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謁見ー五大大国ー

短いですが、4話目です。説明回になります。よろしくお願いします。m(_ _)m

 ●シュバイツフリード王国 謁見の間



「よくぞ来られた、異界の英雄よ!

 余、シュバイツフリード王国国王、バルトルト8世の名においてそなた達を歓迎しよう。」


 ここは謁見の間。

 召喚された二人、白翔と蓮夜は現在、シュバイツフリード国王、バルトルト8世との顔合わせを行なっていた。


 謁見の間には立会いの貴族、騎士はもちろんのこと、異界の英雄を一目見ようと多くの貴族が押しかけていた。

 見世物のような状況に苛立ったのか、蓮夜の眉間の皺がさらに増えている。


「成功の報告が来てから、少しばかり時間がかかったようだが…?」

 国王の横に侍っている宰相が、案内を務めたローブの男に問う。


「は!それが、その…。」

「なんだ?」

「教皇様が……。」

 ローブの男が答えると、国王を含め多くの貴族達が呆れたような納得顔を見せる。

 どうやら教皇のアレはよくある事のようだ。


「ん、んっ。なるほど。遅れた理由は解った。それで、教皇はもう帰られたか?」

「おそらくまだ儀式の間にいらっしゃると思います。お連れいたしますか?」

 ローブの男の言葉に、国王と多くの貴族が顔をしかめる。宰相は表情が変わらないが、僅かに眉が寄った。どうやらこの国の者達にとっても、教皇は出来れば距離を取りたい存在のようだ。

 この場に居ないのにも関わらず、大袈裟な手振りで天を仰ぐ教皇の姿が多くの人の頭に浮かんだ。

 どこまでも存在感のある人物である。


「いや、それには及ばない。ご苦労だった。下がってよい。」

 ローブの男は頭を下げ、謁見の間から退出していく。


「さて、異界の御二方。改めて、この国、この世界に来ていただきありがとうございます。御二人はこちらの事についてどこまでご存知でしょうか?」

「いや、どこまでっていうか…、ほとんど何も?」

「あぁ、そもそも俺たちは無理やり此処に喚び出されたんでな。その上、帰還方法も知らないんだろ?」

 白翔は困ったように笑い、蓮夜が不機嫌に睨む。


「それは…。誠に申し訳ありません。すでに知っておられるかもしれませんが、今回の儀式は神からの神託によって齎されたものなのです。此方が知っているのは異界の英雄を喚び出す、ということだけなのです。」

「うむ。余は王であるが故に頭を下げるわけにはいかぬが、申し訳ないと思っておる。」

 宰相が頭を下げ、国王が謝罪の言葉を口にする。


「ねぇ、蓮夜…。」

「……ちっ!…判った。過ぎたことはどうしようもないし、この件は一旦置いておく。」

 自分の状況をさほど悲観的に捉えていない白翔は、王と宰相からの謝罪に、いたたまれない気持ちになる。

 蓮夜もまた、内心はさておき謝罪しようという意思は感じたので、一先ず矛を収めることにする。

 キレやすく、理不尽を嫌う蓮夜だが、素直に頭を下げる相手には高圧的に出られなかった。


「感謝いたします。では、御二方を御喚びした理由を含め、この世界について説明をさせて頂きます。疑問点や質問などは後ほどお答えしますので、まずはお聞き下さい。」

「宰相殿、それは長くなるかね?」

「えぇ、それなりには。」

「ふむ…。では陛下。私は仕事がありますので、ここで失礼させて頂きます。」

 貴族の一人がそう言うと、退出していく。同じ様に何人かの貴族が国王に挨拶を行い、謁見の間を出ていった。宰相の話が長くなると判断し、とりあえず英雄の顔も見たので、充分だということだろう。後ほど歓迎の宴があるだろう、という判断もあった。


「では、説明をさせて頂きます。」

 席を立つ者がいなくなったことを確認し、宰相は話始めるーー。



 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



 異世界、アンフィガルドはいくつかの島と巨大な一つの大陸から成る世界。

 いつからか、この大陸自体がアンフィガルドと呼称されるようになっていた。

 アンフィガルド大陸にはいくつもの国家が乱立しており、その中でも5つの巨大な国家、通称五大大国が周辺国家に睨みを効かせながら大陸に安定を齎していた。


 ヴァイス帝国ーー

 大陸中央に位置し、最も広大な国土を持つ。 五大大国のリーダー的存在。


 リーズベルト王国ーー

 大陸極東に位置する国家。【魔の森】という魔獣・魔人が多く生息する魔境に面している為、強者と呼ばれる者が多い国。


 ヴィオレベージュ共和国ーー

 ヴァイス帝国とリーズベルト王国に挟まれるように存在する国家。帝国の圧力に対抗する為、複数の国家が合併し産まれた。連合国家に近いが、議会制政治を敷いており、議会の代表が国家元首となる。


