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魔法古書の鎖6
これではいつまで経っても終わらない。
彼エルビスは愛里との契約を切らず、理事長との契約が成立しない。
「樹、どうするのよ」
それはこっちが聞きたい。
葉月はこれでいいのだろうか。
このままでは魔力エレベータだって、魔力のある者しか使えない。
こっちだって忙しいのだ。
毎週土日には魔法省に戻り仕事だ。
こうしている間にも学校内外で面倒事に巻き込まれている。
交渉は一向に進まず、四ヶ月だ。
「理事長、私に一任してもらえますか?」
本来の目的、それは学園内に魔力を起動させることだ。
「構わないわ」
理事長はそう答える。
それはある意味予測できた答えだ。
ヒントは普通に転がっていた。
エルビスは嫌がるだろうが、これなら問題は無い筈だ。
そしてそれは強制的に、この仕事を終わらせる為の手段だ。
明日の夜、それが決着の時だ。
「雪村愛里、夜七時中庭に来る事。これは命令だ」
それは冷たい声だった。
クールを通りすぎたその冷たさに、愛里はその命令を守るしか無いのだった。