8/228
幻想と現実8
「雪村さん」
「は、はい!」
樹の声に、愛里はビクリとする。
「放課後の部活見学に付き合って欲しいんだけど」
普通の事でも、愛里は冷や汗ものだ。
「わ、わかりました!」
愛里は明らかに挙動不審だった。
「愛里、どうしたの?」
里穂は愛里に問う。
誰が見ても様子がおかしいのだ。
「な、何でもない!何でも…」
愛里は落ち込む。
里穂には、誰にも言えない。
不可思議な時点でおかしいと思われるし、覚えてるとばれたら殺されるかもしれない。
問題は起こせない。
愛里は自分に言い聞かせる。
問題は起こせない、何もない、問題は起こせない、何もない…。
愛里はそう自分に言い聞かせた。
だが誰が見ても挙動不審な時点で、樹自身も愛里を訝しむのは当たり前だった。