バスケ部の事件9
「お前ら、何してる!実力以上を出せ!」
塚原の苛立ちはピークに達していた。
〈こんな…クビになってたまるか!〉
心の声で樹は理解する。
そう、この試合に勝てなければ塚原はクビだと言われていたのだ。
まぁ逮捕されるのだから、結局は学校から居なくなるのだが。
試合が始まる。
だが、太刀打ち出来る相手ではない。
「タイム!」
塚原は突然叫び、お互いのチームは作戦会議になる。
「反則してでも勝て、怪我させてでも勝て、何をしてでも勝て」
「はい」
それは催眠だった。
「先輩!」
「ようやく使ったな」
圭介と幸成は話す。
だが、二人は動かない。
「一般人の前では逮捕できないからね、試合が終わってから逮捕するんだ」
「そう、なのか…」
樹は貴史に説明する。
だが、貴史にはよくわからなかった。
塚原の催眠によって、スポーツマンシップではなくなる。
ボールを取られそうになればひっかける。
ボールが無くても行きそうになれば体当たり。
それでも差はあまり縮まらない。
前半戦のツケは大きかった。
「クソッ!」
塚原は貧乏ゆすりする。
「こうなれば…」
塚原は催眠以外も使い始める。
敵に入りそうになれば風で外す。
味方が外しそうになれば入れる。
更には敵の手足を怪我や捻挫させる。
審判にまで抗議の際催眠をかける。
それでも差は縮まれど勝てなかった。
「行ってきます」
圭介は立ち上がった。