79/228
負魔結晶3
「翔!」
今条治と総平は、翔と鬼ごっこをしている。
それ自体は例えであるが、二人が翔を追っているのは事実だ。
それでも建物内に翔が居るのでスクーターから離れざるを得ない。
「待て!」
追いかけてはいるが、追いかけられてもいる。
総平は条治のサポートで辛うじてだった。
「くっ!」
足の元々速い条治は翔にとって厄介だ。
直接操ろうにも彼が止まらないのだから術をかけようが無い。
「足に魔力をためて速く走るのイメージしてみて、上手くいけば高速で走れるから」
スクーターから離れる直前、臣は条治に告げていた。
普通の追いかけっこでは埒があかない。
条治は舌打ちをすると、スターティングポーズをとる。
心の中で、合図を出す。
レディ、ゴー!
条治はそれを合図に走った。
二人を追い抜く。
だが、速すぎて階段のエリアより向こうに行ってしまった。
「中務、今のは⁉」
総平は条治に問う。
条治は臣にアドバイスされたと告げた。
翔は下へと逃げていく。