魔法古書の鎖9
「雪村愛里、これから魔法古書エルビス・フォン・アルバーニと契約してもらう」
「はい…」
こんな不思議な事、早々無い。
これは夢ではないか?そう思いたいが、残念ながらこれは現実だ。
「愛里ちゃん、すまないね」
おじいさんは本当にすまなそうに言う。
だが、それはすぐに樹の言葉に遮られる。
「瀬戸葉月、始めてくれ」
「私もそれほど得意でも無いのだったんだけどね」
魔法を意識的に使ったことの無い愛里には補助が必用だ。
だからその役割を葉月がする。
樹が見届けるために壁際に立つと、葉月は魔力を込める。
「我、雪村愛里は契約を望む」
愛里は頭の中に浮かんだ言葉を口ずさむ。
「我、瀬戸葉月は仲介者として補助する」
だが、それでは足りない。
「魔力契約」
樹は呟く。
それは愛里と葉月の二人を結びつけるもの。
それを書面として強化する。
勿論期限は愛里が卒業するまでだ。
「二人とも、それに署名しろ」
「はい」
愛里は返事、葉月も頷き署名をする。
二人が署名した書面は二つに分裂し、二人の中に入る。
「エルビス・フォン・アルバーニ、これで問題無いだろう?」
「そうだね」
エルビスは言うと、本に戻る。
「雪村さん、本に手をかざして」
葉月は自ら片手を握ると言う。
愛里は言われた通りもう片方の手をかざす。
葉月も手をかざすと、本が光る。
本は開き、二人に魔力が回る。
やがて本は閉じられ、契約が終わった。
「これで終わったな」
樹は呟く。
「葉月、雪村愛里を上まで送ってやれ」
「わかったわ」
葉月の返事を聞くと、樹は部屋から出た。
「私達も戻りましょう」
「はい」
こうして二人も部屋を出ていった。