぞり返る。こいつまた私をチビと!


「だけど、これなら大したことなさそうだな」

「それは逆だ。少なくともこの間戦った悪魔とは比べ物にならない程に強い」

「マジかよ!」

「うぅ、私は話についていけません」


 ハザンが驚きアレクトが泣き言を口にした。


「ハザンが言ったように悪魔化すると多くは理性を失い化物のように変貌を遂げる。だが、ごく一部はある程度理性を残したまま悪魔化する。そういう悪魔は理性を失ったタイプよりは遥かに強い」

「はっはっはチビの割に物を知っているな。それだけは評価してやろう。だが、やはり貴様はいらんな。どうみても戦力にならん。お前だけはこの場で始末し、そうだな、適当な魔物の餌にしてやろう」


 こ、この悪魔さっきから勝手なことばかり。


「どうやら油断できないタイプなようだね。でも皆でやればなんとかなるよね」

「いえ、これは少々危険かもしれません」

「な、何! ブタン何か知ってるのか!」


 ブタンが注意を呼びかけハザンが驚く。いや、だが、確かに無鉄砲に前に出るのは褒められないが――


「ハッハッハ。そこの豚も少しはわかっているようだな。そうだ無駄な抵抗はやめてそのチビだけ見捨てて――」

「御主人様。ここは私にお任せください」


 悪魔が高笑いを決めて、また私を小馬鹿にしてきた。するとメイが前に出てそんな事を言う。


 えっと、メイ、さん? あれ、なんだろう。何か凄い重圧を感じるような……


「うん? 何だメイドか。まさかお前がこの私と戦おうっていうのか? これは面白い。お前は私も目をつけていた。主に我々の愛玩玩具としてな。それがわざわざ前に出てくるとは」

「その臭い口を閉じて頂けますか?」

「――何?」

「悪魔風情が一丁前にしゃべるなと申し上げているのです。口を開くと不快な匂いが漂ってきてたまりません。ただでさえそこにいるだけで汚物に汚物を掛け合わせたような酷い臭気を放っているのですから。本当に悪魔というものはどうしようもない迷惑な代物ですね」

「き、貴様、この私を愚弄するか! いいだろう! 貴様の手足をもぎ、その服を切り裂き、仲間の目の前で今貴様が言ったことを後悔するぐらい――は?」

「私は黙れと言ったのです」

「は、速い!」


 ハザンが驚く。一瞬にして距離を詰め、またたく間にメイが悪魔の目の前で拳を握っていた。


「聖光滅魔拳――ハァアアアァアアアァア!」

「な、何だとぉおおお! ば、馬鹿なぁああぁああぁああ!」


 メイの拳が光り輝き、突き出した拳で悪魔の土手っ腹に風穴が空いた。悲鳴を上げ、悪魔の身が光に包まれ、そして灰燼となって消え去ってしまった。


「お、おいおい瞬殺かよ――」

「ふぅ、だから危険だと言ったのです。メイの前で旦那様を馬鹿にするような発言をするなど、竜の逆鱗に触れるようなものです」


 あぁ、なるほど。ブタンが言った危険っていうのはそういう意味だったのね――

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