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2-4話 カラカササマ




(不味いっ、あれは不味いだろうっ、あれはどうしようもないっ)



 突然降ってきたリカ達を、最初こそ驚いたように目を丸くしていた子供達であったが、すぐに二人にじゃれ付く様に笑顔で近付いてきた。

 それを、ぎりぎりで潜り抜けて宿から離脱したリカは、扉を開けた人型の何かを思い出して血の気が引く。


 窓から飛び出した際に、人でないナニカを確認しようと、開いていく扉から出てくるモノに視線をやった。


 三メートルはあるだろうか。

 ひょろりと長い手足に、やけに小さい胴体。

 服装は黒いシルクハットに灰色の背広をしており、その裾丈は地面すれすれまでと非常に大きく、同じく灰色のスラックスと茶色の革靴を履いたその姿は、人外染みた様相さえしていなければ、貴族かそれに準ずる身分のある者を連想しただろう。

 だが、ぎょろりとやけに大きな目玉がこちらの目を覗き込み、子供が絵の具で落書きしたようなその表情は笑顔のまま動くことは無く、異様ささえ感じさせるその手足よりもさらに長い首を折りたたむようにして扉潜って来たソイツに、リカは恐怖すら抱いた。

 そして――――脳内が粟立つ様な感覚とともに、白く染まっていき、平衡感覚が失われるような気持ち悪さに襲われて、落下という物理法則に従い視界からそれが映ら無くなった事によって、正気に戻ったのだ。



(―――今も頭の中が半分無くなったような感覚…。ダメだ、まともに思考が出来ない)

「り、リカ。何が起きておるのじゃ? どうして宿から逃げておる、どうして子どもたちが儂らを捕えようとしておるのじゃ」

「…私が聞きたいよ、…でも安心して、ここには出雲もエレインも居ないから」

「…えれいん? お主、何時もはえれーと…」

「…ああ、そうだったね。ともかく早く、ここを出ないと」

「―――お主、酷い顔色をしておるぞ」



 それはそうだろうと思う。

 許されるのなら、この込み上げてきた吐き気をそのまま出してしまいたいくらいだと思って、それでも速度を緩めず走る。


 視界に入れた事による効果なのか、それとも奴に見られたことによる効果なのか、どちらが原因かは、先ほどのやり取りでは分からなかった。

 だから、この原因を解明するのは後だ。

 分かったところで対策が難しいのであれば、一度体制を整える事が必要だと、碌に回らない頭で考える。



「とり合えず、この町から出る」

「…どうしてなのか、聞いてもいいかの?」

「アイツの効力がどの程度か分からないけれど、こんな出鱈目。私に予兆を感知すらさせずにこんな空間に閉じ込めて、しまいには視界情報での精神汚染なんて、どうしたってヤバすぎる。ならきっと、その支配範囲は狭いんじゃないかっていう願望だよ」

「お主、今精神汚染をされて…」

「…大したものではないけどね、でも、まともに対策を考えるのは無理かな」

「わ、儂も走れる! 何時までも抱えるでないっ!」

「そう? なら、走って貰おうかな」



 そう言いながら、鳥居様を下ろすと手を繋いで横並びで走り出す。

 後ろからは楽しそうな子供たちの笑い声が木霊してくる。

 無邪気なその笑いは、ほの暗い町の景観と合わさると、どうしても不気味に聞こえてきて、耳を塞いでしまいたくなるほどやけに重く頭に響いた。


 

「―――あそこだ、あそこが町の境界」

「はっ、はっ、すぐ着いたのうっ、広くない町で良かったのじゃ」

「…そうだね」


 

