魔法古書の鎖7
それは春休みだった。
ただでさえ人が少ないのに理事長命令で箝口令を出す。
部活生達が引き、教師や事務員も校内から引き上げる。
そして夕方六時半、生徒だけでなく教師や事務員もいなくなった。
「……甲斐君」
愛里は言葉を発する。
何処から持ってきたのか、樹はベンチで本を読んでいた。
来たのは十分前だ。
だが、樹は立ち上がらない。
〈少し待つ、座れ〉
本を読んだまま言われる。
実際には頭の中に聞こえたのだ。
「お待たせ」
葉月がやって来ると、樹は立ち上がる。
慌てて愛里も立ち上がった。
これで、樹、愛里、葉月の三人が中庭に揃った。
「行こう」
何の説明も無く樹は告げ、エレベータへ向かう。
「理事長、何処へ行くんですか?」
愛里は訊きづらいので葉月に問う。
それは殆どの人が乗らない、乗れないエレベータだ。
樹はパネルに手を付け魔力を注ぐ。
パネルは光り、ドアが開いた。
「⁉」
愛里は樹が使った事で更に驚いていた。
樹は慣れた手つきでパネルを操作する。
上下ボタンとは別のパスワード式、更に完了したかの様に入るとき同様魔力を注ぐ。
そしてエレベータは下降を始めた。
愛里にとって謎だらけだった。
そしてわけのわからないまま魔法古書の部屋へと入る事となった。