序
前作、薔薇の系譜~赤と白の円舞~の次作になります。
そちらを読んでからのほうがよりお楽しみ頂けると思います。
イザリエ王国の首都レヴィン、国立レヴィン大学の図書館には多くの学生たちが集っている。
反省レポートと称して渡されたファドリック侯爵家の家系図をにらみつけながら、ミリィはペンを動かした。
「レーオーのーばーかぁー」
低くつぶやくと、ミリィの近くにいた学生たちがそそくさと逃げていった。とばっちりを受けるとでも思ったのか・・・まぁ、当たりであるが。
「おーおー、お疲れー」
気の抜けた声が聞こえ、ぽんと頭を叩かれる。そのまま、わしわしとなでようとした手を払い落とした。
「少しは手伝いなさいよっ!あなたのせいでもあるでしょう?!」
力いっぱい叫ぶと、レオはニヤッと笑う。
「ほぉー?この俺に命令するとはいい度胸だな。」
ミリィは言葉を詰まらせた。
レオはこうみえても(ぼさぼさの銀髪によれよれの服、顔はいいのに!)、イザリエ王国でも指折りの名家の子息である。
「・・・世が世なら、わたしがそのセリフを言えたのに。」
「ははっ、それは先祖を恨むんだな。」
悔しい。
ミリィだってこうみえても(ひとくくりにしただけの栗色の髪・・・以下略)、いいとこのお嬢さまだったりする。
「で、なんのまとめだ、これ?」
レオが資料を手に取った。
「ファドリック侯爵家の家系図よ。今度の授業で使うのだって。」
「へぇー」
生返事だった。
何か面白いものでも見つけたのかと思い、レオの手元を覗く。
「クリスティーナ姫?」
「この前、イザリエ王国史に出てきたよな。」
「えぇ、レオンハルト王の従妹でしょう?」
確か、ファドリック侯爵ヴィクター・ブラッドフィールドと結婚した。
「何か気になるの?」
「あぁ・・・いや、どうだろう。」
レオレーダーに引っかかったようだ。
こういうときは、何かの発見がある。
レオを隣に座らせると、ミリィはイザリエ王国史2巻とファドリック侯爵の手記を開いた。