 元の場所では崩れ落ちていた外壁が、今、目の前には健在しており、その堅牢な雰囲気を周囲に振り撒いている。

 遠目に見える開閉する門も完全に閉ざされており、この空間が密閉状態なのは間違いない。

 だから、もう少しで外壁へ辿り着くと言った瞬間、リカは鳥居様の手を離すと、さらに加速して外壁へ突っ込む。

 そして、そのまま地を蹴り体を浮かすと、体全体を回転させて鞭の様にしならせた足を壁に叩き込んだ。


 派手さは全くない。

 空気を裂く音も、地を蹴った際の踏み込みも、壁に叩き込んだ際の衝撃も、何もかも微塵も無くて、見た目と変わらぬ非力な一撃を打ち込んで。

 それでも、標的となった壁は巨人に殴られたかの様に砕け散って、町と外界との道を作る。



「おおっ!? やりおるもんじゃな!!」

「っ…! もう一発行くから離れてて!」

「なんとぉっ!?」



 リカからの警告に、このまま外に飛び出そうと勇んでいた鳥居様は慌ててその足を止める。

 リカは打ち込んだ体制を空中で立て直すと着地を片足で行い、さらにもう一度飛び上がった。

 そのまま上半身を地面と水平にして回転の軸とすると、数度縦回転させた足を上段から叩き落とす。

 威力は先ほどと変わらないか、若しくはそれよりも強かったであろう。

 何もない空間に何故、攻撃したのかなんて鳥居様には分からなかったが、叩き込まれたその足技が何かにぶつかったように宙で止まっているのを見て、理解する。


 自分たちは目に見えない何かに囚われている。



「っ…、ああもうっ、これは私には壊せないっ!」

「あ、諦めるのが早いぞ、もう数度殴ってみればっ!」

「無理無理、もう足痛いしっ!」

「後ろから童たちが迫ってきておるっ! とりあえず、この場を離れるのじゃ!!」

「口を閉じて後ろは見ないようにっ」



 そう言うが早いか、リカは鳥居様を横抱きにすると、壁を垂直に駆け上がる。

 どうすれば良いかは不明だが、まだしばらくあの気味の悪い奴とこの狭い空間で追いかけっこをしなければならない事は確かである。

 溜息を吐きたい気持ちと、物理的に吐きたい気持ちを抑えて、リカは高所での逃亡を図ることにした。

 

 終わりは見えない。

 唐突に引きずり込まれた悪夢のような裏世界に、翻弄されるだけの自分達に、不安ばかりが積もっていく。

 空を見れば、そんな自分達の行く末を暗示するように曇天が、光無く薄暗い闇が漫然と広がっている。



「…出雲達は、助けに来てくれるかのう…?」

「…どうだろうね。でも、そうだね…」



「―――きっと見捨てられる事は無いんじゃないかな」










「カラカササマ?」

「そうとしか考えられないと言うべきか…」

「まさかこの町の子供だけでなく、旅人の子供までとは思わなかったけどねぇ」



 宿の老夫婦はそう言って、困ったような申し訳なさそうな表情を浮かべ、焦燥とした二人の姿を不安げに見遣る。


 夜間遅くなり始めた頃、そろそろ就寝しようとした老夫婦のもとに真っ青な顔をした出雲と俯いたまま震えるエリィがやってきた。

 聞けば、仲間の二人が突然消えたのだとか。

 それも普通ではありえないような、一瞬視界から離れた隙に跡形も無くなったのだという。


 二人の動揺ぶりは、それは目も当てられない程酷いものであった。

 この宿に来た当初は、出雲の方こそ他の仲間へ気遣うような姿勢に自信の無さが滲んでいるのすら傍からでも分かったが、エリィは、怖いものなど無いのだという自信に満ち溢れ、発せられる魔力の圧は素人目に見ても一目で常人ではないということを理解させるほどであった。

 だが、今は出雲がエリィを支え、あの時の姿が嘘であったかの様に彼女は儚く弱弱しい雰囲気を醸し出しており、夫婦と会話するのも、完全に出雲に任せきりとなっている。



「…あの、二人に危害が及ぶことは無いんですよね?」

「正確なことは分からないが、連れ去られた子供が傷付けられるということは無いと思うよ。そもそもカラカササマの存在は子供を保護する、ということにあるんだよ」

「保護…、どうやったらこちら側に戻すことが出来ますか。その、保護が終わるタイミングも教えて貰えると助かります…」

「そうだねぇ…。なら、カラカササマの伝説から説明することになるから長くなってしまうんだけど―――」



 前提を話そう。

 この世界は、周期的に発生する魔王の存在や凶暴な魔物、若しくは神話にある三つの大災厄のような死が蔓延しており、多くの人や生物が命を落とすことは珍しくない。

 国による守護や、女神信仰による加護、又は練り上げられてきた魔法や武術の技術は偏にそんな蔓延する脅威の数々に対抗するものに他ならず、それらによって人々は何とか繁栄できているのが現状である。

