表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/21

第17筆 風子とクローバー

拝啓


 神様、夕方、境内の掃き掃除をしていたら、突然、キレコがやってきました。


 制服のままで掃除をしていたので、やばい、ばれた! と思ったけど、キレコの奴、賽銭箱脇のポストに大急ぎで手紙を放り込むと、すぐに走って行ってしまったんです。


 キレコの手紙を読むのはもう止めようと思っていたけれど、どうにも気になって、これを最後と思って見てみたら、紙切れに殴り書きで、「神様、風子を守ってください!」とだけ書いてありました。

 何かあったのかと気になって。

 そう言えば風子ちゃんはふもとの幼稚園に通ってたっけ、と思って麓まで降りていってみると。


 風子ちゃんが幼稚園から居なくなってしまったらしく、大勢の人が探していたのです。だんだん暗くなってきていた。


 麓の幼稚園は俺も通っていたところで、もしかして、と裏手の森へ探しに行ってみた。

 ほとんど手入れされてないから、木の根にひっかかってこけたり、藪に覆われた斜面を滑り落ちたり、制服は破れるわ、泥まみれになるわ。散々だったけど、子供の頃、森で遊び回っていたのが役に立った。


 当時、自分だけの秘密基地だと思っていた小さな洞窟に、居たよ、風子ちゃん。


 声をかけたら、「眠たい。お兄ちゃん、だれ?」って聞くから、お姉ちゃんの友達だって言っておいた。

 安心したのか、もう一度、眠ってしまって。その手には、四つ葉のクローバーが握られていた。眠ったまま、がっしり掴んで離さない。クローバーを探しに来たのかな。風子ちゃんも泥だらけだった。


 負んぶして森を出て、風子ちゃんを探していた保育士さんに森の中で見つけたと伝えて託してきた。そのとき、


 風子!


って、遠くからキレコの声が聞こえたので、思わず、走って逃げてしまいました。


 たぶん、暗くて俺だとはわからなかったと思うけど、幼児連れ去りの不審者として捕まらないか、それだけが心配です。


 神様、そんなことのないようにお願いします。


敬具

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