負魔結晶11
「魔法省?」
その言葉に、もう一人の翔は顔を上げる。
「なっ!」
それに反応したのはやはり翔だった。
「二人とも、何でここにいるの?」
それは、今までの会話をほぼ聞いてなかった事を意味する。
「結城翔、貴殿を引き戻しに来た」
「奴らの話を聞くな!」
もう一人の翔は焦っていた。
「翔、帰ろう!」
「?」
「結城翔、何をしたのか覚えているか?」
「聞くな!」
「何を言ってるの?」
翔はわかっていなかった。
全てはもう一人の翔がやったこと、彼は何も知らない。
樹は魔力を使い映像を見せる。
「これ、俺が?」
「見るな!必要ない!」
もう一人の翔の言葉は、もう翔に響かない。
「これはお前の弱さが招いたものだ。そこにいる作り出されたもう一人のお前によって」
「……」
もう一人の翔は叫んでいた。
だが、その声は本物には届かなかった。
「お前が弱い自分を消すんだ」
樹は告げる。
それが一番の策だからだ。
「樹はできないの?」
「できるが、自分でやるのが一番のいい」
本物は偽物をじっと見つめた。
「やめろ、やめろ!」
怯える偽物に、本物は告げる。
「出ていけ」
その言葉と同時に影は偽物を刺した。
それと同時に偽物の中の結晶が壊れる。
「総平、ごめんね」
それと同時に、翔から遠ざかる。
「戻るんだ」
樹の言葉と同時に、眠った。
次に目が覚めた時には、保健室だった。