 綱渡りのような生活。

 一つ間違えれば、いいや間違えなくとも、簡単に死が忍び寄っているような環境で、僅かであろうとも希望を見出そうとするのは不思議なことではなく。

 人々の希望となるような伝承が何時の間にか生まれ、こういった古くからの町、若しくは辺境に位置する国の保護が行き届かないような地域では残されていることが多い。


 その一つが、この町で言うカラカササマである。

 なんてことは無い、あったかどうかも分からない単なる童歌の一種であるそれの内容は、単純な子供を守る背の高い存在の話。

 町の存続に関わるような恐ろしい災害に襲われる時、どこからともなく現れたカラカササマは子供を違う世界に連れて行く。

 子供たちをあやしながら、歌や遊びを教えながら、外に危険が無くなるまでひっそりと閉じ籠る。

 そして、危険がなくなれば、いつの間にか子供たちは傷一つなく帰ってくるのだ。

 カラカササマが遊んでくれたと、そう言って。


 実際、このようなことが以前起こったのはもう数十年と前の事となる。

 だから、その現象を体験していない人、つまりこの町に住む比較的若い人たちはその伝承を作り話としか思っていない。

 いや、この場合思っていなかったと言うべきだろう。

 今起こっているこの現象は、少なくともこの町に住む人々はカサカササマが起こしているものだと信じているからである。

 化物の、変異パズズの襲撃前に、町の子供が消え始めた。

 ほんの少し目を離した隙に、あるいは朝に目を覚ますと、つい先ほどまで居た筈の彼らが居なくなっているのである。

 最初は恐慌状態となった。

 当然だろう、わが子や孫が突如として跡形も無く掻き消える様な事態があれば、大問題となるし重なるように他の家庭でも同様のことがあれば、それは町挙げての大問題となる。

 一部の、過去のカラカササマの時を知っている年配の者達は子供たちは無事であり、これからこの町に危機が訪れると声を上げたが、伝承など作り話でしかないと信じていた若者たちはそれに耳を貸さず、ギルドや兵を使い、又は自らの手で町中、町の外、隣町に至るまで捜索の手を伸ばした。


