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私怨の復讐15
「くそっ、あんな素人に!」
直人の炎に包まれる直前、信弥は叫んだ。
それは直人と信弥の試合終了の直前だった。
「………」
病院の個室、信弥は目を覚ます。
外を見ると、大きな満月が浮かんでいた。
鏡を見ると、片目の辺りに大きな火傷の跡。
全身火傷の筈が、この程度まで回復させたらしい。
回復能力の魔法使いが全力を尽くした様だ。
信弥は火傷の跡をなぞる。
そして、鏡の自分の顔を見た。
睨むような顔、それは直人に向けた復讐の目だ。
「いいね、その目」
クスクス笑いながら、優男は呟く。
「あんた、誰だ?」
「スイ。君を導く者。一緒に来ない?強くしてあげる」
気味の悪い、美しい笑みを浮かべる。
スイの差し出した手をじっと見つめる。
この手を取っていいのかどうか。
「魔法の強化、手伝ってあげるよ。試合の彼に負けない。いや、彼に勝る魔力を与えてあげる」
それは、妖しく甘い言葉。
しかし、それも悪くない。
信弥はニヤリと笑った。
「よろしく、お願いします」
「すみません、スイ様…」
砂は飛び散る。
これは敗北の瞬間だった。
そして、今度こそ信弥は跡形も無く消え去った。




