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魔法古書の鎖3
「土壇場の馬鹿力、といったところか…」
樹は関心する。
彼女は本とリンクしたいが為に潜在魔力を無意識に使ったのだろう。
「樹、どうするの?」
冷静を取り戻した様に葉月は問う。
こんなに簡単に破られるのは想定外だったのだろう。
「さて…理事長はどうしたいですか?」
一応、葉月に聞いてみる。
選択肢として、本を変えるのも手ではある。
「樹の意地悪…様子を見ましょう。悪用される訳では無いし」
「わかりました。では暫く監視いたしましょう。鎖はどうしますか?」
「様子があなたに伝わる程度、できるかしら?」
「勿論可能です」
生徒ではなく魔法省の人間として対応する。
樹は古書の魔力が減ると一本だけ鎖を巻く。
それは本をこの場に留まらせるものである。
そして本の威力を減らすものでもある。
「さて、どうするか…」
そうはいっても全てが自分の意思でできるものじゃない。
魔法省や葉月の意思を重視して行動しなければならないのだ。
だが、この場は様子を見るしかないのだった。