 当然、痕跡すら見つかるはずも無く。

 ケープの町は失意に暮れ、未だ多発する子供の失踪も止めることが出来ず、ついに町中から子供が姿を消した。

 そして、これからどうするべきかと議論されている最中、変異パズズの襲撃があり、町が半壊となったのだ。

 甚大な被害を負いながらも、町の者達は子供の無事を確信し、カラカササマの存在を認める事となる。

 そして、未だに子供達が戻らないと言う事態をどのように捉えているのか、それは説明されなくても分かった。



「――これまでの経緯を説明すると、そんなところかねぇ…」



 それが、簡単なこの町の経緯で、今の現状だと夫婦は言う。

 出雲はそれらを聞いて、ひとまずは鳥居様達に危害が及ぶことは無いとほっと息を吐いたが、エリィは眉に皺を寄せてより一層険しい表情を作る。



「そのカラカササマが、子供に危害を加えないというのは分かったわ。なら、この町が安全だと判断すされる基準、子供達が帰ってくる基準は何かしら?」

「さあ、そればっかりは私達には何とも言えんからなぁ…」

「そうでしょうね、そう思っていたわ。つまり、私が聞きたいのはこの町がなくなった後、この町が滅んだ後に子供たちは帰って来れるのかということよ」

「エリィっ…言い方を…」

「いいのよ、出雲君。彼女にとって、抵抗すら諦めている私達はだらしない大人にしか見えないだろうからね」



 穏やかに微笑む主人を睨み付ける様に視線を向けると、エリィは何も言わず押し黙る。

 何か言いたげな雰囲気がありありと見えるものの、口をしっかりと結んで開こうとしない。

 また人見知りを発症させていると、呆れたような気分でいれば、それに気が付いたエリィが何か文句でもあるのかとばかりに、出雲まで睨んでくる。

 もはや、それも子供の癇癪にしか見えなくなってきたのは重症だろうか。

 二人をよそに老夫婦は顔を見合わせて、二言三言話すと困ったように出雲達に向き直って、エリィの疑問に対して回答をする。



「断言することは出来ないけれど、きっとこの場所に危険が無くなるまではずっとであると思う…。だから、言いにくいんだが君達の仲間は、この町が滅んでしまえば、少なくとも町が再建するまでは戻ってこないのだと思うよ」

「そんなっ…」



 予想していたこととはいえ、もう会えないかもしれないと言われているようなものだ。

 重すぎる衝撃を受けたエリィはその動揺を隠そうともせず、ふらふらと壁に寄り掛かったエリィは額に手の甲を当てると、目を瞑った。



「…どうすれば、その世界から子供達を連れ戻すことが出来ますか?」

「そういう話は、聞いたことも考えたことも無かったよ。伝承にも残ってないしねぇ」

「そう、ですか…」

「…情報感謝するわ、助かった」



 どうしようも無いということと、明日にはすぐに魔物の大群が町に襲い来るということを理解して、呆然と目を閉じていたエリィは老夫婦にお礼を言うと部屋から出ていく。

 力無い彼女の足取りに、慌てて後を追おうとした出雲の背中に老夫婦は声を掛ける。



「悔いの残らないようにね」

「っ…」



 重い実感の籠められたそんな言葉に何も返せないまま。

 嫌に暗い廊下に出て、先を行くエリィに追いつくために早足になる。

 つい先ほどまでいた、鳥居様が居ない、リカが居ない、それだけでこれほどまでに世界が違って見える。

 


「エリィ、助けよう」

「…ものは考えてから言いなさい。リカが居なくなった今、絶対に先手を取れるという有利が無くなった。それが意味するのは、勝てないということよ」

「分かってるよ、そんな事」

「なら、下手なことを言わないで。ここの戦力は当てにならない、盗聴した内容からしてもほぼ防衛網は崩れかかっているの。なにより襲撃は明日、時間が無いにもほどがあるでしょう…」

「ここを囮として、僕とエリィの二人で横から魔物の軍に食らいつこう。僕たちの殲滅力はあの二人が居なくなっても減ってはいないんだ、威力だって申し分はない筈だよ、だから」


 

 驚いたように目を見開いて、エリィは振り返った。

 しばらく出雲をじっと眺めていたが、徐々に怒りによる圧力が高まっていく。



「…それはなに? リカの物真似? ふざけた事をしないで」

「違うよ、僕はっ」

「やめてっ!!!」



 エリィの怒声が響いた。

 怒りを孕んだその声色は、初めて見た彼女の色で。

 エリィから吹き荒れる風が肌を刺すように叩き付けれられ、闇夜に灯る翡翠色の双眸が、煌々と輝き出雲を射抜く。

 


「常識も、戦術も、物の道理だって分からない貴方がっ、何を根拠にそんなことを言うの!? 私一人じゃ何も出来ないと笑うつもりなのっ!?」

「違うっ!!!」



 激昂するエリィに腰が引けそうになるが、ここは引いてはダメだと歯を食いしばり、前に出た。

 出雲の大声に驚いたのだろう、聞く耳を持たない様子であったエリィが口を噤む。



「エリィは二人を助けてここから旅がしたいんでしょう!? 諦めたくないんでしょう!? このまま何もしないなんて嫌なんでしょう!?」

「っっ…!!」

「なら、僕たちは同じだ! 同じことを考えてる! そうだろうっ!?」

「…それ、は」

「どうしようと言う段階はもう過ぎてて、僕らが考えるのはどうやって、なんだよ。そして、それはあの二人が居なくたって変わらない。事前に話し合って決めた、意見を出し合って方針を決める事になんら変化は無い筈なんだから。―――聞かせて。僕はこちらに手段を選ぶような余力何て無いのだと判断した。だから、忌避していたリカの案だって採用したいと思う、エリィはどう?」


