エンディング
冬嗣とアリアは思考停止しかかっているがなんとか言葉を紡いでいく
「なんということでしょうか、山のヌシが大学寮と聞いて怒るわけです」
「いしいしろうって誰デス?」
「石位士郎、15年前に感染医道律令違反の容疑で死罪が確定して現在も収容されている鬼畜外道をまさに自らの歩で進めていった史上最悪の医師です。まさかこんなところで石位の名前を聞くことになろうとは、とにかくもう一度山のヌシ武祁と話してみましょう」
冬嗣とアリアは前回と同様にダサい呪符を用いた方法で武祁を探し出した。
「山のヌシ武祁、石位士郎の行いは許されざるものです。同じ大学寮博士として謝罪します」
と冬嗣は巨大なイノシシに向かって頭を垂れた。
それに応じるかのように山のヌシは話し始めた。
〔我は本来20年前に次代のヌシである鹿の子に譲るはずであった。しかし、鹿の子は疫病で死んだ。既にヌシとしてこの土地を守る力はない、故に人の村は土地が貧弱になったのであろ〕
〔しかし案ずるな、神の啓示は既に降りている。次のヌシは…〕
と言いかけたとき重い金属音が周囲に鳴り響きだした。
「アポカリプティックサウンドでス」
とアリアが空を見上げながら言った。
「いいえ、これは神の啓示の音、まさか次のヌシに代わる時が来たのですか」
と冬嗣は山のヌシに向けていった。
〔左様、私は鹿の子が死んだあと八年啓示を待ちさらに十二年成長を待った。やっと代替わりが出来る。これでお前たちの望んだ土地の問題も新たなヌシの力で解決するだろう〕
と山のヌシ武祁はゆっくりと息を引き取った。
冬嗣とアリアは都下村から大学寮へと帰る山道を歩いている。あの後神社によってウロ通信の返信をうけとったのだが、そこには石位士郎に関連するなにかがある可能性があると書かれた手紙が遅ればせながら届いた。しかし、それよりもさらに問題なことは、村に戻ると頴亭の透真がいなくなったと村人たちから言い寄られたことだ。それを聞き冬嗣には嫌な予感が脳裏をよぎった。その理由はヌシの条件にある。ヌシは生来持った真実の赤い目を持つものにしかなれない。そして武祁は言った〔十二年成長を待った〕と冬嗣は特急で新たに更新されたはずの『藩神種自動主祷』でこの土地のヌシが誰になったかを問い合わせた。その返答として、
『その土地の山のヌシは種を人間 名を透真』と書かれていた。
「源来ヌシの務めは300年と長く人が務める場合、遥かに過酷で厳しく人の寿命を優に超えてなお生きて守って生きていかなければならず、大学寮が知る限りたったの二例ですが事例を確認していますが、直近でも700年前ですから、透真の前途が不安でなりません」
と独り言のように憂いながら冬嗣はアリアに向かって喋りかけた。山道は続いている。かれこれ一時間は歩いているだろうか。ふとアリアが下げていた顔上げあたりをキョロキョロと見渡すそして、
「先生アレ」
といい指さした。
その先に小さいが人影がみえる。とても見覚えのある真っ白な肌を持った少年、透真、である。彼はこちらを見つめている。ただ、見送っているだけなのだろうか…はたまたヌシとなったなったことを冬嗣とアリアに見せにきたのだろうか。
お読みいただきありがとうございます。一章だいたい一万字程度を目安に書いています。のんびりとした空気感を目指して書いていますが些かといった感じなので結局楽しめたらそれでいいかとも思っています。




