魔法古書の鎖8
「ここは…?」
無機質な部屋、学園とは思えない。
そんな中に、一冊の本が浮いていた。
「あれがわかるか?」
樹に言われるが、鎖のされた浮いた本だとしか思えない。
だが、微かに懐しさや温もりを感じる。
「出てこい」
樹が本に魔力を込めると、そこにはおじいさんが現れた。
愛里は驚く。
夢の中の存在だったからだ。
「愛里ちゃん…」
おじいさんは呟く。
鎖に縛られたおじいさん、エルビスはぐったりしていた。
「お前は、この魔法古書の仮契約者だ」
樹に言われ、更にパニクる。
「エルビス・フォン・アルバーニ、これでも雪村愛里と契約を続けるか?雪村愛里、これは夢ではない。それでも仮契約したままでいるか?」
二人は樹に問われる。
「愛里ちゃん、迷惑かけたね。君、契約は解除しよう」
「決まりだな」
樹の声は冷たい。
「ま、待って!その、契約をやめたらおじいさんに会えなくなるんじゃ?」
「当たり前だ。仮とはいえ、契約されていたからこそ可能だったんだからな」
愛里は考える。
訳のわからない事に巻き込まれるのは嫌だ。だが、おじいさんは好きだ。
「私…本契約します!」
愛里の宣言、それは三者を驚かせた。
「愛里ちゃん、君は自分で巻き込まれに来るのかい⁉」
「これじゃ、魔力導入が!」
「…成る程な」
驚きはしたものの、樹は冷静だった。
「いいだろう。本契約者は雪村愛里、補助契約者として瀬戸葉月を任命する」
これは、雪村愛里が拒んだ場合の案だった。
「君、無茶な事言うんじゃない!」
「樹、こんなのあり⁉」
「可能だ。企業にも、社長ではなく秘書が魔法古書契約している者が居る。それに上司には確認済みだ」
「あの馬鹿…」
葉月は頭を抱える。
馬鹿とは、元旦那の事だ。
だが、魔法省が良しとした。
これは紛れもない事実だった。
「ただし、これは卒業までのものとする。いいですね」
樹の言葉に、皆頷くしかなかった。