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第1筆 宛先のない手紙


 手紙なんて古臭い。


 ずっと、そう思っていた。わざわざ紙を準備して、ペンを握って書く。やっと書きあがったら、封筒に入れて、切手を貼って。そうそう、住所と宛名、自分の名前だって書かなきゃいけない。

 秒単位で進んで行くこの時代に、まったくもって馬鹿げている。


 でも、だからこそ伝わるものがあるのかなって、あの子と出会って、あの子の手紙と出会って、思い知ったんだ。


 そうだ。手紙は、空にだって届く。

拝啓


 神様、この手紙に宛先はありません。だから、毎月の焚き上げで燃やしてやろうと思います。


 我が家は、古い、親父に言わせれば由緒ある神社で、毎月、詣で客の手紙を焚き上げています。


 焚き上げの役目は俺に任されて、というか押し付けられているので、正直、いい迷惑です。この御時世に手紙なんて、まったくもって馬鹿げてる。そう思いませんか。


 なのに、うちの神社には、毎月、何通も何通も大量の手紙が届きます。直接持ってくる人もいれば、それこそ、神様へ、なんて宛名で、本気か冗談か分からないような手紙が来て。

 一度、何が書いてあるのか封を切って読んでみたことがあるけど、誰それが憎いとか、悪い奴なので天罰を希望、なんて、馬鹿なことばかり。しかも後でばれて、親父に死ぬほど叱られました。


 どうせ馬鹿なことしか書いてないのだし、もう二度と盗み読みはしない。と思って、毎月の焚き上げでは、ただ黙々と手紙を燃やすようになりました。人々の下らない情念が燃えて消えていくようで、少しばかりせいせいします。


 ところが、そんな気持ちを揺らがすような手紙が届くようになったのです。


 毎月、俺と同い年か少し下ぐらい、高校1年か2年くらいの女の子が大事そうに手紙をもってくるようになりまして。それも、ちょっと可愛い感じの子と来たら、誰だってその手紙を読みたくなるでしょう?


敬具

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