 ブラウ皇国ーー

 ヴァイス帝国とシュバイツフリード王国の間に存在し、南北に長い国土を持つ国家。国家の頂点は天皇と呼ばれ、国民の天皇に対する忠誠心は非常に高い。大陸一の鉱山を有している、通称鍛治師の国。


 シュバイツフリード王国ーー

 大陸最西部に広く国土を持つ国家。大陸でもっとも勢力が大きい【アルテア教】を国教にしている。海に面しているため、海産物が特産。



 五大大国の間では【大国会議(リツィーネクサス)】と呼ばれる会合の場が不定期に設けられ、その都度発生している問題や解決策などを話し合い、大陸の安定に力を注いでいた。


 人類の天敵足る魔獣、魔人は人類の生存領域から次々と駆逐されていき、今では【魔の森】以外ではほぼ見かけられなくなっていた。人類はまさしく、大陸の覇権種族としての地位を確立していたのだーー。



 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



「ここまでで、何かご質問はございますか?」

「はいっ。」

 宰相の問いに白翔が手を挙げる。


「はい、…えー、大変失礼をいたしました。そういえば、まだお名前をお伺いしておりませんでしたね。」

「あ、はいっ。俺は、日向 白翔っていいます。白翔が名前で、日向が苗字…えーと、家名です!」

 そう答え蓮夜に視線を移す白翔。


「……黒城 蓮夜。黒城が家名だ。」


「ヒュウガ様にコクジョウ様ですね。なるほど、ブラウ皇国のように家名を前に付けるのですね。」

「あ、俺は白翔って呼んで下さい。

 ブラウ皇国は家名が前に付くんですね。」

「かしこまりました、ハクト様。

 ええ、ブラウ皇国出身の者はそのように名乗ります。何でも最初は他国と同じように名乗っていたそうですが、他国に行っても皇国の誇りを忘れないように、という意味を込めて、違う名乗りをするようになったとか。」

「へぇぇ。」


「申し遅れましたが、私は宰相を務めさせて頂いております、アルベルト・エイジスといいます。どうぞ宰相とお呼び下さい。」

「あ、はい。よろしくお願いします。……ん?エイジス…?」

「どうした?」

「いや、エイジスって名前に聞き覚えがあるような…それもつい最近…?」

 白翔が何かを思い出そうとしている姿を何人かの貴族や騎士達が笑い出しそうな表情で見つめる。


「どうやら弟はしっかりと名乗らなかったようですね。」

「弟…?」


「はい、私アルベルト・エイジスは、アルテア教教皇 アルフレッド・エイジスの兄になります。」


「あぁ!……えぇぇぇぇっ!?」

「!…アレの兄か…!!」

 白翔と蓮夜が驚きの声をあげると、周囲の者達が堪えられないとばかりに笑いだす。一際大きな声で笑っているのは国王だった。


「えぇ。みなさん、私が教皇と兄弟であると知るとそのように驚かれますね。」

「はぁぁ、確かに言われてみれば似てるかも…?」

「まさかあんたも同じようになるのか…?」

「ご安心下さい。私もアルテア教の信者ではありますが、弟ほど傾倒はしておりませんので。」




「それで、ハクト様。何かご質問があったようですが?」

「あ、はい……。えーと、何か話を聞いてると大国同士って結構仲が良い感じですよね?戦争とか無いんですか?特に帝国っていう国体は軍事色が強いイメージがあるんですけど…。」


「そうですね。確かに国力ではヴァイス帝国が最も上です。先先代の皇帝までは領土の拡充に力を注いでいたそうです。

 ですが80年ほど前にヴィオレベージュ共和国が成立してブラウ皇国と挟まれる形になってからは、先代の皇帝は領土の拡充よりも国内の安定に力を注ぐよう方針転換しました。【大国会議(リツィーネクサス)】を主導したのも先代皇帝です。今では五大大国間で協力しながら牽制し合っていますので、精々が小国の小競り合いぐらいですね。」


「じゃあ、今は戦争は起きてないんですね?」

「えぇ、人間同士の争いはほぼありません。」

「人間同士の…?」


「はい。ここまではおおよそ、5年程前までの大陸情勢です。今から話すのが、現在の大陸に起こっている話であり、御二方をお喚びした理由になります。」



 そう言って宰相は説明を再開した。人類に突如として襲いかかった試練の幕開けをーー。





短いですが、一旦切ります。お読みいただきありがとうございました!

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