負魔結晶10
「本当にいいんだな?」
樹の言葉に総平は頷く。
精神に入り込むのは危険な事だ。
樹が一緒でなければ、更に危険度が増す。
今、翔は眠らせた。
そうでなければ彼の世界に入れないのだ。
「行くよ」
皆、二人の側から離れる。
樹は呪文を唱えると、魔方陣を作り出した。
そして二人は倒れた。
「藤原、目を開けるんだ」
その言葉に、総平はそっと目を開ける。
周りは真っ暗闇だった。
「甲斐、君って…」
「結城翔が居る」
その言葉に、樹の見ている方を見る。
そこには、二人の翔が居た。
一人は踞り、もう一人は睨んでいる。
「来ちゃったんだね」
睨んでいる翔は言う。
「なら、ここで死んでよ」
その言葉と同時に影は襲いかかる。
だが、樹はそれをあっさり阻止した。
樹と総平は球体の何かに守られていた。
それでも懲りもせずに二人に向けて攻撃をする。
「総平、何故無事なんだ!」
「それは自分が治療したからだよ」
言った樹のその目は冷ややかだった。
「甲斐?」
「君を魔法で治癒した。結城翔を犯罪者にしない為にね」
「何故だ!何者なんだ!」
翔は叫んだ。
「魔法省魔法書管理部魔法古書管理室所属、甲斐樹」
樹の言葉に愕然とする。
それは翔の魔力では敵うはずもない、魔法省の人間だったからだった。