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300年引きこもり、作り続けてしまった骨董品《魔導具》が、軒並みチート級の魔導具だった件  作者: 空地 大乃
第一章 フォード領編

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第百十六話 だから魔獣じゃないってば

 さて橋は壊れていたが私達は魔導車で川を飛び越え、いよいよプジョー男爵領に入った。


 川を飛び越えてからは、当然魔物も出てくるが気のせいか川の向こう側よりは数は少ない気がした。


 だがその理由はすぐにわかることとなり。


「ひ、ひゃぁあああああ! 鉄の魔獣だーーーー!」

「な、なんだこの魔獣は! こんなの初めて見るぞ!」

「お、おい大変だ、魔獣に人が、人が喰われてるぞ!」

「プッ、ククッ……」

「御主人様、笑いすぎですよ」


 遭遇した人間がこちらをみて騒ぎ出したのだ。その様子に思わずこみ上げるものがあったわけだが、メイに注意されてしまった。だけどそんなメイも口元がピクピクしてるぞ。


「どうやら冒険者のようですけど、説明しないと勘違いして攻撃してくるかも知れません」


 後ろの席からフレンズが教えてくれた。確かに防具を着て武器を持っていたり杖とローブ姿だったりとこの辺りで活動する冒険者っぽいな。


 恐らく魔物の数が少ないのもしっかり冒険者の手で間引きされているからなんだろう。


 逆に話を聞いている分にはフォード領ではあの辺りの魔物の駆除には及び腰のようだしな。


「とにかく早く中の人を救うぞ!」

「はい! 我は願う、火炎の――」

「待った待った、私達は無事だ。こいつもお前たちの思っているようなものじゃない」

「……攻撃をおやめください。危害を加えることはありませんので」


 私達は魔導車から出て、早とちりしている冒険者たちに声をかけた。杖持ちの女が詠唱を中断させ弓を構えていた獣人の男も弓を下ろした。


 身軽そうなナイフ持ちの女、あとはいかにも前衛といったタイプの盾持ちの戦士もどこかキョトンっとした顔を見せている。


「お、驚いた魔獣に喰われてたと思ったら、口から出てきたぞ」

「いや、口ではないぞ。ドアだ」

「もしかして魔獣使いって奴か?」

「いや、だから魔獣じゃなくて魔導車という魔導具で……」

「魔導車……そんな魔獣初めて聞くわ!」

「あぁ、しかも体が鉄みたいだぜ? いい素材が取れそうだよなぁ」


 駄目だこりゃ。ここでも全く話が通じない。


「皆様ご安心を。この方はとても凄い技術を持った魔導具師のエドソンさんです。魔獣も奇跡の魔導具によってここまで完璧に使役してるのですよ」

「え! そういう扱いだったの!」


 フレンズがそんなことをいい出したので私も驚いてしまったぞ。


「はは、勿論。私も流石にエドソンさんと付き合う内にわかってきましたよ。確かにエドソンさんほどの方が作る魔導具であればこれほどの魔獣を手懐けることも可能でしょうからね」


 いやフレンズよ。それは全くわかっていないぞ。考えのベクトルが全く違うし。


「魔導具でこれほどの魔獣を……」

「そんな魔導具聞いたことがないわ」

「あんた担がれてるんじゃないのかい?」

「いやしかし、たしかに随分と大人しい。全く暴れないしな」


 近づいてきた冒険者4人がまじまじと魔導車を眺め始めた。魔法使いの女など車体を撫でて可愛いとか言ってるぞ。可愛いのかこれ?


