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魔法古書の鎖1
「最近会えないな…」
愛里は呟く。
会えないとはおじいさん、夢の中でよく話しをする仲の良い老人の事だ。
夢の中の人物だが、やたらはっきり覚えている。
まるで現実の延長のようなものだ。
最後に会ったのは約一ヶ月前、樹が転入してきた前日だったか。それも短い時間だ。
老人は突然断りを入れて去った。
それ以来夢は見ていない。
だが夢だ、特に何も起きていない。
それでも不安になる。
普段の調子も、悪い訳では無いが良くも無いのだ。
疲れが出やすく、里穂の声が聞こえづらい。
そういう日が数日続いた。
就寝前、ふと考える。
「おじいさんに会いたいな…」
そう考えながらベッドに潜る。
だが、それは始りに過ぎなかった。