第11筆 ニアミス
拝啓
神様、びっくりしました。早く言ってくれれば隠れていたのに。
焚き上げの日、夏休みで神社の留守居をさせられて。キレコが来るかなと思っていたら、案の定、朝早くに来て。いつものように賽銭箱脇のポストに手紙を入れて。手紙を入れて、くるりと帰るかと思いきや、こっちへ来るじゃねぇか。
これはやばい。
御簾に隠れるように立ち上がって、喋らずに応対するしかない。多少、不審に思われたっぽいが、なんとかばれずに済ませられた。
キレコの奴、急に社務所に来やがって。
何かと思えば、手紙守りだった。5つも受けていったけど、どうするんだろう。悪いけど、うちの親父が数年前から作り始めた奴で、たいした謂われもないし、たぶんご利益もないと思うけど。
あ、神様、すいません。親父のことを言っているだけなので、怒らないでください。
雑誌の懸賞とか試験の応募とか、葉書や手紙、果ては宅急便まで、郵送物全般に御利益があるとかないとか。手紙型のキーホルダーになっていて、わりと人気あるんだよな。5つもどうするんだろう。
そう思っていたら、数日後。
ちょっと照れくさそうにしながら、キレコが部室で手紙守りを配りだした。写真雑誌の投稿にもご利益があるかもだって。うん、そうかも知れない。根拠はないけど、親父はそんな感じで売るって言ってたわ。
最後に、可哀想だからあんたにもやるだってよ。
自分が売った御守りを売った相手から貰うことになるとはね。とりあえず、ありがとうとは言ってみた。その返しは、「素直に御礼とか気持ち悪い!」だったけど。
唯一、俺の家が神社だと知っている同級生の加藤が、「あれ、これって……」と言いかけたので、ヘッドロックをかけて、余計なことを言うなと目で殺しておきました。
ちなみに後から来た顧問の愛ちゃんは、御守りをもらえずに拗ねてました。写真に興味ないくせに。ぶつぶつ言いながらも愛ちゃんは、撮影旅行と称して、今年もデイキャンプをすると宣言。去年の惨事を忘れたのかよ、と自分でも顔が引きつったのが分かった。
ああ、神様、今年のデイキャンプは雨で中止にしてください。
敬具




