天国?いいえ地獄です。
少女はすでに完結している「孤独の王と赤の魔人」の主人公です。
地獄に落ちたところから始まります。
少女が目覚めるとそこは清浄な空気に明るい太陽、咲き乱れる花々。
綺麗な湖です魚が撥ねる音が響いた。
草原に寝ていたらしい少女の周りではひらひらと綺麗な羽をもつ蝶が飛んでいる。
「え、と。私が落ちたの地獄じゃなかったっけ……?」
そう少女は地獄に落ちたはずだった。
ちょっとした人生を覆される経験を経て、少女は確かに地獄に落ちた。
だがどう見てもこの場所が地獄とは思えなかった。
何方かというと天国と言われた方が納得出来るくらいだ。
「せっかく覚悟して地獄に落ちたのに…想定外過ぎる。私これからどうすれば良いんだろ?」
少女にはやるべきことがあった。
だが今の少女の状況でどうやるべきことを行えば良いのか?
年齢の割に頭の回る少女であったが流石に今回はパニックを起こしていた。
「お、こんな所にいたか」
やけに艶の含んだ美声が少女の耳に入った。
少女の周りには誰も居ない。
という事はこの声は少女にかけられたモノなのであろう。
声の方を向いて、少女は固まった。
声の持ち主は紫黒の髪と射干玉色の瞳の、神様が丹精込めて作ったのだろうと思わせる美しい中性的な顔立ちの青年であった。
細身の体にまとった、中世の貴族のような服装が良く似合っている。
身長こそ中々高いものの完全に男だと言い切っていいのか少女は迷ったが直線的な体のラインから恐らく男性であろうと検討を付けた。
しかし青年が発した言葉はまるで少女を探していたようだった。
これほどの美貌の持ち主を忘れるなんてありえない。
少女のは球の中が?マークで埋め尽くされる。
「え、と…お兄さんはどちら様でしょうか?」
「ククッ、何だ分からないのか?お前がここに落ちる事になった原因だよ。さっきぶりだな」
青年は悪戯気に笑う。
「さっき迄地上で俺と命のやり取りをしていただろう?あれ俺ね」
「は、い~~~~!?」
思わず変な声が出た。
「ようこそ地獄へ。俺の名前はベルフェゴール。人間に分かりやすく説明するなら怠惰の大罪の悪魔だ。お前との地上でのやり取りがあんまりに面白かったんで俺の城に連れて帰ろうと思ってな。迎えに来た次第だ。さて、何時までもお前呼びもなんだな。名前を教えて貰おうか。どうせお前もこれからの身の振り方考えあぐねているんだろう?だったらまずは俺の元に来て知識を身につければよい。悪い話じゃないだろう?」
クスリ、と笑うベルフェゴールの笑みの余りの妖艶さにまだ年端の行かない少女ですらクラリときた。
「確かにアンタの言う通りです。私の名前は谷内川巳治。どうしたら良いのか分からないので取り合えずアンタに付いていきます。でも連れて行ってそのままパクリ、とか食用にされるのは御免ですよ」
「あぁ、それなら大丈夫だ。悪魔は肉を食べないからな」
「はぇ~~~~~?」
少女―巳治の口から再び変な声が出た。
自己満足小説ですが好き勝手書きたいと思います。