バスケ部の事件1
「時枝、見学をしていいか?」
「甲斐、興味が出たか?」
時枝武人は、樹が現れた事で喜んでいた。
「まあ、ね」
今は放課後。興味があるのは事件の方だが、話を聞くためにもここは見学する。
軽くストレッチをすると、直ぐに試合形式に入る。
武人曰く、部活メンバーだが部活ではないからだそうだ。
勿論、高坂貴史は居ない。
彼のクラスメイトは貴史を誘うが、それに乗らないそうだ。
高坂貴史は一、二年メンバーに信用されているが、女子人気が高く三年生の中には彼を気に入らない者もいる。
一年でレギュラー入りをしたのは貴史だけ、ただし三年生の一部はもう退部している。
「何故、高坂は退部させられたんだ?」
いきなり核心を問う。
だが、散々聞かれていたので武人はさらりと答える。
「対戦相手のケガだよ、今までも謎の事故はあったんだけどね」
事前に対戦相手のエースが怪我や捻挫したり、試合中も相手が何も無い所で転んだり、風でボールがゴールを外れたり、とにかく色々あったらしい。
だが、今回は貴史と相手選手がボールを取り合っている最中に起きた。
最悪な事に審判は勘違い、顧問はそれを受けあっさりと貴史を見限ったそうだ。
「部活中はあるのか?」
「無いよ、全部校外の話だ」
「顧問の名前は?」
「塚原先生だ。塚原正毅」
その教師は一年を受け持たない教師だった。
「そうか…また来るよ」
「おう!」
突然立ち上がった樹に、武人は戸惑いつつも歓迎していた。