表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

歩み寄りの一歩ですね。

 「そちらのボルドーはいかがでしょう?それとも青?あ、あなたその生地とって頂戴。」

 「マダム、こちら?」

 「あら、このチェリーピンクなんて、奥様に似合うのじゃない?」


 とっかえひっかえドレスの生地を見せられ、型紙を当てられる。さながら、着せ替え人形にでもなったかのようだ。


 ーー二週間後、スチュアンティック家で開かれる夜会に招待されました。それで、仕立屋を呼ぼうと思うのですが・・・


 昨日言い忘れました、と朝食の席でヴィクターに言われ、クリスティーナはもちろん侍女たちも慌てふためいた。

 二週間はドレスを仕立てるにはぎりぎりの期間。急いで仕立屋を呼び、今こんな状況である。


 「ああでも奥様にはやっぱり赤が似合うわ。」


 王都で有名なスティーブン・テーラーのマダムが、光沢がありつつ落ち着いた深い赤の生地をクリスティーナに当てた。お針子たちがうんうんと頷く。


 「じゃあ、金糸で刺繍をしましょう。胸元は広く開けて、ボディスは吸いつくようなすっきりしたデザインで・・・」


 マダムはもう自分の世界に入ってしまったようだ。


 「次はジュエリーを決めましょう!」


 エリカがクリスティーナの持ち物のなかからこれでもないあれでもない、とジュエリーを引っ張り出す。


 今日は退屈しなさそうだ、とクリスティーナは肩をすくめた。



  ・・・・・・・



 夜会当日、正装をしたヴィクターに思わず見とれてしまった。

 黒のコートとスラックス。コートには金糸で刺繍が入っていてきらきらと輝いている。コートの内側はクリスティーナのドレスとお揃いの赤。黒の長髪は緩くまとめられ、金の飾りが付いていた。


 馬車で向かい合わせに座りながら、クリスティーナは落ち着かずにヴィクターから目をそらしていたのだが。


 「あの、何か機嫌を損ねるようなことをしてしまいましたか?」


 公爵邸につき、馬車を降りたところで尋ねられた。


 「いえ、あの・・・」

 「あぁ、そうだった。・・・ドレスとってもお似合いですよ。すごく綺麗です。」


 かぁっ、とクリスティーナの頬が赤く染まった。


 「あ、ありがとうございます。」


 そうっとヴィクターを見上げる。青の瞳と目があった。


 「旦那様も、とっても素敵ですわ。」


 素直にそう言ってふわっと微笑むと、なぜかヴィクターは口元に手をあて目を泳がせた。


 「どうかいたしまして?」

 「い、いや・・・」


 会場にファドリック侯爵夫妻の来場を伝える声が響く。ゆっくりと扉が開いた。


 「では、行きますか?」

 「はい。」


 ヴィクターの腕に手を添えて、クリスティーナは微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