 

 エリィは見開いた目で出雲を凝視する。

 弱弱しく、目を離せば力尽きていそうな、そんな印象しか抱いていなかった青年だ。

 こんな声を出せたのかと、こんな顔を出来たのかと、こんなに彼は意志を主張することが出来たのかと、驚愕を含めた視線を投げ掛けて、理解した。

 リカの言っていた事は、やっぱりなにも間違えてなんていなかったのだと。

 弱い訳ないと言っていた彼女の言葉は、何時も正しいのだ。


 世間を知らない、自分の殻にしか閉じこもっていなかった自分自身なんかよりも、ずっと目の前の青年は自立している。



「…ええ、そうね。時間も無い、罠や策を弄する手も道具も無いから、おおむねは貴方の意見に賛成するわ。ただ、私の魔法は広範囲に届くものが多いから町中での戦いは避けたいわ、やるなら壁の外で」

「――うん、良かった。なら、攻めてくるであろう明日の夕刻に備えて準備をしないとね」

「ええ。…あと、…ありがとう…助かったわ」

「ううん、生意気なことを言ったって自覚はあるから。こっちこそ、ありがとう。ちゃんと話を聞いてくれて」

「………うん」



 こくりと、小さく頷いたエリィに、もう怒りの感情は無いようで。

 すっかり大人しくなって、先ほどまでの迷子になった子供のような雰囲気も消えている。

 初めて告げられた彼女からの感謝の言葉に、少しだけ気分が高揚してしまうのが分かる。

 我ながら単純だとは思うが、彼女くらい容姿端麗な人からそんなことを言われれば仕方ないのではと自分を納得させた。



「…ともかく、リカと鳥居様には申し訳ないけど、どこにあるかも分からない場所から連れ戻すことは僕達じゃ難しいから、この町を安全にすることで子供たちを返してもらうっていう方針で良いよね?」

「ええ。あんな一瞬で攫われた事、また居なくなった瞬間に魔力の発動が無かった上に魔道具の残骸も無い事。この町の中にリカの魔力が無い事。それらから示されるのは、この町であってこの町でない場所に引きずり込まれたと考えるのが、無難だと思うの。…うん、解決するとしたら空間に干渉するような魔法が必要になるけど…、私はそういうのは使えないし…。危害が加えられることが無いなら、申し訳ないけど少し待っててもらいましょう」

「…それしかないよね。うん、他に気を裂いてる余裕なんてないし、明日の事に集中しよう!」





「あ、なんかダメそうな気がしてきた…」

「のじゃ!? いきなり何なのじゃ!? 滅多なことを言うでないっ、怖いじゃろうが!!」

「ご、ごめん…」





「…なんだか、後ろ髪が物凄い引かれてる気がするんだけど…仕方ないものね…」

「うんうんっ! だって、どうしようもないし! リカ達も分かってくれるよきっと!」

「そうね…、きっとそうよね…」



 煮え切らない思いで頷いたエリィに、これから何を準備できるのかを思い巡らせる出雲。

 もう夜も遅い。

 時間はこうしている間にも、一刻一刻と進んでいるのだから少しだって無駄に出来る時間は無いのだ。

 こうして、寄り道程度に考えていた町で、いきなり旅の持続を掛けた勝負をしなければならない事に理不尽を感じながらも、これからの旅を続けるために足を止めようとはしなかった。

 


伝承の具現化

長い時の中で、人の想いが形となり力を付ける、そんなもの。

とは言え、あくまで想いが為すのはあくまで肉付けだけであり、基本の土台、骨組みの部分はまた異なる。

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