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魔法古書の鎖5
「彼女は何も知らないよ…」
「その様だな」
樹は老人と話す。
エルビス・フォン・アルバーニは、百年以上前に死んでいる。
だが、古書となって意思は本の中に残された。
「君は、何者だい?普通の若者じゃないね」
今樹は制服姿だ。
だから、エルビスは若者と思ったのだろう。
「それを知る必用は無い。契約を切って理事長と再契約すれば、解放する。それだけだ」
樹は、変わらない。
「それは出来ないよ。私は彼女自身も気に入っているんだよ。魔力関係無しに、他愛の無い話をするのが楽しいんだよ」
エルビスの言葉に、樹の眉が一瞬動く。
「本に意思等必用無い、あんたは管理されている身だ。それがわからないのか?」
「じゃあ、君はどうなんだい?」
「勿論、管理されている身だ。仕事の間はね」
その答えを聞くと、エルビスは首を横に振った。
だが、その先に言葉は無い。
「無駄な様だな、明日また来る」
樹は言うと、エルビスの前から消えた。
エルビスはため息をつくと、苦笑いした。