魔法省魔法書管理部魔法古書管理室6
「行くか」
樹は言うと、直人の手首を掴む。
魔法を呟くと行き先を言わずに転移した。
行き先は北海道、大会社の社内だ。
「社長秘書の松田さんはいらっしゃいますか?」
「アポはとっていますか?」
「いえ、とってません」
「お名前は?」
「甲斐樹と言えばわかります」
それを聞くと、受付嬢は松田に連絡を取る。
松田はすぐに社長と共にやって来た。
「やあ、甲斐君」
社長はニコニコ顔だった。
「工藤社長、松田さん」
樹は頭を下げる。
直人もそれに倣った。
四人は一度社長室へ入る。
これは、毎度の事だ。
工藤社長は改めて直人を見て興味を示す。
「御供を連れてきたのか。君、名前は?」
「和田直人です!」
工藤社長と松田は名前を聞き更に驚いた。
「和田直人!数年前に決勝で会場を壊しかけた⁉」
「お恥ずかしながら」
社長は興奮していた。
彼の会社は魔法古書所持だけでなく、魔法そのものが好きなのだ。
「あれは興奮したなぁ、君が出たのは一度きりだったねぇ」
社長は一人で盛り上がっていた。
工藤社長は、十年前から魔対会を観戦していた。
「社長、古書の確認を…」
松田は社長に促す。
「まだ話したいのに…甲斐君の話しはまだ聞いてないし…」
社長は残念そうだ。
「じゃあ、行こうか」
社長は松田に目配せする。
松田がパチンと指を鳴らすと、大きな書棚が左右に別れた。
それは隠し扉の様だった。
書棚の奥には直通エレベーター、この趣向は明らかに社長の趣味だ。
四人はそれに乗ると、地下へと向かった。