「う~ん、ちょっとモフ味が足りないのが残念だな」

「あ・た・り・ま・え・だ」

「御主人様落ち着いて」


 身軽な女が魔導車をペタペタ触りながら不満げに言ってきて思わず語気が強くなってしまった。


「失礼した。我々はレオの町を拠点に活動する冒険者パーティーの【情熱の紅玉】だ。このあたりの魔物を狩る依頼を執行中だったのでついな」


 一通り魔導車を見た後、4人の冒険者が挨拶してきた。なるほど。やはり思ったとおり森の魔物を間引いていたってわけか。その途中で魔導車に乗った私達を見て勘違いしたわけだな。


「レオの町は今から私達が向かうところですね」

「へぇ、あんた達レオに行くんだ。私達も一仕事終えたし戻るところだったんだよ」

「そうなのか……」


 ふむ、何か軽装の女と杖持ちの女が興味深そうに魔導車を見ているな……はぁ全く。


「良かったら乗っていくか?」





「わぁ~すっごい! こんなに速いなんてぇ、馬車よりずっと速いよ!」

「驚いたなぁ。俺もいろんな魔獣を見てきたけどこんなのは初めてだ」

「うむ、しかも腹の中に乗り込めるとは……」

「はっはっは、私も最初は驚いたものですよ」


 そんな声が魔導車の中から聞こえてくる。しかし本当に魔獣だと信じて疑わないんだな。


「う~ん、私も乗ってみたかったけど、でもこれも気持ちいいからいっかぁ!」

「やれやれ、はしゃいで落ちるなよ」

 

 ちなみに私と身軽な女は魔導車に乗っていない。あれは5人乗りだから定員オーバーなのだ。


 だから立体飛導操機(オープンスカイボード)に私とこの娘で乗ってついていく形を取っている。

 

 このボードはある程度伸縮可能だからもう1人ぐらいなら乗れるわけだ。


「わかった。落ちないようにするよ」

「う、うむ……」


 娘が後ろからしがみついてきた。彼女は小柄な方だが、それでも私よりは背が高い。だから胸が私の後頭部に、む、むぅ……小柄な割に中々……


「御主人様、とてもだらし無い顔をしてますよ?」

「し、してないぞ! 断じてだ!」


 メイが窓を開けてそんなことを言ってきた。ま、全く何を勘違いしているのか。だいたいこれは不可抗力だ。


 さてそうやって街に向けて走行していたその時だ、叢から巨大な影が飛び出してきて進行方向を塞いできた。


「そ、そんな! あれはクライムタイガーだよ!」

「い、いけない。あの魔物はギルドでもCランクの冒険者が束になってようやく倒せる程度の凶暴な魔物! この辺りには滅多に出ないのに!」

「魔獣を止めて引き返そう1 このままじゃやられる!」

「で、でもあいつ完全にこっちを狙ってるよ!」

 

 ふむ、冒険者たちが随分と慌てているな。確かに巨大な虎ではあるが。


「御主人様、排除しますか?」

「大丈夫だ。メイはそのまま運転を続けてくれ」


 私は腕輪から魔導小銃(マイフル)を取り出し狙いを定めた。


「え? あんた、その杖、もしかして魔法使いだったの?」

「杖ではない。まぁ見ていろ」


「グォオォオオォオオオオ!」

「こ、こっちに向かってくるよ!」

「問題ない」

 

 確かに荒ぶって勢いよく向かってきているが考えが足りなすぎだな。私にとってはいい的だ。トリガーに力を込めて魔弾を放つ。


 銃口から発射された弾丸が向かってきたクライムタイガーの眉間を貫いた。これで終わりだ。巨大な虎が傾倒し、地面を暫く滑った後、動きを止めた。


 魔導車が一旦止まると驚いた顔の冒険者達が下りてきて倒れた魔物を確認した。


「お、驚いたな。これだけの魔物を一撃とは」

「素材はどうする?」

「クライムタイガーの素材は高額取引されている。毛皮も牙も大体全てが素材だ」


 そうか、なら一撃で仕留めて正解だったな。素材が無駄に傷つかずに済む。


 そして一応確認をとったが私達が倒したものだからということで素材はこちらで回収した。


 さて、先を急ぐか――

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