第18筆 12月の手紙
天国のお母さんへ。
神様かな、それともお母さんかな。風子を守ってくれてありがとう。誰が見つけてくれたのかわからないけど、森の中にいたみたいです。
風子が居なくなって大騒ぎになって。
でも、ようやく見つかった当の本人は、得意げに四つ葉のクローバーを渡してきました。「お姉ちゃんにあげる」だって。
お母さん、ごめんなさい。
私が悪いんです。お父さんが、仕事の都合でまた引越すなんて言うから。せっかく風子も私も、学校や幼稚園に慣れてきたところだったのに。
お父さんと喧嘩して自分の部屋に籠ってたら、風子が来て、押し花にしてた四つ葉のカタバミを渡してきたの。「これ、あげる」って。風子は優しいよね。
でも、私はダメだ。
妙に意地悪な気持ちになって、風子に、「いらない」って言ってしまいました。「それ、カタバミだから、クローバーじゃないから」って。
風子はすごくショックだったみたい。泣きながら、カタバミとクローバーの違いを、お父さんに聞きに行ってた。
まさか、翌日、四つ葉のクローバーを探しに森へ行ってしまうなんて。見つけてきたのには驚いたけど、何より、無事に帰ってきてくれたことが嬉しかった。
私は、ただ風子が元気で居てくれることがどれだけ幸せなことかわかってなかったんだ。お母さんが居てくれることが、それだけでどれだけ幸せなことだったか、よく知っていたはずなのに。
風子は、「お姉ちゃんの友達が迎えに来てくれた」って言ってたけど、そんなわけないんだけどなぁ。誰だったんだろう。もしかして、神様の御使い? ……なんてね。
敬具




