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幻想と現実3
それは小さな休憩所だった。
円状のその場所には、石のベンチが一つあるだけだ。
「何か、落ち着きますね」
愛里は呟く。
周りは木々だ。
どっちかというと恐いの方が正解だろう。
「おい、何も無いじゃないか」
すると人差し指を得意げに横に振る。
二人を移動させると理事長は円の中心にたった。
何か唱えると、光が発生する。
愛里が目を瞑ると、その間に光景は変わっていた。
石のベンチのあった所には洋式の墓が、そして円の中にだけ小さな白い花と光の玉が溢れていた。
それは不思議な光景だった。
「キレイ…」
愛里はその風景に魅了される。
「ネネコが好きだったな…」
青年も呟く。
ネネコは小さな花と蛍が好きだった。
この場所はそれに似せて作ってあった。
愛里は円の中に入りゴロンとする。
「あら?」
愛里はすやすやと眠っていた。
「本当にネネコちゃんみたい」
理事長はクスクスと笑う。
「ネネコの事はとりあえず安心した。だが…」
愛里を見る。
「今のうちに記憶消去しておこう」
「そうね」
二人はそう話すと、頷きあった。